モグ&マグ③
◆アークダール国境付近砦 カゲマサside
よし、あのモグラ野郎を引きずり出して捕まえてやったぜ。
俺がやったことは二つ。先ずは、《聴覚超強化》によって、穴堀の音を聞き取り位置を特定。そして穴堀ルートを予測して、出てくる位置に【ゲート】を設置。【ゲート】の移動先は、掘る大地の無い空だ。
まったく、手間を掛けさせやがって。
「き、貴様!一体何をした!?」
「うるさい。さっさと情報を抜き取らせてもらうぞ」
俺は、喚くモグラ野郎を無視して、モグラ野郎の頭を指を入れた。頭蓋骨を貫通して脳に触る。そして【メモリースキャン】という脳から直接情報を抜き取る精神魔法を使う。その瞬間。
『ばあぁぁぁ~~~~~♪♪♪』
「うおっ!?」
抜き取った画面に現れたのは、まさかの“騎士”だった。
『この画面が出てるってことは、記憶でも読み取りましたか?♪ふふ、ふふふふふ、ふふふ、残念ですねぇぇぇぇ~~~~~~~!!♪二人には、前もって《冥針剣・針山地獄》を仕込んでおきましたので♪』
「は?まさか」
「ひぃ!お、お待ちください“騎士”様!私は、まだお役に立てま」
『はい、バーン♪』
俺は、すぐさまその場から飛び退く。
「ち、畜生がぁぁぁーー!!“冥府教”に入れば強くなって好き勝手出来るとおも、っ!!」
そう憤慨し呪詛を吐いたモグラ野郎は、自身の身体中から針が無数に生えてきているのを見てしまった。
「なっ!?い、いつの間に!?」
モグラ野郎がそう言う間も針は、モグラ野郎の身体から生えるのを止めない。
「お、おい!お前!」
「あ、俺か?」
「じょ、情報が欲しいんだろ!?俺を助けてくれたら情報をくれてやるから助けてくれ!!」
「···」
俺は、少し悩む。そして思い付いた。
「《真実》。“騎士”は何処だ?」
「“騎士”様は、今“乾きのダンジョン”に居る!···はっ!?」
いきなり居場所をしゃべってしまい驚きに顔を歪める。
「な、なんで!俺は、一言も」
「《真実》。奴は、何故“乾きのダンジョン”なんぞにいる?」
「そこのダンジョンマスターに呪いを掛けて、占拠しているから、から、からからからからからかぁぁぁぁぁぁ!!」
そこまで言ったモグラ野郎は、《冥針剣・針山地獄》によって全身から針を吹き出し絶命した。
「さて、“乾きのダンジョン”か」
この情報の真偽を今すぐ確かめたいが、一先ずモグラ野郎の相方である男を探す。そして案の定、転移魔道具らしき物で逃げ出そうとしていた。
「ひ、ひええ!」
「よし、《真実》」
俺は、スキルを使いながら男に向かっていった。
十分後、同様の質問をして男が同じ答えをしたので、俺は男の脳にわざと【メモリースキャン】を実行。そして再び“騎士”の画面が出て、男は《冥針剣・針山地獄》によって死亡した。
因みに《真実》というスキルは、対象への質問で対象の本音を引きずり出すという効果を持つ。弱点は、対象が自身より強固な精神を持っていると抵抗されること、複数人には上手く機能しないこと。個人特化のスキルだ。
ダンジョンにいた時、何か尋問用に取得したのだが、役に立ってよかったぜ。
そう思いながら俺は、通信魔道具を起動させる。
「あ、もしもし。ロロさんですか?実は~」
◆マーロイ首都手前の町ラハス
「アークダール軍が、撤退したぁ!?」
斥候からの情報は、ラハスにて陣を敷いていたマーロイ軍幹部達に戸惑いをもたらした。
「何故いきなり!?」
「それが、奴等は当初、〈調教師〉殿が放ったモンスター共と戦闘をしていましたが、突如同士討ちを始め、無視できない損害を負った模様」
「同士討ちだと?」
マーロイ軍幹部の一人が困惑したように口を開く。
「理由は解るか?」
「はっ。これは、参謀殿の推察でありますが···」
「構わん、話せ」
「はっ。参謀殿によれば、恐らくアークダール軍は、精神魔法によって同士討ちを行ったのではないか、と推察しております」
「精神魔法だと?しかし奴等を同士討ちさせる程の使い手が我が軍にいたか?」
「申し訳ありません。そこまでは」
「むう。では、一体誰がやったのだ?」
その疑問にマーロイ軍幹部達は、答えを見つけられなかった。しかし一先ず報告すべしとのことで、マーロイ首長連邦の軍事を担当するパルミッツ家当主、サラーデ・パルミッツに報告された。
そしてこの話は、すぐにマーロイ首長連邦の三大首長の元に届いた。
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