モグ&マグ①
◆ラハスへの道 上空 カゲマサside
アークダール軍の魔導将軍ザッツバインがD・ドッグとD・スコーピオンの大群と戦闘を始めた時、俺は空から戦闘の様子を伺っていた。
「へぇ、あのザッツバインて奴、中々やるな」
魔導将軍ザッツバインは、襲い来るモンスターを火魔法と風魔法の組み合わせで殲滅している。今は、炎の竜巻を作り出してモンスターの大群に放ったな。魔力総量も人間にしては膨大である。
「もしかしたらうちのダンジョンの〈百魔〉上位クラスかもしれんな」
俺のダンジョンの戦力も着々と強化されていっているが、まさかこんな中堅国家に〈百魔〉に比肩する奴がいるとは恐れ入ったぞ。
「まあ、〈六将〉・〈狂星〉に比べたら弱いが」
俺は、今頃ダンジョンを守護しているダンジョン幹部を思い出しながら呟く。彼奴等がいるから俺は、安心して外に出られるからな。いなかったらずっとダンジョンに籠ったままだった。
「····さて、独り言は止め。急いで“冥府教”の奴等を見つけなければ」
そう言って俺は、地上の戦場に目を向ける。そして何か騒がしいことに気付いた。
「あ?何で奴等、仲間割れなんかしてるんだ?」
俺の眼下には、武器を持って味方同士で戦っている奴等がいるのだ。指揮官らしき軍人が止めようとしているが、止まる気配がない。
「ん~?···精神干渉系統の魔法を使った奴がいるのか?でも何で···あ」
合点がいった。いや、ここまで露骨だと逆に罠かと疑ってしまう。だが、やっと見つけた手懸かりだ。行くしかない。
「確かに、死の力とやらは負の感情を抱いて死ねば死ぬほど多く取れるからな。味方同士で殺しあって負の感情抱かない奴なんざ、余程の馬鹿か異常者だろう。前に会った“騎士”がいい例だな」
実際、味方を殺したアークダール軍の兵士は、見るからに顔を青くしており士気が低下している。そこにやって来るのがD・ドッグとD・スコーピオン。起きるのは、当然惨殺だ。
「アークダール軍が味方殺しで死の力を出してくれれば良し、味方殺しをして負の感情満載の兵士をD・ドッグとD・スコーピオンが殺せば更に死の力が手に入って更に良し、そのD・ドッグとD・スコーピオンを魔導師団が殺して死の力を出せば万々歳。といったところか」
上手く填まれば中々にエグイループになるな。こりゃ、早く見つけないと死の力があっという間に貯まってしまう。
「とはいっても一体何処に···お?」
俺が目をやると、戦場より遥か後方。そこから微量な魔力を送り込んでいる奴がいる。恐らくアークダール軍に味方殺しをさせている奴だろう。
「···良し、行くかぁ!」
俺は、一気に加速して魔力を送り込んでいる奴がいる遥か後方へ向かった。
◆戦場より遥か後方 アークダール国境付近砦
「っ!モグ、一人来る」
「解っている。マグ、決して【ミラージュ】を解くな。こっちに来る奴は、俺が殺す」
「了解、モグ」
アークダール国境付近砦にて戦場を見ていた二人の“兵士”、モグとマグは、こちらに飛んでくる何かを警戒する。
「···来たぞ!」
「来い!」
そう言ってモグは、やって来る敵に吠えたが敵は何時まで経っても来ない。
「···おい、マグ。敵が来ないぞ?」
「馬鹿な!気配はあるんだぞ!?」
モグとマグは、確かに敵の気配を感じ取っている。だが、敵は来ない。
「な、何故だ?気配はするのに」
「···っ!しまった!罠だっ!」
「え?」
マグが戸惑っているその時、モグは素早くマグを突き飛ばす。その次の瞬間、モグの右腕が一本の剣によって切り離された。
「っ!モグ!」
「来るなマグ!【ミラージュ】を続けろ!死の力を限界まで集めるんだ!」
「りょ、了解!」
そう言ってモグは、自分に一太刀入れた敵を見る。敵は、茶色の外套に茶色の仮面という風体の男。右手に剣が握られている。
「何者だ」
「···」
「何の目的で俺を切った」
「そんなこと言わなくても解るだろ?」
お前等の敵だよ。
男、敵はそう言ってモグに襲い掛かった。
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