衝突②
最後に主人公の外道描写があります。ご注意ください。
◆アークダール軍 魔導将軍ザッツバイン
「ふむ、中々粘るな」
そう呟いたのは、アークダール魔導国における三人の最高戦力の一人で第三魔導師団を率いる魔導将軍ザッツバインである。見た目は、豪華なローブを着た初老の男性だが、その目は油断無くマーロイの砦を見据えている。
「マーロイ軍を雑兵の集まりと侮っていましたな。申し訳ありません」
「いやいや、パース殿の責任では無い。これ程奮戦すると予想していなかった我々の失態だ」
パースと呼ばれた男性がザッツバインに謝罪するが、ザッツバインは笑って許す。そしてマーロイの砦を見据えて、口を開く。
「ふむ、そうは言ったが、やはり時間が掛かりそうなのか?」
「はっ。予想以上にマーロイ兵士の奮戦が響いております」
「なるほど。・・・ならば、私を前線に出すかな?」
「えっ!?」
その言葉にパースは、驚きと同時に渋るような顔になる。
「おや?何故嫌な顔をする?」
「あ、いや、その、ザッツバイン様にはなるべく温存してほしいと考えていまして」
「補給用の物資なら沢山積んでいるが?」
「あ、そうですか。・・・しかしやるなら出来るだけ魔力消費は軽く」
「わかったわかった」
そう言うやいなやザッツバインは、ローブをはためかせながら【フライ】でマーロイの砦に向かった。
「むむ、これがマーロイの砦か!」
【フライ】でマーロイの砦の真上に来たザッツバイン。一方のマーロイ軍の兵士は、空から現れたザッツバインに驚きながらも矢を放つ。
「反応はいい。だが、当たらんよ」
矢は、見事にザッツバインの胸へ吸い込まれていったが、突如現れた透明の壁に阻まれる。
「私の【エアアーマー】を貫きたいなら、最低でも魔法が付与された矢を持ってくることだ」
ザッツバインは、そうアドバイスをしながらも魔法を発動させる。
「ふむ、これぐらいか」
その言葉を皮切りに、ザッツバインの右手からバスケットボール大の炎が、左手からは同じくバスケットボール大の風が発生。ザッツバインは、炎と風をゆっくりと近付けて、混ぜ合わせる。すると、赤い風の玉が完成したではないか。
「名前は・・・・【灼熱台風】でよいか」
そしてザッツバインの手から赤い風の玉が放たれた。赤い風の玉は、ザッツバインの手から離れて少しすると巨大な赤い台風へと変化する。赤い台風は、そのままマーロイの砦に襲いかかり。
「ぎゃあああああアアアア!?」
「アチぃ!あチィよぉぉぉ!!」
「お母s・・・!」
台風によって空に巻き上げられる者。台風から発せられる炎によって身を焼かれ、右往左往する者。そして即死する者と死者が続出する。
「·····っ!!畜生、畜生!」
マーロイの砦で隊長と呼ばれていた男性が、なんとか赤い台風から離れても。
「うん?まだ生き残りがいたか。【ウィンドアロー】」
ザッツバインの【ウィンドアロー】によって頭を撃ち抜かれた。
「よし、これで全滅だな。このまま進軍だ!」
マーロイ軍対アークダール軍
初戦
マーロイ軍。アークダール国境付近砦全壊。守備部隊、全滅。
アークダール軍。怪我人少数。死傷者無し。砦を突破し、マーロイの町に進軍開始。
◆マーロイ首長連邦 上空 カゲマサside
「マーロイめ。負けやがったな?」
大量の魔力が砦を越えてマーロイに進軍を再開したのを見た俺は、軽く舌打ちする。
「どうする?“冥府教”の連中をあぶり出せとのお達しだが、どうやって見つけるか」
問題はそこだ。俺の今の仕事は、“冥府教”の構成員を見つけること。戦争を止める訳じゃない。〈調教師〉の存在が気になるが、仕方ない。
「いっそ、アークダールかマーロイの何処かの町を滅ぼしておびきよせるか?」
さらっととんでもない発言をする俺。まあ仕方ないかもしれない。魔人になって以降他者への認識が路上の石程度になってきたし、アークダールとマーロイへの思い入れもまったく無い。アークダールとマーロイの人間が死のうと興味が無い。むしろ沢山死んだら人工魔人の素体が増えて万々歳だ。
そんなことを考えながら俺は、アークダール軍の元へ飛んでいった。
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