いざ、マーロイへ④
短いかな?
◆サタリム王国属国 町跡 カゲマサside
俺は、突如として現れた黒い恐竜に驚きながらも直ぐにバックステップで後退。【ボックス】からオリハルコン製ナイフを取り出し、構える。
(しかしコイツ···一体何時現れた?俺の《存在関知》でも関知出来なかったというのに)
そんな疑問が頭をよぎるが、一旦脇においといて黒い恐竜に《鑑定》を発動させる。
名前
種族 D・レックス
職業 侵攻部隊隊長 混血種
レベル 50
ランク B+
スキル 鋭牙 認識阻害 闇魔法 空間魔法 統率 身体能力強化 硬皮
ふむ、スキル《認識阻害》で姿を隠しつつ空間魔法、おそらく【ディメンションムーヴ】で転移し、俺の背後に突然現れたといった感じかな?まあ良いか、当たりとか分からんし。
「しっかしアイツ、俺を嗤ってやがる」
一方のD・レックスは、俺を見下すように見ており、口元は若干ではあるが嗤っているように見える。
「別に嗤っても良いんだが。弱いのは確実だし」
確かに俺は、ランクSという人外の領域に脚を踏み入れている。しかし世の中には、まだまだ上はいるのだ。
最初のダンジョンマスターであり、魔王朝の支配者ロワン。
俺の上司にして七番目に誕生したダンジョンマスター。セブンス帝国の皇祖であるナナ・セブンス。
三番目に生まれたダンジョンマスター、竜であるリザン。
その部下であり、ナナ・セブンスの側近、ロロ・セブンス。
俺のダンジョンに侵入し、圧倒的な実力を誇った、ロシフェル聖王国の〈神罰者〉マリアンナ・ミルム。
と、俺が知る限り五人の強者を知っている。現時点の俺じゃあ、勝てない連中だ。俺の安心な引きこもり生活の為には、最低限でも彼等に並び立たなければならない。
うん。長い独白だったが、結局はまだまだ弱いのだ。俺は。悠長にダラダラしてられない。
「GAAAAAAAA!!」
「だからこそ俺は」
俺は、涎を滴しながら襲いかかってくるD・レックスの頭上に跳躍する。D・レックスは、すかさず闇魔法【ダークランス】を放つが。
「貴様一匹ごとき、瞬殺出来なくてどうする?」
俺は、【ダークランス】を《魔力障壁》で防ぎ、ナイフを一閃。
「Gu···ga?」
D・レックスは、一瞬何をされたのか分からなかったが、すかさず俺に振り向き俺を喰いちぎろうとする。
「・・・・。馬鹿が」
その言葉にD・レックスは激昂。更に勢いを付けようとして、違和感に気付いた。
「Ga···」
視界がずれている。左目が上に、右目が下に。そのズレは、徐々に大きくなり。
「····ッ!?」
D・レックスが気付いた時には、もう既に時は遅し。
D・レックスは、ゆっくりと真っ二つになりながら絶命した。
その様子を見ていた俺は、軽くため息を吐く。
「D・ラプトルのように連携してくるならまだしも、たった一頭で来る馬鹿がいるかよ。本当に隊長か?お前」
俺は、D・レックスの死体を【ボックス】に入れて、再び走り出す。マーロイに向けて。
空を飛ぶ翼竜に意識を割きながら。
◆マーロイ首長連邦 首都パレクス ボザ宮殿
「···。まさかD・レックスすらも破るとはな。しかもナイフの一閃で」
マーロイ首長連邦の宮廷、その一室にて魔族の男、〈調教師〉は己のモンスターとの視覚同調を用いて、カゲマサとD・レックスとの戦いを見ていた。
「しかし戦力分析のついでにD・レックスを向かわせたが、結局分からず仕舞いだったな。《鑑定》も奴の《偽装》スキルで役に立たんから、戦力分析も遅れている」
〈調教師〉は、 ぶつぶつと独り言を呟き続ける。
「···くっ、仕方無い。無駄だろうが、D・ラプトル百頭とD・レックス二頭の二個小隊をけしかけるか。どうにか奴の戦力を暴ければよいが」
そう決めた〈調教師〉は、再びカゲマサを見る。そして冷や汗が吹き出した。
「···おいおい。まさかD・ワイバーンの監視にも気付いたのか?恐ろしい奴め」
〈調教師〉は、冷や汗を吹きながら部下である二個小隊に指示を出す。そして二個小隊が動き出したのを見て、椅子に座る。
「···計画は、今のところ順調だ。ロワン様からいただいた情報によると、これだけの戦乱を起こせば“奴等”は出てくるらしいが···。ふむ、本国に応援を呼ぶか?いや、そうしたら私は無能扱いだ。出来ない。私一人で解決する必要がーーー」
その後も〈調教師〉の独白は続いた。
良かったならば、高評価、ブックマーク登録、誤字報告等、よろしくお願いいたします。励みになりますので。




