マーロイ北部での戦闘③
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◆マーロイ北部 “乾きのダンジョン”前 カゲマサside
いきなりキャラが変わった“騎士”に困惑して、頭の上に?マークを連発させている俺に“騎士”は、グロテスクな姿を晒しながら攻撃を開始した。
「グォォ!カラダガアツ、イ!ゼンブ、オマエノセイダ!《メイ針ケン・ハリヤマジゴク》!」
俺への呪詛を吐きながら短剣を地面に突き刺し、俺の足元から大量の針を射出する。俺は、即座にサイドステップで躱すが。
「オエ!」
その一言で大量の針は、ひとりでに動きだし、俺目掛けて追跡を開始する。
「糞っ!追跡機能ありかよ!」
俺は、高速で飛来する百本以上の針を《俊足》といった加速系統のスキルや風魔法【フライ】を駆使して、針の追跡を躱そうとする。しかし、針は執念深く追跡しており、中々降りきれない。
俺が《冥針剣・針山地獄》を躱し続けて数分経過。
「グググ、ナカナカシナナイ!ハヤクシネ!モウヒャクホンツイカダ!」
“騎士”は、何時までも躱し続けている俺に痺れをきらしたのか、再び《冥針剣・針山地獄》を発動。針の本数を増やして追い詰めようとしている。
(···これ以上は、埒が明かない)
何時までも躱し続けていたら、“騎士”はどんどん針を増やし続けるだろう。そうなっては、こちらが持たない。魔力ポーションは底をつきかけている現状、【フライ】の長時間使用は避けたい。
(糞、このままじゃあいずれ追い付かれる。どうしたら)
俺は、必死に足りない脳味噌を回転させて考える。
そして。
(あ、そう
ドスドスッ!
たった今、何かを思い付いた瞬間、俺の胸を何十本もの針が貫いていた。
「····し、しまっ···た。グフっ!」
俺は、膝から崩れ落ちる。胸からは、ドクドクと血が流れ出しており、いかにも致命傷といった感じである。そして、俺はその場に倒れ付した。
◆勇者パーティーside
「···そんな、あり得ない!」
勇者パーティーのナハリアは、認めたくないようにそう叫んだ。
勇者パーティーが見たのは、こちら側の最高戦力である〈帝将〉カゲマサが胸から何十本もの針を生やして、砂漠の大地に倒れ付した光景だった。
「··ナハリア、サマンサさん、リリエルさん、いくぞ」
「サユリ?」
「奴を倒す。この場でアレを残したら、間違いなく恐ろしいことをしでかすぞ」
「同感!ありゃあ、そこらの連続殺人者がかわいく見えるぐらいの害悪だよ!」
「ええ、アレは世の中に解き放ってはいけません!」
「解ってるわよ!早く片付けて、さっさとこんなこと終わらせるわ!」
勇者サユリの直感は告げていた。アレを野放しにしておくと、この世界の人々は恐らく奴によって殆どが殺されてしまうと。だからこそ、今この場で奴を倒すと決意した。
当の“騎士”はというと。
「ギャハハハハ!ギャハハハ!ギャハハ!シンダシンダシンダァァァ!オレサマ二サカラッタバツダァァ!!」
下品に嗤いながら、カゲマサの身体をゲシゲシと踏みつけていた。それを見ていた勇者サユリは。
「···聖剣よ、今こそ敵を討つ時だ」
持っていた剣に語り掛ける。すると剣は、青白い光を放ちだす。
「ふん!」
青白い光を放つ剣を勇者サユリは、今まさにカゲマサの肉体を蹴っている“騎士”に目掛けて剣を振り下ろす。
すると、青白い軌跡を引きながら斬撃が“騎士”に向かって飛んでいく。そして、ものの見事に“騎士”の左腕を切り飛ばした。
「イ、イデェェェ!!ダ、ダレダ!コンナコトヲシヤガッタノハ!!」
“騎士”は、切り飛ばされた左腕を見て泣き喚く。そして、下手人である勇者サユリを見てグロテスクな顔を歪ませて短剣を構えた。
「オマエラダナ!?シネ!《メイエンケン・シャクネツジゴク》!!」
“騎士”は、勇者パーティーに《冥炎剣・灼熱地獄》を放つ。
しかし。
「聖盾よ!我等に大いなる守りを!」
サマンサの生み出す光の膜に阻まれる。だが“騎士”は、強引に捩じ込むべく《冥炎剣・灼熱地獄》の威力を高める。
「聖杖よ!我等に正義の輝きを!」
そこにリリエルの持つ杖が神々しく輝きを放ち、サマンサの盾から放たれる光の膜を更に補強する。
「ありがとリリエル!」
「いえ!ナハリアさん!」
「解ってるわよ!聖矢よ!我が敵を討て!」
ナハリアが矢を引き絞り、放つ。光輝く矢は、まっすぐ“騎士”のモとへ飛んでいく。そして、その矢は“騎士”の心臓を貫いた。
「アガァァァ!!」
心臓を貫かれた“騎士”は、短剣を取り落とし、残った右腕で心臓に刺さった矢を引き抜こうとする。
「グギギギィィィィ!!ヨクモ、ヨクモオレサマノシンゾウヲォォォ!!」
やがて、矢を心臓から引き抜いた“騎士”は、目に怒りを滲ませながら短剣を取り、《冥限剣・無限地獄》を発動させようとする。
「《メイゲンケ
「いや、お前はここで死ぬ。害悪」
「ナァ!?」
しかし、いつの間にか背後に回っていた勇者サユリの攻撃によって《冥限剣・無限地獄》がキャンセルされ、驚きながらも怒りを顕にした。
「キサマァァァ!!コロシテヤルゥ!!」
“騎士”は、勇者サユリを睨み付けて、激情のままに短剣を振るう。
しかし勇者サユリは、その一撃を予想していたのか余裕で剣で受け止め、逆に剣の切っ先を短剣を持つ右手に突き刺し、右手ごと短剣を遥か彼方に切り飛ばした。
「ギャアァァァ~~~!!?オ、オレサマノミギテガァァァ!!」
「うるせぇ!!ギャアギャア喚くな!」
勇者サユリは、悲鳴を上げる“騎士”を見下しながら更に“騎士”の右足を切りつける。
「ギィィィィ~~~!!?クソ!チクショ~!」
「これで終わりだ!聖剣よ!」
勇者サユリは、言葉とともに神々しく輝きを放つ聖剣を掲げながら言い放つ。
「ヤ、ヤメ」
「消えろ!この世界から!《極光聖斬》!!」
勇者サユリの《極光聖斬》により、“騎士”は光の斬撃の中に飲み込まれた。
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