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大規模雇用、そして記憶

もうすぐ一年過ぎますな。


時が過ぎるのが早いと感じる作者です。


◆ダンジョン 迷宮研究所 カゲマサside



俺とエリが部屋から出てくるとエリの母親を始めとした奴隷達は、皆エリの右腕を見て驚いていた。


「う、嘘だろ?」

「本当に治ってやがる!?」

「古傷の再生は無理の筈なのに!?」


奴隷達が皆ざわめいている時、エリの母親は真っ先に飛び出てエリを抱き締めた。


「ああ、エリ!大丈夫?嫌なことはされてない?」

「ん、大丈夫。寝てたから。」


エリの母親は、エリの身体をペタペタ触りながら安否を確認する。僅か十数分で完了したのが不安を助長させたのだろう。雑にされたのではないかってな。


「安心しろ。ミレンダは、やると決めたなら手加減しない奴だ。今回の治療実験だって、奴の提案だからな」

「そうですか・・・。あの。」

「ん?」


なんかエリの母親が少し青い顔で頭を下げてきた。


「・・先程の無礼をお許しください。そしてエリの右腕を治してくださり、ありがとうございます。」

「感謝はまだ早い。」

「え?」


俺は、当初の予定通りに奴隷達に告げた。


「これで再生技術に疑問を持たないだろう?さあ、続きだ続き!十人ずつな!」


そう告げた後は、適当に選んだ十人を実験室内に入れていく。そして十人終われば、また十人を。その十人が終われば、また十人といった感じで諸々の身体欠損を再生していく。


そして幾らかの時が経ち、エリを含む199人の欠損再生が完了したのであった。


「ほ、本当に治った。」

「し、信じられない。」

「奇跡か?」


奴隷達は、未だに古傷が治ったことが信じられないといった感じなのか、戸惑いを隠せていない。まあ、後二週間は経過観察が必要だが。


「後は、ミレンダの言っていた通り、経過観察として二週間いてもらう。二週間経ち、なにも無かったら晴れて解放だな。」

「「「「えっ!?」」」」


解放。


その言葉に一同はギョッとした顔でこちらを見る。まあ、魔法による記憶操作はするがな。ここの記憶を全て消す予定だし。俺は、そう考えて喜ぶであろう奴隷達を見た。そして奴隷達の次の言葉に唖然とした。


「「「「それは困ります!!」」」」

「ファッ!?」


まさかの否定。奴隷の境遇を考えて、両手をあげて歓迎する筈の奴隷解放を拒否しやがったコイツら!?


「な、何故だ?奴隷の扱いを知っているなら、解放は良いことでは?」


俺の言葉に最初に質問してきたあの初老の男性が、前に進み出て発言する。


「我々には、住む場所が無いのですよ。そもそも我々の出身は南方諸島ですのでね。祖国は滅びましたし。」

「い、いや住む場所は俺が用意」

「それに。」


初老の男性は、一旦言葉を区切る。そして。


「少なくとも私、腕を治してもらって恩を返さない程、恩知らずでは無いのでね。」


おおう、そう来たか。恩返しするから、ここを住む場所にしてくれってか?


チッ。記憶操作の手間が増えるが、仕方無いか。ならば、恩を返したくないようにすれば良い。


「ほう、そんなことを言うのか。ふっふっふ、これを見てもそんなことが言えるかぁ!?」


俺は、即座に魔力を放出。そして魔人特有の赤い目を晒した。


「俺は、人類の天敵、魔人である!それも上位のなぁ!今まで殺してきた人間など数知れず!残虐な実験も数知れず、だ!さあ、こんな邪悪に貴様等は、恩を返すのかぁ!?」


さあどうだ。俺が人外であると知ったなら、恩を返すこともあるまい。コイツらを養うのは、余計なコストになるからな。例え微々たるものでも、“冥府教”の存在がある以上無駄使いは許されない。


そして案の定十数人の人間は、恐怖を感じて後ずさっている。良いぞ良いぞ?このまま恐怖を伝染させて、コストカットを。


「なんで魔人にお礼を言ってはいけないの?」


ん?


俺が声のした方向に目を向けると、エリが俺を指差して母親に訪ねていた。


「え、え~っと、エリ。魔人は、今まで人を。」

「?私達は襲われてない。」

「そ、それはそうだけど。」

「それに、あの人じゃないよ。襲ってるの他の魔人だよ?」


お、お、オノレぇぇぇぇぇぇエリィィィィィ!!一体何を言っているのだ!?確かに襲っているのは別の魔人だろうが、俺は襲わないっていう保証は無いぞバカガキ!!


「た、確かにそうね。」

「世の中、別枠っていうの結構あるしな。」

「それに、魔人ってもっと化け物みたいだし。」


流されるな皆の衆!!流されたら人間終了だぞ!?ここにいたら、未来の俺が絶対貴様等を魔人に変えるぞ!?絶対だぞ!?


「ふむ、どうやら多勢に無勢ですな。お認めになられては?あ、因みに私は例え貴方が化け物だろうと恩を返しますぞ?」


オノレぇぇぇぇぇぇ!!このジジィィィィィィ!!


何故だ?何故こうなった?俺は、只実験台としてコイツら買って手足をミレンダに治してもらっただけだぞぅ!?


ハっ!!


(まさか、スキル《カリスマ》か!?あれのせいで、コイツ等の心をガッチリ掴んじまったのか!?ふざけるなチクショォォォォ!!)


俺は、内心カリスマに怒り狂いながら奴隷達に告げる。


「・・・最後通告だ。俺に付けば、確かにこの中で住めるだろう。しかし、もう二度と人間としての生活など望めまい。」


奴隷達は、皆真剣に聞いている。いや、ほぼ全員か?元から五体満足な精神欠落女は、真面目に聞いていなかった。ボーっとしているだけ。


「それを踏まえて聞こう。貴様等、本気で人の世を捨てて俺に付くつもりか?」


今度は軽く殺気を放ち、スキル《威圧》を放ちながら問いかけた。何人かは、腰を抜かしかけたが、皆覚悟を決めたみたいで踏ん張っている。幼女のエリに関しては、涼しい顔で此方を見ている。嘘やろ?


(はあ、しょうがないな。)


溜め息を吐きながら俺は、ダンジョンメニューを開き操作する。すると第三十五階層が振動して、迷宮研究所の横に新たなスペースが出来ていた。


「ふむ、よかろう。貴様等を改めて俺の奴隷として迎えてやる。後悔してももう遅いぞ?」


こうして、ダンジョンに新たな奴等がやって来た。










俺は、ミレンダに一旦離れると告げて、奴隷達を新たなスペースに移動させて、机と椅子をだす。


「さて、この場に来たからには、役に立ってもらわねば困る。なので今から、幾つかの聞き取り調査をするぞ!」


紙を出した俺は、奴隷達を一列に並ばせる。そして一人一人に質問していった。聞くのは、氏名、年齢、奴隷になる前の職業、この三つだ。適材適所に仕事を振り分ける必要があるからな。《鑑定》で見ても良いが、奴隷になる前のデータは表示してくれないし。


そして聞き取り調査は、開始された。


「お名前と年齢を。」

「は、はい!トナム・イレーサ、24歳です!」

「奴隷前の職業は?」

「奴隷になる前は、の、農民でした!」

「はいはい、・・・結構です。では次の方。」


と、こんな調子で聞き取り調査をしていった。農民が多数だったが、一部は芸術家、商人、医者、大工、樵、漁師、娼婦、兵士、魔導師、学者、貴族といった輩もいた。貴族が奴隷、か。まあ良いか。また中には、元犯罪者もいたようで、盗賊や詐欺師、食い逃げ犯、マフィア、連続殺人犯、などがいた。まあ、此方には生粋の戦闘バカのギオや実験バカのミレンダ、他にもヤバイ犯罪者が魔人となり配下になっているから今さらか。


その中で目を引いた数名を挙げてみる。


まずは、あの初老の男性。


「お名前と年齢を。」

「シドル・ヴァレンスリー。六十歳です。」

「奴隷前の職業は?」

「今は滅びましたが、南方諸島のレシフェ王国陸戦団団長を努めておりました。」


陸戦団団長?名前からして、陸上戦闘の指揮官だったのか?まあ良いか。次!


「お名前と年齢を。」

「ジレイク・バロー!三十六歳だ!」

「奴隷前の職業は?」

「海賊船の船長さ!」


はい、海賊きました。しかも良く見たら二番目に質問してきた好戦的な女じゃねぇか!


「因みに、旨い酒ってあるかい?」

「酒なら、ビールとかチューハイとか。」

「ほぉ、聞いたこと無い酒だねぇ。期待するよ!?」


酒飲む気満々じゃねぇか!もう良い!次!あ、エリちゃん親子じゃないか。


「お名前と年齢を。」

「えっと、エルザ・シドリーです。年齢は三十歳で。」

「エリ・シドリー。八歳。」

「奴隷前の職業は?」

「わ、私は、その、元夫に浮気をされて別れた後、娼婦や売り子などをしていました。」

「お母さんの帰りを待ってた。」


中々にヘビーだな。いや、生きているだけまだマシか。この世界は、問答無用で殺されたりするからな。


さて、最後に五体満足な精神欠落女だが。


「お名前と年齢を。」

「アン。二十歳。」

「・・・奴隷前の職業は?」

「商人の娘。でも誰が親かは分からない。」


・・・なるほど。分からないと来たか。ならば。


「動くな。」

「・・・っ!?何を!?」


俺は、アンの頭に手を乗せて魔法を発動する。


「【記憶視(メモリービューイング)】」


そこは、アンの記憶の中。今までの記憶が保管される場所といったほうが良いか。さて、原因はと。を?


見つけたのは、やたらと頑丈に施錠された記憶。俺は、施錠された記憶を解こうとするが、中々開かない。なので、【解錠(アンロック)】という魔法で解いてみた。魔力をふんだんに使ったので施錠された記憶は、みるみると解かれていく。


「アアアアアアアアアアアアァァァァァァァァ!!」


何やらアンの悲鳴が聞こえるが、いまは無視だ。俺は、施錠されていた記憶を探っていく。そこには。


商人の娘として平和に暮らしていた。

突然二人の男が押し入り、父と母、叔父と自分を連れ去った。

連れ去られた先で、母がカエルの卵を植え付けられて死んだ。

父がおたまじゃくしに喰われて死んだ。

叔父もおたまじゃくしに喰われて死んだ。

そして全て燃やされた。


・・・中々に意味不明な文章だが、それだけなら憐れな被害者として処理できた。だが最後の一文が。





主犯は、“騎士(ナイト)”と呼ばれていた。





最も無視出来ないものだった。

良かったなら高評価、ブックマーク登録、誤字報告等、よろしくお願い致します。励みになりますので。

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