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動き出す者達①

最近、話が難産気味や···。


◆マーロイ首長連邦 首都パレクス ボザ宮殿



マーロイ首長連邦が誇る首都、パレクス。その中央に鎮座するボザ宮殿にて再び集められた三大首長と〈調教師〉が話し合っていた。


「···以上が現場からの報告さ」


報告するのは、パルミッツ家当主のサラーデ・パルミッツ。苦々しい顔をしながら報告書を読んでいる。


「なるほど。何者かの精神魔法、か。まだ解っておらぬのか?その魔導師が我が国に牙を向けたら一大事だが?」

「···簡単に解るなら苦労はしないさ」


サラーデは、苦言を漏らす老人、ワンロール家当主のシャムバ・ワンロールを睨めつけながら答える。


「あんた肝いりの〈監視員〉達を貸してくれたら捗るんだけどねぇ?」

「ふっふっふ、すまぬのぉ。今彼等には、重要な任務を課しておるのでな」

「へぇ、それは失礼したねぇ」


チッ。サラーデは、僅かに舌打ちする。


〈監視員〉。

マーロイ首長連邦に存在するマーロイ国内に存在する脅威や謀反を企む者、法律違反を犯した者等の発見・捕縛や国内の監視を行う者達の総称。総数は不明。所属条件も不明。シャムバ・ワンロールが主導して設立しているので、表向きは国直轄だが実質上シャムバの私兵となっている。


「ま、まあまあ、アークダール軍は撤退したようですし、そんなに剣呑にならなくても」


肥満の男性、イデリン・ダブールンカは汗を流しながらも懸命に二人を宥めようとする。二人の間に嫌な空気が流れ出したのを察知したからだ。


「そ、そうだ!〈調教師〉殿はどうお考えで?」


話をふられた〈調教師〉は、少し困った顔になったが気を取り治して話し始める。


「私は、自身のモンスターが活躍するならばそれで良いのですが。まあ、言うならば放置するしかないかと。〈監視員〉が忙しく軍も国境付近砦の警備に忙しい。動かせる暇はないと思われます」

「···チッ、ならばせめて軍の情報部は動かさせてもらうよ?」

「好きにせい」

「わ、解りました。サラーデ殿」

「···」


サラーデは、不機嫌そうに部屋から退出した。


「···ふん、若輩者め」

「で、ではシャムバ殿。私もこれにて。あ、〈調教師〉殿。お話があるので執務室にご足労願えますか?」

「よかろう。・・・イデリンよ」

「は、はい」


突如呼び止められたイデリンは、恐る恐るシャムバの方を見る。


「上手くやれ。今回の事次第で、我がマーロイは更なる飛躍を遂げる」

「わ、わかっておりますとも」


イデリンは、汗を拭いながらも頷く。そして〈調教師〉と共に退出した。


「···さて、儂も動くとするかのぉ。サラーデの若造が余計な事をせんうちに」


シャムバは、そう言って部屋から退出した。














◆イデリンの執務室



会議室から退出して執務室に入った〈調教師〉とイデリン・ダブールンカ。二人はそれぞれソファに座り、話し始める。


「〈調教師〉殿、魔王朝とかの国から連絡はあったのですか?」

「はい。本国経由で連絡がきましたよ。今回の件、上手く納めればマーロイとの貿易を更に強化するとのこと。本国とかの国は言っています」

「そ、それはありがたいことです」

「はい、我が君主であらせられる大魔王様は契約をきちんと守る御方ですから」

「何卒お願いいたします。あ、そうでした。おい!入ってきたまえ!」


イデリンに促されて入室してきたのは、一人の全身黒ずくめの男。


「彼は?」

「〈監視員〉の者です。おい、“奴等”は見つけたか?」

「はっ。例の一件以降、“奴等”が一斉に動き出しました。悟られるのを防ぐため、遠くからの監視に留めています」

「な、なるほど。では、サラーデ殿はどうした?」

「現在、軍の情報部を動員して、必死に手柄を得ようと躍起になっております」

「わ、わかった。この件は、サラーデ殿には伝えないようにする。シャムバ殿も同じ考えか?」

「はっ」

「わかった。下がりたまえ」

「失礼いたします」


そう言って〈監視員〉は、その場から消えた。


「ふむ、何故サラーデ殿に伝えないのです?」

「···あ、あの者は、自身の軍に高い誇りを持っています。今回の件を伝えれば、恐らくマーロイ軍だけで解決しようとするでしょう。無駄に突撃させて、我が国の戦力を落とすわけにはいきません」

「···そんな狭い心ですか?彼女は」

「い、今まで鍛え上げてきた軍ですから誇りたいのですよ。軍人は、総じて頭が固いですから」

「···まあ、良いです。それで、戦力は?」

「あ、相手が相手です。今回は、かの国の戦力も派遣してもらいました。ご心配なく、非常に強い強者です。そのうちの一人は、既にこの国に入っているとか」

「そうですか。···協力感謝します」

「い、いえいえ、私はまだ死にたくありませんので。サラーデ殿は、シャムバ殿が何とかするでしょう。安心して事に当たるがよろしいかと」

「ええ、そうさせてもらいます」


二人は、少し笑いあった後それぞれ動き出した。














◆マーロイ首長連邦 港町セイワン



アークダール軍撤退から二日後、港町セイワンに一隻の船が停泊した。その船には、白を基調として中心に黒い円がありその中に金色の獅子が描かれた旗が掲げられていた。


船から降りてくるのは、船長と思わしき男に四人の護衛らしき者達だった。胸には、獅子のバッジが着いている。その後続々と護衛や水夫達が降りてくる。


「よ、ようこそマーロイへ。私は、マーロイにおける外交および貿易を担当しております、イデリン・ダブールンカと申します」

「これはこれは。私は、数々の国々を行商しております、ロロと申します」


そこで出迎えたのが、イデリン・ダブールンカ。対して応対したのが船長らしき者、ロロと名乗る男だった。


「ほ、ほほう、因みにどのような商品を取り扱ってらっしゃるので?」

「ふふふ、実は是非とも勧めたい商品がありまして」

「ほ、ほうほう、それは詳しく聞きたいですな。この後お時間はありますかな?」

「ええ、今後もこの国とは商売したいので」

「そ、それは光栄だ」


そう言ってイデリンとロロは、歩き去る。その際、ロロが四人の護衛に目を向けていった。その目を見た四人の護衛は、一斉に行動を開始する。


四人は、セイワンの町を歩いていき、一つの建物の前にたどり着いた。四人は、その建物に入っていく。中は、誰もおらず人の気配が皆無だった。そんな中四人は、まっすぐ歩いていく。やがて四人は、一つの扉の前に立った。先頭の者が扉を迷わず開ける。


扉を開けた先には、綺麗に整えられた調度品に三つのソファがある部屋が存在した。それを確認した四人は、胸に着けてあった獅子のバッジを取る。すると、四人の姿がブレていき。


「はぁ~~!暑かった!本当に暑いわねこの国!」

「仕方無いわよナハリア。砂漠地帯にある国なんだから」

「でも、暑かっですね」

「そーよ!もう暑いのはウンザリだわ!」


四人の内三人は、勇者パーティーの面々。そして最後の一人は。


「なあ、ここが集まる場所だよな?」


勇者パーティーのリーダー、勇者サユリ。


そしてこの部屋で待っていたのは。


「〈帝将〉、カゲマサさんよ」




セブンス帝国が誇る最高戦力の一人、カゲマサだった。


「ああ、合っているぞ。勇者パーティー」

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