赤き怪人①
投稿ペースが···。
◆マーロイ首都パレクス カゲマサside
マーロイの首都パレクスに着いて宿を拠点とした俺は、情報収集を行う為にとある行動を行うことにした。
「お、ちょうど良い所にハエが」
部屋に入ってきた一匹のハエ。ハエは、壁に止まった所を俺は魔力を集中させる。
「たしか···【支配】、だったか?」
俺が魔法を行使すると、俺とハエの間に魔力の繋がりが発生した。そして俺がハエに飛べと命じると、ハエは命令通りに飛び出した。
「良し、コイツを街に放ってっと」
俺は、窓を開けてハエを外に出す。夕焼けに照らされるパレクスにハエは飛んでいく。そして俺は、ハエと感覚を同調させる。するとハエの視覚が流れ込んできて、周りの人間の喧騒が聞こえる。
(よし、行くぞ。まずは、マーロイ国民の噂話からだ)
そう考えた俺は、ハエを操作してマーロイ国民の近くに止まらせる。そして会話から情報を得ることにした。
会話を盗聴して、三時間後。
「マーロイ国民、クソッタレな会話が多かったな」
本当にクソッタレな会話が多かった。情報収集を終えた俺は、ため息を吐きながら眉間に手を添える。
やれ、ウチの嫁が浮気したから、浮気相手の妻を寝取ったやら。
やれ、あの娼婦は気持ち良いやら。
やれ、アイツはいつか殺してやるやら。
やれ、今夜は奴隷にゴブリンの糞を食わせようやら。
公衆が聞いてるかも知れないのに、堂々と話すなんてコイツら正気か?と思ってしまった。
唯一重要な情報を吐いたのは、港町セイワンとやらからやってきた商人の会話だった。
「なんと、セイワンにそのような輩が?」
「ええ、酷いものです。あの輩が入ってきたせいか、セイワンでの行方不明者が増えてきましてね」
「なんとも不穏なものですな」
「パルミッツ家も警備を強化しているようですが、何故か姿を眩ませるのが上手いのですよ。後噂だと、ダブールンカ家が手助けしているとか」
「なんと!?本当ならば恐ろしいことですぞ!?」
「まあまあ、あくまで噂ですから」
「ぬ、そうでしたな」
「しかし厄介な者達ですよ。
かの“冥府教”とやらは」
「···まさかこの土地でも、奴等の名を聞くことが出来るとはな。ますますわからない状況になったな」
もし今回のマーロイの動きに“冥府教”が関わっているなら、魔王朝から派遣されてきたテイマー、〈調教師〉が奴等とグルなのかグルじゃないのか解らなくなってしまった。
グルならば、“冥府教”の集める死の力を集めるために殺し回っていることになる。だがこれは信じたくない。ナンバーワンダンジョンマスターであるロワンの手の中に奴等が潜伏していることになる。
グルじゃないなら、“冥府教”がせいぜい死の力を奪うための行動だと推測できる。
···駄目だ、情報が足りん。
「どうやら、港町セイワンに行かなくてはならないようだな」
仕事をする上で不確定要素は出来るだけ残したくないからな。
俺は、外が完全な夜になるのを待って、港町セイワンに居るであろう“冥府教”を無力化もしくは殲滅するべく、パレクスを飛び出した。
◆港町セイワン カゲマサside
港町セイワンは、首都パレクスから見て西側にある貿易都市。距離は近かった。いつも通り《暗殺者》と【ステルス】を利用し、セイワンに侵入した。警備の兵士を掻い潜りながら、セイワンを探索していく。
「···ん?」
俺の目が、ふとある路地裏に止まる。ちょうど建物の影に隠れていて解りづらいが、血が付いているのだ。そして血は、路地裏の奥に続いている。
「···罠か?」
あまりにも怪しすぎるので、【サーチ】や《熱源関知》《存在関知》などを路地裏奥に掛ける。
反応は、無し。
「···行くか。行かなければわからん」
俺は覚悟を決めて、路地裏に一歩踏み込む。そして慎重に歩いていった。
何処まで歩いただろう。
かれこれ五分は歩いている。歩いていくにつれて、段々と血の匂いが充満してきた。俺は、【ディメンションムーヴ】での逃走準備をしつつ、更に踏み込む。
やがて路地裏の突き当たりまで着た所で、俺はソレを見た。
「···おいおい」
路地裏の突き当たりを左に曲がった先にあったのは、大きな広場。
その中央には、一本の木が刺さっている。
その木には、胸に五寸釘を打ち付けられて、雑に木に固定された少女。
木の根本には、頭蓋が切り開かれた無数の死体。
「···」
俺は、若干気の毒に思いながらも辺りを警戒する。死体はまだ新しく、下手人が近くにい
「こ・ん・ば・ん・は♪」
ゾッ!!??
いきなり聞こえた声。強烈な寒気を感じた俺は、声のした方向にゆっくり振り向く。そこは、建物の上。
「今宵は、良い夜ですねぇ♪」
赤いコートを着た怪人が、残忍な笑顔で此方を見ていた。
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