身体欠損、治療実験②
にわか知識注意。
遂に、200話いったぜ。趣味で書いてたのに良く続いたものだと驚いている作者です。
◆ダンジョン 迷宮研究所 カゲマサside
ミレンダの説明開始より、十数分後。
ミレンダによる一通りの説明が終わると、奴隷達は戸惑いながらもヒソヒソ話し始める。
「つまり、俺達の腕や脚を作ってくっつけるってことか?」
「出来るのか?そんなことを。」
「俺達の国や大国でも出来やしなかったのに?」
「で、でも、もし本当だったら?」
どうやら未だに半信半疑といったところか。信じたいが、未知の技術なので信じられないらしい。まあ、わからんでもない。しかし。
「お前達、忘れるなよ?お前達は俺の奴隷、つまり俺に従わなければならない。そういう契約だ。嫌でも実験に付き合ってもらう。」
「っ!?」
そう、彼等は奴隷だ。俺に従わなければ、隷属魔法の効果で絞め殺されてしまう。そうなったら、せっかく大金はたいて買った意味が無くなってしまう。
そんな思考をしていると。一人の幼子が歩いてきた。その幼子は、右腕が無かった。
「・・・ねぇ。」
「なんだ?ガキ。」
「お母さんの足、治せる?」
幼子がそう言うと、幼子を一人の左脚が無い女性が慌てて抱き抱えた。
「も、申し訳ございません!この娘は昔から遠慮が無くて!」
「構わん。というか黙れ。」
「っ!?は、はい・・・。」
俺は女性、恐らく母親を黙らせると、幼子に向き直る。
「貴様の母親が治るか、それは実験の結果で決まるのだ、ガキ。」
「実験?」
「話を聞いていなかったか?いや、ガキだからな。仕方無いか。実験とは、物事を行う際に出来るか出来ないかを確かめる作業だ。今から、貴様の腕や脚が治るか確かめる。」
「確かめるの?」
「そうだ。貴様の母親が治るかは、実験を行ってから」
「じゃあ、私が実験する。」
「・・・うん?」
俺は、一瞬フリーズする。ミレンダは、ほうと言った顔で見ていた。
「それは、つまり?」
「私が、始めに実験を受ける。そうすれば、お母さんは治るよね?」
「・・・初めての実験だ。どんな事象が起こるかわからん。最悪死ぬかもしれん。それでもか?」
「うん」
・・・コイツ。この世界に来た当初の俺より覚悟決まってないか?だがその覚悟、気に入った。
「良いだろう。その覚悟を尊重する。ミレンダ、このガキを」
「エリ。」
「ん?」
「エリ、それが名前。」
「・・・ふん、わかった。ミレンダ、エリを実験室に連れていけ。」
「あいよ!さあ、エリちゃん。こっち来な。」
「わかった。」
そう言ってガキ、エリは奥の実験室に入っていった。その間、母親が。
「なら自分が先に!」
「連れていかないで!」
「いやぁ!」
と叫んでいた。相当娘を愛しているようだな。だが、やはりうるさい。
「貴様、少し煩いぞ?黙らないか。」
「っ!しかしあの娘は、私にとって唯一の家族なんです!」
「その唯一の家族が、貴様を助けるために命を張ったのだ。並大抵の覚悟ではない。ならば、尊重しなければな。」
「なっ!?あの娘は。まだ八歳で!」
「そんなに心配なら、実験室の外で祈っていろ。娘が助かりますようにってな。」
俺は、一言言い捨てて実験室に向かった。
さて、実験室に入ったが実験はまだ始まっていないようだ。
「で、具体的にはどうするんだ?」
「まずは。・・エリちゃん?ちょっと腕だして?」
「うん」
エリは、無い右腕に代わって左腕を出した。ミレンダは、そこに注射器を差し込み薬液を流し込む。
「ん、・・・くう。」
するとエリは、途端に強烈な眠気に襲われて、そのまま眠ってしまった。
「麻酔薬か。一番強力な奴だろう?」
「ああ、しかも散々改良を済ませたからね。身体への後遺症も無しさ。」
「実験体はどうした?」
「冒険者をつかってね。起きたら反抗してきたから、生命力を吸い出して餓鬼に喰わしたよ。」
「なるほど。よし、早速始めよう。」
「あいよ!」
そして身体欠損治療実験が開始された。
まずは、エリから採血を行い、機材に投入する。そして遺伝子情報などを解析し、そのデータを元にエリの血液をコピーして輸血パックにいれる。次にエリの身体データをスキャンする。彼女の筋肉や骨などを解析した。培養する右腕を間違いないように入念に行う。解析が終わると、早速遺伝子情報や筋肉、骨、右腕の形をデータとして培養装置に投入、急速培養する。
数分後、培養槽の中にはエリの腕とほぼ変わらない大きさの右腕が完成していた。
「すごいな。ここまで同じに出来るなんて。」
「まあ、作業行程に魔法なんかも混ぜて、より確実性を高めたからね。上手くいってくれないと困るさ。」
エリの右腕が完成したので、早速エリに接合させる作業に移行することにした。
「接合か。どうするんだ?」
「ああまずは、て、見てもらった方が早い。」
そう言ってミレンダは、寝台で寝ているエリの所にいくと、ナイフを取り出す。
「まずは、この【痛覚遮断】と【鋭刃】を付与したナイフで。」
ミレンダは、そのナイフで容赦なくエリの右腕のつけ根を切った。
「おい、一応命は。」
「大丈夫さ、作業はここから。」
培養槽から右腕を取り出したミレンダは、切った右腕のつけ根にクローンの右腕を押し当てる。そして肌色の糸で瞬く間に縫い付けた。
「その糸はなんだ?」
「バイオ糸。腕に馴染ませるために改良したのさ。勿論身体に害はない。さて、あとは。」
次にミレンダが持ってきたのは、小さな浴槽。中には、水色の液体が入っていた。
「これは?」
「アタシオリジナルの再生薬さ。これで完璧に接合させる。」
ミレンダは、エリの右腕をつけ根まで再生薬のプールに入れた。すると、隙間がある不完全な接合だった右腕がみるみると繋がっていき、完璧に治して見せた。バイオ糸の後はなかった。どうやらバイオ糸は、再生薬における接合のつなぎ役だっあようだ。
「・・・見事だ。これほど短時間で完璧に治すとは。後は、経過観察をして終わりか?」
「そうだねぇ。いくら完璧に接合したとしても、時間がたったらわからないから、少なくとも二週間は経過観察だろうねぇ。さて、あと199人要るんだろう?さっさと連れてきな。寝台は十台しかないから、十人ずつね!?」
「わかった、任せたぞ。さて、起こすか。」
俺は、【起床】という誰が作ったかわからない魔法を使ってエリを起こした。
「・・ん、おはよう。」
「おはようさん。気分はどうだ?」
「大丈・・あ。」
エリは、しっかりと接合された右腕を見て固まっていた。
「実験はうまく行ったようだ。後は、しばらく二週間は様子を見て、腕が取れないかを確かめてからの、解放だな。」
「・・・うん。」
エリは、小さく返事をしただけだったが、顔は小さく笑顔を浮かべ、目は少し涙が貯まっていた。
俺は、幼女の笑顔に少し癒されながら、エリを実験室出口に連れていった。
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