マーロイの目的とは。
コロナがまた猛威を振るっていますね。皆様もお気をつけて下さい。
◆帝国軍指令本部 会議室 カゲマサside
魔王朝から派遣されてきた魔王軍のテイマー、か。東方大陸一の大国から来たなら、恐らく凄腕のテイマーの可能性が高いな。魔王朝を治めているのが、大魔王派閥の盟主であるダンジョンマスターのロワンならば尚更だろう。あくまでも予想だけど。
「魔王軍、からか。確か魔王朝の軍隊って、完全な実力主義なんだろ?そこから派遣って、相当な実力者なんじゃないか?」
おおう、流石勇者。警戒感を露にしてロロさんに言葉を投げ掛けている。流石の胆力だ。あのナナさんの真の側近って知ってる俺は、迂闊に言えないぞ。下手したら殺されるからな。
「えぇ、指令本部もそう見ています。しかし謎なのは、何故派遣してきたのかです。現在のマーロイに加担する理由が魔王朝にはありません」
「ん~、あの地に何かしらの資源が眠っているとか?」
「横から失礼するが、我が第四軍配下の諜報部隊を使って調べさせたが、それといって特別な物は無いそうだ」
ロロさん、勇者サユリ、ゼルバ大将が中心となって議論を進めていく。俺は完全に蚊帳の外になったので、手元の資料を読み進める。
(マーロイ首長連邦軍は、〈調教師〉がテイムしたモンスターを操り、サタリム王国の属国へ次々に進軍。しかし属国を荒らしに荒らして、退却している。何故だ?単なる領土侵攻じゃないのか?)
考えるが答えは出ない。しかし俺は、その謎な行動に不気味さを覚えた。
(仮に領土侵攻が本命じゃないとしよう。では、目的はなんだ?復讐?人材?技術?それとも単なる戦力分析?いや、いくらサタリム王国が弱っているからって、背後に帝国がいるんじゃあ帝国の不快を買うリスクがあるよな。···ん?)
俺は、ある一つの可能性が頭に浮かんだ。それは、あまりに無糖滑稽なものだが、浮かんだのだ。
(まさか、単なるDP集めか?)
魔王朝を支配しているのは、No.1マスターのロワンと推定している。ロワンは、大魔王派閥を率いる長。ならば、魔王朝内に配下のダンジョンマスターがいる可能性が高い。今回の〈調教師〉もそうだ。テイマーというが、そもそもダンジョンマスターならば絶対に裏切らないモンスターを召喚できるからな。
(そしてダンジョンマスターは、生物を殺すと生かすより大量なDPが手に入る。それを鑑みると、今回の戦争はDPの収穫祭だな)
しかし解せない。仮にそうだとしたらわざわざナナさんに敵対するという特大のリスクを負うまですることか?
俺がそう考えていると、ロロさんが話しかけてきた。
「カゲマサ殿、貴方の意見を聞きましょう。マーロイと〈調教師〉の目的は何だと考えますか?」
おっと、どう答えたものか。ダンジョンマスターなんて言う訳にもいかないし。
「···予想でよろしければ」
「どうぞ」
「奴等は、属国の荒らした後特に統治すること無く退却しています。それを見るに目的は領土ではない。ならば何か。俺は、“人の死により発生するナニか”が目的と考えます」
あ、やべぇ!?思わずDPみたいなこと言っちゃった!粛清される!ロロさん目を細めてガン見してるし!
「“人の死により発生するナニか”?」
「えぇ、勇者殿。あくまでも予想ですが。でなければ、皆目検討もつきません」
どうしよう!どうしよう!どうしよう!どうしよう!粛清されるぞ!?ロロさんがガン見から、冷笑を浮かべている!
「まあ、頭に留めておきましょうか。では皆さん。今後の方針を決めましょう」
冷笑を浮かべていたロロさんは、そう言って次の議題に移った。
◆マーロイ首長連邦 首都パレクス ボザ宮殿
マーロイ首長連邦が誇る首都パレクス。その中央には、首長達が住むボザ宮殿が鎮座している。そのボザ宮殿の回廊を一人の魔族が歩いていた。
「ふう、全く人間の相手は疲れるな。三大首長の連中の欲深さには反吐が出る」
そう愚痴を吐くと、前方から複数人の人間が歩いてきた。そして先頭にいた人物が話しかけてきた。
「おお、〈調教師〉殿!此度の戦におけるモンスターの貸与、大義である!」
「それはそれは、ようございましたアブサル殿」
「うむ!良かったぞ!では、父上に報告してくるでな!」
アブサルと呼ばれた男性は、ハッハッハ!と笑いながら取り巻きを引き連れて魔族の横を通っていった。
「···まあ、あれは馬鹿だが三大首長の息子だからな。利用価値はあるか」
三大首長。マーロイにおける行政を仕切っている三つの首長家を指す。
一つ目に、マーロイ首長連邦の内政を担当する、ワンロール家。
二つ目に、マーロイ首長連邦の外交を担当する、ダブールンカ家。
三つ目に、マーロイ首長連邦の軍事を担当する、パルミッツ家。ここがアブサルの実家だ。
「···まあ良い。私の目的の為に、精々利用させてもらおう」
魔族、〈調教師〉は軽くため息を吐きながら回廊を歩いていった。
その姿をジッと見つめるカラスに気付かずに。
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