罠、そして魔人化作業
◆ダンジョン カゲマサside
“騎士”。俺と敵対する“冥府教”の上級幹部の一人で、かつてフリン公国で倒した魔導師ジメイと同格の存在。
“騎士”と呼ばれていた男、ね。よもや人間を玩具として、どうやって殺すかを楽しむイカれた快楽殺人者か。
「まあ、俺も人間の規格で言えばイカれてるがな。おっと、今はそんなことどうでも良い。」
問題は、そんなイカれた野郎“騎士”が敵にいて、その被害者であるアンがここにいることだ。もしかすると、“騎士”がアンに探知機のようなものをつけているかもしれないからな。
という訳で俺は、何故か気絶しているアンの体を調べ始めた。まずは魔法を使って全身を隈無く探す。何もないことを確認すると、今度は物理的に探し始める。身体中をペタペタ触り、何か異常がないか探っていると。
『んん~~~♪探りましたねぇ~~♪』
「っ!!??」
『誰かは知りませんが、探るのはナンセンスですよぉ♪?という訳でぇ、痛い目見てください♪』
突如聞こえた声、それはアンの口から吐き出されていた。しかしその声質は全く違う。
「貴様っ!」
『あ、因みにこれは、予め記録された音声です♪話し掛けるだけ無駄無駄無駄ぁ~~♪さぁ、ゴミは処分しないと♪』
アンの口が嘲るように笑う。その次の瞬間、アンの体表に黒い魔法陣が出現。そして。
『〈冥針剣⋅針山地獄〉♪!』
アンの身体中から無数の針が生えた。そして、針が生えた瞬間アンの体が膨らみ爆散、針が辺りにばらまかれる。ばらまかれた針は、近くにいた奴隷達に襲いかかるが。
「チッ、【ロックウォール】!」
奴隷達の回りに魔法で岩の壁を出現させ、針から奴隷達を守る。
「せっかく手に入れた人材達だ。早くに失う訳にはいかん。」
針の嵐を凌いだ後、俺はアンが爆散した跡を見る。そこにはアンの残骸は無く、あるのは床の黒ずみだけだった。
「⋅⋅⋅⋅チッ。」
舌打ちしたのは、死んだアンを思ってではない。人間の死を悼む心なぞ、魔人になった時点で消えている。
「体があれば、人工魔人の素体として活用したものを。」
その呟きは、魔人の冷酷さ、外道さを表したものだった。
さて、アンの身体爆散事件を早急に終わらせ、幹部内に速やかな情報伝達を行った後、奴隷達の配置決めをすることにした。そしてあることを思い付く。
「貴様等、俺の配下となるんだ。どうだ、魔人とならないか?」
「魔人に、ですか?」
初老の男性であるシドルが疑問を投げ掛けたので、説明する。
「ようは、だ。俺のスキルでお前達を魔人へ変生させるのだ。」
「ふむ、魔人となると、どのようなことが?」
「そうだな。良いこと、悪いことと分けるならば。」
良いこと。
▪身体能力や知性が上昇する。
▪寿命が延びる。
▪新たなスキル獲得やランクアップが起きる。
悪いこと。
▪人間としての認識が薄くなる。
▪他者に無関心となる。
と、説明した。あくまでも俺が認識している限りだが。
「⋅⋅⋅なるほど。」
「どうだ?」
「⋅⋅⋅わかりました。受けましょう。」
シドルは、少し考えた後了承した。その後他の奴隷達にも伝える。その際多少混乱があったものの、スキル《カリスマ》で心をがっちり掴んでいる為か、皆了承した。
因みに、ジレイクは。
「酒飲めて、好きに暴れられるならなんでもいいさ!ところでビールってやつ飲ませ」
エリちゃんと母親は。
「お兄ちゃんといれるならいいよ?」
「わ、私は、エリが良いなら。」
いつの間にかエリちゃんにお兄ちゃん認定されてた。まあ、いいか。
さて、早速魔人化させよう。ん?
俺は、自身の中にあるスキル《魔人王》が変質、いや進化しているのだ。ほんのちょっとの進化である。
《魔人王》
▪知性体を魔人へ変えることができる。一日五回まで可能。強さは、個体の才能による。
一回から五回までに増えているのだ。いったいどのタイミングで進化したのかは分からないが、好都合である。
「良し、一日五回の魔人化だ。バンバンいこう。」
そう言って俺は、魔人化を施した。最初に行ったのは、シドル⋅ヴァレンスリー、ジレイク⋅バロー、エリちゃんと母親、後は適当に決めたパルメールという元女学者の奴隷。この五人に魔人化を施す。ついでに速攻で考えた役職を念話による幹部への告知も兼ねた。
いざ施してみると、以前出ていた赤黒い繭は無く、直ぐに変化した。目は赤くなり、肌も若干黒くなった。《鑑定》だとこうなった。
名前 シドル⋅ヴァレンスリー
種族 上級魔人
職業 迷宮近衛隊隊長
レベル 1
ランク A
スキル 剣術の達人 指揮 身体能力上昇 etc.
名前 ジレイク⋅バロー
種族 上級魔人
職業 迷宮海賊艦隊艦長
レベル 1
ランク A
スキル 大海賊⋅⋅海上での身体能力超上昇、統率力上昇、海流把握 カリスマ etc.
名前 エルザ⋅シドリー
種族 中級魔人
職業 マヤの補佐
レベル 1
ランク B
スキル 子育ての達人 誘惑 料理 家事全般
名前 エリ⋅シドリー
種族 下級魔人
職業 無し。時々ワイズの遊び相手。
レベル 1
ランク C
スキル 身体能力上昇
名前 パルメール⋅リンドリー
種族 中級魔人
職業 迷宮研究所勤務 学者
レベル 1
ランク B
スキル 鑑定 魔法一式 学習 集中 身体能力上昇 etc.
となった。
中々に良いものになった。パルメールという女学者は、魔人になるなり発狂していたが、理由は分からなかった。
そして、五十日経過。
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