ダンジョン状況確認①
◆ドミニク辺境伯領 ダンジョン前 カゲマサside
「や、やっと戻ってこれたぞ」
帝都セプトの皇宮から抜け出した俺は、直ぐ様転移。ダンジョンの前まで帰還した。かなりの期間を留守にしていたせいでダンジョンの状況が不明なので、取り敢えず辺りに誰かいないか確認して、シロに念話を送る。
『おい、シロ!無事か!?』
『うっひゃあ!!な、ママ、マスターですか!?』
うっひゃあ?アイツそんなこと言ったかな?もしかして、何かしていた時だったかな?それとも誤信?
『あ、ああ、今戻ってきたんだか』
『も、申し訳ありません!マスターのご帰還に気付かないとは、マスターの側近失格です!直ぐ様自害を!』
『するなぁ!自害をするなぁ!』
おかしい。シロってこんな奴だったか?普段は、冷静で頼れる感じのツインテールドラゴン少女だった気がするんだが。この反応は、少しイメージに無いというか。
『あ~、いきなり連絡してすまなかったな。ごめん』
『い、いえ!私が悪いのです!マスターのご帰還に気付かず、のんきにドーナツを食べていた私が悪いのです!!』
『いや、ドーナツぐらい別にいいじゃん』
『駄目ですーー!私はマスターの第一側近なんですーー!!』
何か、う~ん。全体的にガキっぽくなってないか?いや、そんなことはない?ん~?
『まあ、いいや。今からコアルームまで行くから』
『ふええ!?ちょ、ちょっとま』
『じゃあ、行くな。【ディメンションムーヴ】』
『お、お待ちを~~~!!』
俺は、シロの懇願を無視して【ディメンションムーヴ】を発動。ダンジョンのコアルームに転移した。
◆ダンジョン コアルーム カゲマサside
転移した先で俺が見たのは。
散らかるミカンの皮やスナック菓子の袋。肉の食べ残しなどが散乱。
そして、こたつに入って骨をくわえて立ち上がった状態の白髪ツインテールの少女。
「····お前」
「こ、これは、その」
俺は、若干冷めた目でシロを見る。その目を見たシロは、直ぐ様土下座した。
「も、申し訳ありません!マスターの仰っておりましたダラダラ生活なるものを体験したかったのです!!」
シロは、そう叫び額を畳に擦り付ける。俺は、そんなシロを見ながら少し罪悪感が湧いた。自分の行動のせいでこうなったのだから。
「はあ、もういい。俺こそ長らくダンジョンを留守にして悪かった」
「いえ!私が悪いのです!」
「はぁ、わかったから!···今のダンジョンの状況はどうなってる?」
「はっ!ただいま報告書に纏めます!」
「了解、なるべく早くな?」
「承知しました!あと、他の幹部達にもマスターご帰還を知らせます!」
シロは、そう言って服を部屋着から軍服へと変換し、部屋から出立した。
「はあ、片付け俺かよ。いいけどよ」
俺は、散らかったゴミをDPに変えると、部屋から出た。部屋の外には、広い空間に大勢の迷宮近衛隊の面々。そして、空間の奥に鎮座するコア。
「あ!」
「マスター!」
「おかえりなさいませ!」
俺に気付いた迷宮近衛隊の面々が俺に跪く。俺は、止めようとしたがやめなかった。
「はあ、ようやく帰ったぞお前ら。コアに異常無いか?」
「はっ!何ら異常はございません!」
「それどころか、侵入者もおりません!」
「そうか、これからもコアを頼むぞ」
「「ははっ!」」
俺は、近衛隊の面々を労った後、迷宮研究所に転移した。
転移した先で俺が見たのは、研究所の周りに出来上がった建物。そして、行き交う魔人達や人造人間達。もはや、研究所ではなく一種の都市だった。
「ええ?なにこれ?」
「あ、カゲマサ様だ!」
「カゲマサ様が帰還されたぞ!」
「直ぐにミレンダ様に報告だ!」
何やら人造人間達が騒がしいが、構わず迷宮研究所に向かっていると、一人の海賊帽子をかぶった女が駆け寄ってくる。
「よお!戻ってきてたのかい!かなり戻ってこなかったから死んじまったかと思ったさ」
女の名は、ジレイク・バロー。かつて、南方諸島で暴れていた海賊だったが、目と足を捥がれ奴隷とされていた。しかし俺が身体機能再生実験の際に買い取り、後に魔人とした存在。今は、迷宮海賊艦隊の船長として南方諸島で猛威を振るっている。今のところ俺には忠実。
「ジレイクか、海賊稼業は順調か?」
「ああ!この前なんか、南方諸島の商船を襲って、たくさんの財宝を奪ってやったさ!」
「ならば良い。あ、これは祝いだ」
俺は、ダンジョン機能の一つ、道具創造を使ってキンキンに冷えたビールを瓶で10本渡す。
「おほ♡良いのかい?」
「構わんさ。いつも俺にDPの元を集めてくれる礼だよ」
「やりぃ!アイツらも喜ぶぜ!」
そう言ってジレイクは、ビールをもってどこかに走っていった。
俺は、再び歩きだして都市となった迷宮研究所付近を見て回る。純粋な人間は誰一人いないが、笑顔も良く出るため、上手く統治はできているようだ。
やがて俺は、迷宮研究所の前まで来る。迷宮研究所の前には、二人の魔人が立っていた。
「ミレンダに会いに来た」
「はっ!」
「どうぞお入りください!」
その言葉に俺は、頷いて二人を労った後、迷宮研究所に入っていった。
迷宮研究所の内部は、もはやSFのような様相になっている。自動ドアだし、すれ違う警備兵だって、何やらアサルトライフルみたいな銃を持ってる・・・・・・・。
アサルトライフル!!??
俺は、それを見た瞬間急いで走り出す。向かう先には、白衣を着て長いダークグレーの髪を垂らした美人女性が。
「おぉい!ミレンダァ!」
「ん?なんだい?あ、カゲマサかい!」
「お前なんだあの銃は!とうとうあそこまで発明しちまったのか!」
ミレンダは、気だるげな声で振り返り、俺を見た瞬間、笑顔になってこちらに駆け寄ってきた。
「やっと帰ってきた!アンタに見て欲しい発明品が沢山あるんだよ!」
「それは、あのアサルトライフルもか!」
「ああ、あれかい?あれもそうさ。今は、迷宮の一部兵士達に貸し出して実験的に運用してるのさ。すごいだろ?あんたの持ってきた本のお陰さ!」
ミレンダの持っていた本には、『世界の銃大百科』という本が握られていた。
「しっかし、よくここまで仕上げたな?で、性能のほうは?」
「ああ、それは」
「待ってくだせぇ。そいつは、俺が説明しますわぁ」
その声と同時に入ってきたのは、くたびれた白衣に灰色の髪と赤目、鍛えられた体躯と咥えられたタバコという、端から見ればただ者ではない臭のするおっさんだった。
「お前は、あ~、待て?たしか奴隷二百人買った時にいた気がするんだが」
「アイアンともうしやす、あの時は俺の両腕を治してくれて、感謝の言葉もねぇ」
アイアンと名乗る魔人は、そう言って頭を下げる。
「組織もデカくなったからねぇ。一部の専門職に手伝ってもらってるのさ」
「なるほど。いわば、迷宮研究所の幹部か」
「その認識でOKでさぁ。人間だった頃は、しがない武器職人だったが、こっちに来てからは迷宮の兵隊さん等が使う武器を造ってましてねぇ」
「ふむ、何か不便な点は?」
「そんなまさか!非常に充実してますよぉ!いろんな武器造って、それを使われている様を見るだけで心が踊らぁ!」
アイアンは、興奮したように力説する。俺は、取り敢えず《鑑定》してみる。
名前 アイアン・ウェポナー
種族 中級魔人
職業 研究所武器開発部門長 カゲマサの心酔者
レベル 12
ランク B
スキル 製鉄 作成 鍛冶 道具鑑定 岩魔法 身体能力強化 etc.
まあ、色々な造る系のスキルがあるのは分かる。しかし、何故俺に心酔している?
そんな俺の疑問に答えるようにミレンダが耳打ちする。
「彼といった身体欠損奴隷組の奴等、治してくれたアタシやアンタに感謝して忠誠心を持ったんだよ。今やダンジョンモンスター並に働くさ」
「ふむ、そんなにか?」
「そんなにさ。なんせ、二度と治らないと思ってた欠損が治っちまったんだ、感謝するだろ」
「そんなものか」
俺は、そう呟いて改めてアイアンに向き直る。
「すまん、待たせたなアイアン。さあ、あのアサルトライフルについて教えてくれ」
「はいでさぁ!まずは、この魔導式アサルトライフルゼロ型ですが・・・・」
アイアンは、興奮しながら説明してくれた。
口径、弾、装弾数、全長、重量、有効射程など様々なことについて説明してくれたが、俺にはちんぷんかんぷんだった。分かったのは、火力と軽便さを両立する最適さということだけ。
「以上でさぁ。どうでしたか?」
「ふむ、よくもまぁここまで練り上げたものだ。何か報酬を」
「いやいや、報酬なんてとんでもない!俺は、好きでこの武器開発をやってんです!報酬をいらないでさぁ!」
「ふむ、だが何か報酬をやらんと俺の気が収まらん」
「ぐぬぬ・・・・ならば、酒を。ビールって酒を頂けたら」
「ほれ」
俺は、道具創造でビールを取り出し、アイアンに渡す。
「ありがとうごぜぇやす!さっ!次の案内にいきますよぉ!」
「そうそう、まだ案内してない場所あったんだっけ」
え?まだ続くの?
俺は、そう思いながらミレンダとアイアンに着いていった。
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