ピラミッド侵入①
◆ダンジョン最奥 コアルーム
警戒しながらコアルームに入ってきたチョウ・キュウホを見て、“騎士”は薄く嗤う。
「ふぅむ、ランダムに設定してた転移罠で偶々コアルーム近くの部屋に送られましたか♪運が良いのか悪いのかわからない魔族さんですねぇ♪」
「黙れよ、大魔王様の敵。大魔王様から、貴様を捕らえよとの命令を受けている。大人しく投降しろ」
「ぶふっ」
その言葉を聞いた“騎士”は、ぶっと吹き出して嗤い始めた。
「あはは♪私を♪俺を♪僕を♪我を♪我輩を♪アタシを♪“我々を”捕まえるってぇ~?♪」
「···?“我々を”だと?」
まさか複数人いるのか?と、チョウが考えた瞬間、座っていた“騎士”が消え、
チョウの背後に現れた。
「イキがるナよ、魔族とイう下等生物のクせに」
ゾクッ。
その言葉に、途轍もない寒気を感じたチョウは、隠し持っていたマヒ毒が塗られたナイフを“騎士”の顔面に突き立てようとする。
「ふん」
だが、“騎士”の持つ剣の一閃で弾き飛ばされる。ナイフは、刃の部分が砕かれ使い物にならなくなってしまった。
「あ!♪ごめんなさーい♪ついつい別の側面が出ちゃいました♪あの側面は、変にプライドがたかいんですぅ~♪」
“騎士”は、笑いながら謝罪した。しかし、ちっとも反省した様子は無いが。対して、チョウはというと。
(一体どうなっている?あのプライドが高い奴と今の奴、気配がガラッと変わったぞ?)
チョウが感じ取った気配、今笑っている“騎士”が笑いながら平然と人を殺す異常者ならプライドの高い奴は傲慢で威圧的、自分以外は全てゴミと言いそうな暴君の気配なのだ。あまりにガラッと変わりすぎている。
(まさか、二重人格者か?)
そう疑う隙に、“騎士”は剣をチョウに向ける。
「さ~て、侵入者は排除♪排除♪」
非常に嬉しそうな“騎士”。嬉々として技を使う。
「《冥針剣・針山地獄》♪」
「ッ!!」
その言葉に再び途轍もない寒気を感じたチョウは、バックステップで後退する。すると、チョウが立っていた場所から何十本もの針の山がつき出されたではないか。
「おやぁ、躱しましたか♪そこそこやりますねぇ♪」
「···出し惜しみは駄目だな。〈召喚玉〉」
「ん?♪」
チョウは、懐から四つの紫色の玉を取り出した。そしてその紫色の玉を床に叩きつける。すると紫色の煙が立ち込めて。
「「バウッ!」」
「「GAAAAAA!!!」」
現れたのは、二匹のD・ドッグとD・ラプトルだ。
「ほ~う、あの砂漠にいた犬やトカゲは、貴方のペットでしたか♪」
「行くぞ!D・ドッグとD・ラプトル達よ!」
「「バウッバウッ!!」」
「「GYAAAAAA!!」」
チョウの言葉にD・ドッグとD・ラプトルは、お互い雄叫びをあげて“騎士”に向かっていった。
◆第二階層 黒砂漠ピラミッド前 カゲマサside
さて、ミイラ共も怨霊共も始末したし、さっさとピラミッドの中に入るか。
「〈砂嵐の音〉い!」
ん?
激しい砂嵐で良く聞こえなかったが、誰かに呼ばれたような。
「お〈砂嵐の音〉!聞こ〈砂嵐の音〉の~!?」
気のせいか?というか、マジで砂嵐が煩いんだが。ビュービュービュービューとさぁ。
「〈砂嵐の音〉!〈砂嵐の音〉てるかつってるでしょうが!!」
「キコエっ!!??」
思わず「聞こえない」と言おうとしたら、横から思いっ切りビンタされた。思わずビンタした奴を見ると。
「まったく、《聴覚強化》ぐらい付けてなさいよ!」
「ナハリア、ビンタする程か?」
「まあまあサユリ、今回は気付かなかったカゲマサさんが悪いわ」
「···漸く合流出来ましたね」
まあ、案の定勇者パーティーだった。所々装備がボロいが、大方砂嵐かモンスターによって傷つけられたのだろう。
「どうしたの?行かないの?ピラミッド」
「···いや、行くさ」
俺は、ビンタのことを棚上げしてピラミッドへ進もうとする勇者サユリに若干苛つきながらも勇者パーティーに同行することにした。
勇者パーティー+カゲマサ、第二階層黒砂漠、最終関門、ピラミッドへ侵入開始。
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