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“冥府教”の戦力、今後の方針


◆セブンス帝国 帝都セプト 皇宮謁見の間 カゲマサside



俺達は、ロロさんの転移でセブンス帝国が誇る帝都セプトにある皇宮まで転移。そして、帝国近衛騎士団に警護されながら謁見の間に通された。


「そう、サマンサもリリエルも亡くなったのね。お悔やみ申し上げるわ」

「···はい」

「···ありがとうございます」


謁見の間で待っていたのは、セブンス帝国の建国者にして俺の大先輩ダンジョンマスターである銀髪赤目幼女、ナナ・セブンス皇祖帝である。その表情は、非常に残念そうであるが、裏で何を考えているのか良く解らない。


「勇者パーティーの人員は、また別の日に募集します。今は、二人の葬儀を執り行い、二人の死を悼まなくては。報酬はその後で」

「···わかりました」

「····」


勇者サユリは、かろうじて返事をしたがナハリアは顔を真っ青にして黙ったままだった。


「··今は休みなさい。葬儀の日が決まったら連絡するわ」

「···はい、失礼します」

「·····失礼、します」


勇者サユリとナハリアは、フラフラと立ち上がりながら謁見の間を後にした。


さて、次は俺か。


「···カゲマサ、今回は大変良くやりました。敵の上級幹部クラスの正体特定は、今後“冥府教”調査を前進させるでしょう」

「ありがとうございます」


嘘だ。ナナさんの顔は笑っているが、本音は違うだろう。殺さずに連れてきてほしかった筈だ。


「よって、今回の報酬は貴方の自由です。さあ、何が欲しいですか?可能な限り叶えましょう」

「·····」


俺が欲しい物・・・・・。それは。


「そちらが掴んでいる“冥府教”の情報を戴きたい」

「···おや」


俺の言葉にナナさんは、太陽のような笑顔から影のある笑顔へ変える。


「理由は?」

「任務の都合上強制的に“冥府教”に関わったんです。これからも奴等と関わる機会もありましょう。そのためには、より詳しい情報がいる」

「·····」

「掴んでいるんでしょう?俺よりも」

「·····まぁね」


ナナさんは、ニヤリと笑い一枚の資料を取り出す。そして、その資料をこちらに渡してきた。


「これは?」

「こちらの把握している現在の“冥府教”の戦力及び拠点の場所よ」

「···なんと」


その資料には、こう書かれている。



◎冥府教、通常戦力

・平信者、約一万四千名以上


・司祭、約三千名以上


・司教、約千名辺り


・枢機卿、九名


各地の冥府教支部に潜伏中。秘密裏に監視中。帝国内にも複数確認。



「司祭?司教?枢機卿?そんな奴等いなかった筈ですが」

「さあ、知らず知らずの内に倒してたんじゃない?」


余談だが、ロシフェル聖王国聖騎士脱走事件や今回のマーロイ事件の際に、カゲマサは幾人かの司祭や司教を殺害、情報を抜き取っている。カゲマサ本人は、そこらの有象無象の一緒に取り扱っていた為気付かなかったのだ。


(失敗だったな。次からはもっと確認しなければ。まあ良い、どうせ大した地位もない奴等だ。大した情報もありはしない)


そう考えながら俺は、資料を読み進める。



◎冥府教、特記戦力

・“兵士(ポーン)”、八名→二名


・“僧正(ピショップ)”、死亡。補充の可能性あり。


・“騎士(ナイト)”、マーロイの個体死亡、残り37564体。本体、位置不明。帝国内に分体三百名あり。


・“城砦(ルーク)”、現在ロシフェル辺境に確認。秘密裏に監視中。


・“女王(クイーン)”、位置不明。


・“(キング)”、位置不明。



「···求めておいてなんですが、良く集めましたね」

「あら、そんなの私のダンジョンモンスターに任せれば簡単よ」

「···そうですか。しかし解せません。ここまで解っていて、何故潰さないのですか?」

「彼等のボスが動かないから」

「“王”と“女王”ですか」

「ええ、いくら奴等の手足を捥いでも、また年月を重ねて動き出すわ。その流れを絶ち切るためにも、“王”と“女王”を同時に討ち取り、終わらせなければならない」


ナナさんの言葉には、並々ならぬ決意がに溢れていた。通常のナナさんを考えれば異常である。つまり、それほどまでに警戒を要する敵なのだ。それと同時に疑問もでる。


「あの、ナナさん。もしや、“王”と“女王”の正体、知ってるんじゃありませんか?」


そこまで敵視しているということは、過去にあった存在ではないかと俺は聞いた。


「私が明かせる情報は、そこまで。それ以上は教えられない」

「何故ですか」

「まだ貴方が弱いから」


···否定できない。今の俺の強さは、ランクSに至ってはいるが、聖王国の〈神罰者〉マリアンナ・ミルムなど、俺よりも強い奴等はざらにいるのだ。そりゃ、弱いといわれる。


「自分のことどう思っているか知らないけど、最低でもランクSの壁は越えて欲しいところね」

「ランクSの壁、ですと?」

「そうよ。それさえ越えれば、本格的に貴方を対“王”“女王”の戦力に入れられる。奴等の最重要機密も教えられる」


・・・・もしや、ランクSの先に更なるランクがあると?ランクSSとか?


「···であれば、更に鍛練を行わなければなりませんな」

「急ぎなさい。奴等は、上級幹部クラスを“騎士”を使って量産しているわ。それらに対抗するには質で凌駕するしかない」


ナナさんは、真剣な声音で話す。そこまでいかなくては対抗出来ないって、どれだけ“冥府教”のボス強いんだよ。本音を言えば、戦いたくない。ダンジョン奥深くでダラダラしていたい。だが、ナナさんの様子を見る限り俺に多少期待しているようだし、衝突は避けられないだろう。


「わかりました、出来る限りの努力しましょう。しかしあまりダンジョンを空けるわけにもいきませんから」

「だいじょうぶよ、貴方のダンジョンは帝国にある数あるダンジョンの中でもトップクラスの難易度だから」

「はぁ」


そう言われてもな。オレのダンジョンは、兵力ならそこらのダンジョンより多いと思うが、質に関してはまだまだと感じている。ランクSだってまだ三体しかいないのだ。


「じゃあ聞くけど、今まで組織的に冒険者を殺しに来てるダンジョンなんてあったかしら?」

「いや、ダンジョンバトルなんか最たる例じゃないですか」

「あれは、ダンジョン同士の戦争だから除外。冒険者からみたら、貴方のダンジョンは攻略難易度は異常なのよ?」

「いや、まさか」

「モンスターが常に連携を取り、常に弱点を洗い出して、更には毒や呪いといったものを積極的に使い、見たことの無い兵器を使って徹底的に冒険者を潰すのよ?そりゃ上がるわ」


まあ、人間の恐ろしさは前世でいやという程知ってるからな。一人でも情報を持ち帰らせたら、一気に対抗策が構築されるのだ。それが“冥府教”に渡ったらどうする?俺のダンジョンが狙われるだろう。


「まあいいわ。貴方の部下達もいずれ表舞台に出てもらう必要もあるかもだから、注意してね?」

「了解です。更なる戦力拡大を目指します」

「よろしい。あ、ついでに伯爵に叙爵しておくから。退出を許可します」

「ゑゑ···?······はい、失礼します」


俺は、最後の一言に一瞬呆けたが直ぐに持ち直し、謁見の間から退出した。














謁見の間から退出したカゲマサを見て、ナナはため息を吐いた。


「あの男、相当自分に自信がないのね。未だに自身のダンジョンを優秀と認めないなんて」

「お嬢様、いえマスター。カゲマサ殿は、過剰にこの世界を恐れている節があります。恐らくは、マスターの存在を知ったこともあるかと」

「だからこそ、完全無欠のダンジョンを作り上げ、そこに隠匿する、ねぇ。まあ、“冥府教”といった驚異がある以上、そんな時は来ないでしょう」

「ですが、少なくともカゲマサ自身は大幅に強くなりましたね」

「分体とはいえ“騎士(ナイト)”の魂を千回以上壊したらしいしねぇ」


ナナは、最後にみたカゲマサの《鑑定》結果を思い出す。


「あれだけ行けば、ランクSの壁超えも案外早いかもね」



名前 黒木影正(クロキカゲマサ)

種族 王級魔人

職業 ダンジョンマスター 冒険者

レベル 89

ランク S+

スキル 魔人王 魔法王 存在関知 人智を越えた生物etc.



彼の今後が少し楽しみになったナナは、小さい笑みを浮かべた。


なお、カゲマサはダンジョンに戻った後に自分のステータスを見て愕然としたが、それはまた別の話。

ランクA+の経験値×1056×邪神の経験値ブーストで大幅レベルアップしたカゲマサ。ご都合主義でありますが、ご容赦ください。


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