マリアンナ等、帰還
◆ダンジョン第十八階層
「マリアンナ様、ご無事だろうか・・・。」
一人十八階層に取り残されたマリアンナの部下であるパトリック一等級聖騎士は、マリアンナの安否を心配しながら十八階層からの脱出口を探していた。途中に罠が発動したが、何とか回避して探索していると。
「貴様がパトリックか?」
「っ!?何者だっ!?」
パトリックは、バックステップで後退して声のした方向を注視する。そこには。
「な、あ・・・。」
「どうした?・・まあ良い。貴様を連れていく。」
巨竜。黒の鱗に覆われた巨竜がそこに存在していた。そして身体から漲る力にパトリックは、言葉を飲み込む。
「っ!?く、はぁぁぁ!!」
それでも命の危険を感じ取ったのか、剣を抜き黒の巨竜に襲い掛かる。
「おい、別に貴様を殺そうという訳では」
「《聖光斬》!!」
黒の巨竜が何か言おうとしたが、焦りに囚われたパトリックは聴こえておらずスキルを発動して、黒の巨竜に斬りかかる。
「はぁ・・・、仕方無いな。《古竜の咆哮》!!」
その瞬間パトリックは、強大な波動に飲み込まれ、意識を手放した。
◆ダンジョン地表 宿屋
ダンジョンマスターの【ゲート】によって第一階層に戻ってきたマリアンナは、簀巻きにされたロディック・アトルフを担ぎ上げて地表に出る。そしてダンジョン前にある宿屋へ入った。
「さてと、本国に連絡しましょうか。」
そう言って通信魔道具を繋げる。
『此方マリアンナ。応答願います。』
『此方聖騎士団本部、一等級聖騎士アンダレス。マリアンナ殿、いかがなされた?』
『ロディック・アトルフの捕獲完了。準備を整え次第、帰投します。』
『おお!了解いたしました!直ちに聖王陛下にお知らせします。お疲れ様でした!』
『はい、お願いします。』
そう言ってマリアンナは、通信魔道具を切る。そしてもう一つの通信魔道具を繋げた。
『此方マリアンナ。エリベラ二等級聖騎士、聴こえますか?』
『ま、マリアンナ様ですかぁ!?はいぃぃ!聞こえますぅぅぅ!!』
『・・・落ち着きなさい。此方はビジェーフ二等級聖騎士を失いましたが、何とかロディックを捕獲しました。貴女とベギン二等級聖騎士を回収した後、直ちに帰投します。』
『りょ、了解しましたぁぁ!』
そして通信魔道具を切り、ため息を吐く。
「あの娘、もう少し堂々とできませんかねぇ?」
「同感だな。」
「そう、分かってくれ・・・・ん?」
突如響いた声。不振に思い声の出所を見ると、椅子に座ったダンジョンマスターの姿が。
「っ!?貴方!」
「忘れ物だ。」
ダンジョンマスターは、そう言ってズタボロの男、パトリックを転がした。
「十八階層で俺の部下が捕えた。持っていけ。ああ、殺してないぞ。」
その言葉を言った後、【ゲート】で帰っていった。余りの出来事に反応が遅れたマリアンナは、茫然となりながらもパトリックをベットの上に寝かせた。
◆ダンジョンコアルーム
パトリックをマリアンナの元に送った後俺は、コアルームにて報告を受けていた。
「なるほど、“冥府教”の上位幹部は、“騎士”“僧正”“城塞”といった三人になっているのか。首領は“王”と呼ばれている以外は不明、ねぇ。」
これらの情報は、マリアンナに引き渡す前にロディックの脳から抜き取った情報である。
「しかし、まさか“僧正”がフリン公国にいた魔導師ジメイだったとはな。」
フリン公国にいた魔導師ジメイ。まさかの“冥府教”の上位幹部だったらしい。それにしては微妙な強さだったが、若手だったのか?
「しかし、ナイトにビショップ、ルークか。まんまチェスだな。ということは、”女王“がいる筈だが。秘匿しているのか?どう思う?シロ。」
「はいマスター。あくまでも予想ですが、“女王”は“王”の側近、秘密兵器の可能性があります。警戒が必要かと。」
「秘密兵器、か。あり得るな。俺達は今回の件で“冥府教”にケンカを売った。ますますダンジョンや幹部共の強化が必要だな。」
「はっ!・・・・あ、マスター。マリアンナ等が転移魔道具で、ロシフェルに帰還しました。」
「おお!良かった良かった。」
俺は、その朗報に思わず顔を綻ばせた。しかし、そこに待ったが入る。
「マスター、ブラッドの始末はどういたしますか?」
「え?まだ粘っているのか?」
「はい。ランクAで固めた部隊で攻撃していますが、あと一歩のところで躱され、いなされ、同士討ちを誘われています。多大なダメージを負っている筈ですが・・・。」
「そうか。・・・・行くぞ、ブラッドを仕留める。」
俺は、ブラッドを仕留めるべく立ち上がった。
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