モグ&マグ②
◆アークダール国境付近 砦 カゲマサside
さて、上手く奴等に奇襲を仕掛けて成功したわけだが。さっさとコイツら捕まえて“騎士”の情報を引き出さなくては。対峙している敵の見た目は、色黒の短い赤髪に赤目。渋めのおっさん。そして、“冥府教”の服らしい赤いローブ。因みに《鑑定》は弾かれた。
「一つ聞く。何故我々の《気配察知》に引っ掛からなかった?何故ここまで近付けた?」
おや?真っ先に襲い掛かって来ると思ったのに、会話してきたぞ?···ああ、会話して時間稼ぎか。中々に考えるねぇ。良し、少し会話して捕まえよう。
「そりゃあ、簡単だ。囮を突っ込ませただけだからな」
「囮、だと?」
「そう、囮をだ」
種明かしをすると、ふんだんに魔力を込めた砂魔法で造り上げた砂人形をコイツらに突っ込ませて、囮に。その隙にスキル《気配遮断》と《魔力隠蔽》で身を隠し、コイツらに接近した。ただ、それだけだ。
「な?下手すりゃガキでも解る手品だ。お前等はガキ以下ってことだな」
俺は、わざと煽るように話す。敵が冷静さを失って突撃してくるのを促すためだ。
「貴様···!」
案の定敵は怒っているな。ワナワナと震えながら俺を睨んでいるぞ。だが、ナナさんを知っている手前、全然怖くないが。
「では、そのガキ以下を嘗めたらどうなるか見せてやる!!オオオオぉぉぉ!!」
敵の一人が突然力み出すと、敵の一人である渋めのおっさんの両腕から四本ずつ刃が生えたではないか。あれ、いつの間にか右腕が再生してるな。《再生》スキル持ちか?
「なんじゃそりゃ」
「まだまだ!おおおおぉぉぉ!!」
どうやらまだ変化はあるらしい。またおっさんが力み出すと、刃の形状が変化してまるでもぐらの爪のようになった。
「喰らえぃ!!《形状変化闘法・土竜》!!」
そう言っておっさんは、いきなり回転し始めて砂漠の下に潜っていった。
「····」
少しまったが、まったく上がってこない。
「仕方ない。先に魔法を発動している奴を」
「上がってこないと思ったか!?馬鹿め!!」
痺れを切らしてもう片方を捕らえようとした瞬間、おっさんは地面から飛び出して強襲してきた。もぐらの爪になった腕を突き出しながら。
「おっと」
しかし俺は、難なく避ける。というか、スキル《魔力探知》や《存在関知》でバレバレだったのだから当たり前か。
「チィ、躱したか!」
そう言っておっさんは、再び砂漠を掘り進める。そして今度は、背後から飛び出してきた。
「死に晒せぇぇぇ!!」
うわっ。もう顔が肉食獣みたいで怖いわぁ。うん、怖いから反撃だな。
「俺を殺したいなら、その駄々漏れの魔力と殺気をどうにかしてこい!!」
「ぶべらぁぁ!!」
背後に迫ったおっさんを俺は、まず回し蹴りでおっさんの頬を攻撃。まさかの攻撃におっさんが吹き飛んでいくのを見ながら追撃する。やがておっさんが砂漠の砂にまみれた時、すかさず空へと蹴りあげた。
「よし、後は四肢を斬るか。【ウィンドカッター×4】」
そして駄目押しにと、【ウィンドカッター×4】を放つ。結果、おっさんの両腕両足は綺麗に切断された。
「ん?」
しかしその時、驚きの事態が起こる。おっさんの身体が突然紫色に輝いたと思ったら、五体満足になったおっさんが目の前にいた。
「驚いたって顔をしているな」
若干得意気になったおっさんが話しかけてきた。仕方無い、ここは情報を引き出すか。
「何をした?」
「ふん、我々はとあるお方から、無限の再生力を賜っている。貴様では我々に勝てんぞ?」
とあるお方か。十中八九〈騎士〉だろうな。〈騎士〉も同じような術使ってたし。
「だが、おっさんよ。あんたの攻撃力はちょっと足りないかもよ?そもそも俺に当てられてないし」
「今から当てるのだ!はぁぁぁ!」
おっさんは、再び砂漠に潜り攻撃を開始する。しかし攻撃力は乏しいが、無限の再生力を有しているのか。ゲームでいうと、対して強くないのにHPは馬鹿みたいに高い敵ということか?まあ、今回は捕まえることが重要だから関係ないか。
(まあ、今回は簡単にはいかないな。しっかり魔力と気配は隠している。だがなぁ)
俺は、砂漠の砂を見る。そしておっさんを捕まえる為、あるスキルを発動させた。
◆砂漠 砂の中 モグside
〈騎士〉配下の〈兵士〉のモグは、砂漠の中を掘り進めていた。そして相方であるマグの仕事具合を心配していた。
(マグは、上手く死の力を集めているだろうか。いや、俺の相方だ。上手くやるさ。俺は、敵に集中しなければ)
モグは、砂を掻き分けながら攻撃のタイミングを図る。
(タイミングは、奴が俺を完全に見失ってからだ。《気配遮断》も《魔力隠蔽》も、《熱遮断》も使っている。奴は、時期に見失う)
そして少し時が過ぎてから。
(今だ!)
モグは、勝負に出た。今度は、《俊敏》や《高速回転》、《身体強化》も使って倍以上の速さとなったのだ。
(こうなった俺は、もはや速さで雷を越えた!奴には、捕らえられん!)
そう考えたモグは、砂の中から地上に出た。出て気が付いた。
「···は?」
モグは、いつの間にかそらに放り出されていた。それも地上より遥か彼方に。
(何故?)
モグの頭の中に疑問符が溢れだし、一瞬硬直した。そしてその硬直を、敵は見逃さなかった。
「はい、見っけ」
その言葉を聞いた途端、モグは粘りけのあるナニかに縛られてしまった。
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