突入
短いぞよ。
◆港町セイワン 秘密会議室 カゲマサside
さて、俺は予めロロさんから聞いていたから解っていたが、案の定勇者パーティーは驚きで固まっている。
「さあ、〈調教師〉。さっさと作戦を決めようじゃないか」
「うむ。ところでカゲマサ殿、大魔王様が貴殿にこっちにこないかと勧誘なされているが」
「丁重にお断りさせてもらおう。今のところ、帝国から動く気はない」
「残念だ」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」
「ん?なんだ?」
俺と〈調教師〉、チョウ・キュウホが雑談していると、勇者パーティーの一員であるナハリアが声を荒くしながら問い詰める。
「なんで敵である〈調教師〉と仲良くしてんのよ!そいつがマーロイがおかしくなった元凶なんじゃないの!?」
「そんなこと言われてもな。これはロロさん、いや帝国が下した決断だ」
「そんなの聞いてないわよ!」
まあそう言う気持ちも解る。俺だって知らされたのついさっきだし。
『···“冥府教”が出てきたのならば、もう茶番はいりませんね』
『え?茶番?』
『貴方には予め言っておきます。今回の作戦協力者は、〈調教師〉です』
『···········はい?』
『〈調教師〉は、魔王朝が派遣した“冥府教”を追跡する者、彼の破壊活動は“冥府教”をあぶり出すだけのものですから。変な邪推は必要ありませんよ』
『·····はあ』
『勇者パーティーには、まだ伝えていません。貴方が伝えなさい』
『え?何故です?』
『その方が下手に追及されずに済みます。楽ですし』
と、いった会話が成された翌日に集結だからなぁ。まったくいきなり過ぎる。
「まあ、お前等は魔族にいろいろあるだろうが堪えろ。今は味方だ」
「···まあ、味方ならいいさ。話を続けようぜ」
「サユリ!?いいの!?」
「今回の一件、帝国も魔王朝なんか“冥府教”って奴等捕まえるんだろう?なら利害が一致してるじゃん」
「そ、それはそうだけど」
ナハリアは、終始嫌そうだったが最終的には折れた。
「で、まずは何すんの?」
「まずは“乾きのダンジョン”の情報整理からだ」
チョウ・キュウホは、懐から一枚の地図を取り出す。
「冒険者ギルドに出回っている“乾きのダンジョン”の内部構造だ」
「ほう、これが」
見事なまでに逆三角形だな。下層に行けば行く程階層が小さくなっている。
などと考えていると、勇者サユリが手をあげる。
「質問いいかい?」
「なんだ?」
「これは何時の地図だ?」
その発言にチョウは、苦虫を噛み潰したような顔になり口を開く。
「ああ、そうだ勇者サユリ。この地図は、“冥府教”に占拠される前の地図。今はどうなっているかわからん」
「なるほど。じゃあ、内部のモンスターは?」
「主に砂漠に生きるモンスターだな。サンドウルフにサンドシャーク、サンドマン、スコーピオン、サンドゴーレムなどだな。上位のモンスターとしてスフィンクス、サンドドラゴンなどがいる。···これも占拠される前の情報だ」
チョウは、少し項垂れながら話す。恐らく探っても何も出なかったのだろう。地味にショックらしい。しかしこんなところでウダウダやっている暇は無い。
「まあ良い。さっさと行くぞ?〈調教師〉。確か北に合ったな?」
「ん?そうだが?」
「良し、ちょっと待ってろ。···見つけた」
俺は、そう言うやいなやチョウと勇者パーティーに自分の肩を触るように言った。皆怪しんでいたが、何とか触ってくれた。そして俺は、久々に空間魔法【ディメンションムーヴ】を発動。その場から転移した。
◆マーロイ北部 “乾きのダンジョン”前
転移が完了してカゲマサ達が見たのは、ダンジョンらしき入り口の門に門前に転がる大量の死体。
「こ、これって!?」
「酷いねぇ、こりゃあ」
「ああ、神よ。彼等の魂に幸あらんことを」
「···」
勇者パーティーは、三者三様の反応をして勇者サユリだけは終始無言だった。一方のカゲマサはというと。
(良く見ると、“冥府教”の下っ端共の死体まであるな。後で回収して、人工魔人の素材に使おう)
と、そんなことを考えていた。
「おほん、では行くぞ」
何時までも進まない彼等に業を煮やしたのか、チョウ・キュウホは先に進み出した。勇者パーティーとカゲマサもそれを追った。
いざ、“乾きのダンジョン”攻略開始である。
良かったならば、高評価、ブックマーク登録、誤字報告等、よろしくお願いいたします。




