冥府教、ダンジョンに入る
◆ダンジョン内部 第一階層
ブラッドとロディックは、ダンジョンに侵入後着々と進んでいった。
「あらぁ!ゴブリンごとき敵じゃねぇよ!」
ロディックは、襲い掛かってくるゴブリンを切り伏せながら進む。
「・・・あまり油断するな。ディーク」
一方のブラッドは、ナイフで的確にゴブリンの首を撥ね飛ばす。
「だがよぉブラ・・・ラッド!ゴブリンばかりで詰まらないぞ?」
「・・・冒険者ギルドで説明されたろう。第一階層には、ゴブリンしかいないと」
「ならば、さっさと進もうぜ?奥でないと死の力が取れん」
「・・・ああ」
そして二人は、ゴブリンを蹴散らしながら第二階層へと進んだ。
第二階層には、ゴブリンではなく石斧をもったオークが徘徊していた。
「ブモォォォォ!!」
「甘いなぁ!!」
オークが二人に気付き石斧を振り上げるが、ロディックによって首を刈られた。
「・・・第二階層はオークだったな」
「おう、どんどん行こうぜ」
そのまま二人は突き進む。当然オークも黙っておらず、次々と襲い掛かってくるが全てロディックが返り討ちにした。
そして第三階層。
「・・・ゾンビか」
「おお、沢山いるな」
第三階層には、動く死体であるゾンビが大量にいた。呻き声をあげながらこちらに向かって近付いてくる。
「・・・俺に任せろ」
「分かった」
ブラッドは、手をゾンビの群れがいる方向に翳す。そして唱えた。
「【領域死霊浄化】」
その瞬間、ゾンビの群れは全て塵となって消えた。
「・・・さあ、いくぞ」
「おう!」
その後二人は、スケルトンのいる第四階層も【領域死霊浄化】で殲滅し、魔境の一歩手前までやってきた。
「第五階層か。この先は誰一人帰ってこれない魔境だったよな」
「・・・ああ、この先に人間を誘導出来ればだが、ん?」
ブラッドが目を向けると、一人の人間がトロールと戦闘を行っていた。
「・・・よし、あれを引き込む」
「あれか?一人で来てるなんて怪しいぞ?」
「・・・《鑑定》した。情報は共有する」
その言葉と共にロディックの脳内に《鑑定》結果が流れ込んできた。
名前 シャドウ・ブラック
種族 人間
職業 ランクD冒険者
レベル 12
ランク D+
スキル 剣術 剛力 火魔法
「なるほどな。弱い」
「・・・偽装も無かった。まあ、大丈夫だろう。【血槍】」
ブラッドは、血の槍をトロールに向けて発射。脳天に突き刺さり、トロールは沈黙した。
「っ!誰だ!」
「・・・警戒するな。俺達は敵じゃない」
「獲物取られた気持ちは分かるが、カッカするなよ坊主!」
その人間は、闇のように黒い髪に深紅の目をもった人間だった。深紅の目だが、冷たい眼差しで二人を見ている。
「もう一度言う、誰だ」
「・・・ランクC冒険者、ラッド」
「同じくランクC冒険者、ディークっていうもんだ」
その後ブラッドとロディック、人間シャドウは言葉を交わして、一先ず組むことにした。
「で、あんた等の目的は、奥にある宝かよ」
「・・・ああ」
「第六からは魔境なんだ。どんなすげぇお宝があるか、想像するだけで楽しみだ!」
シャドウは、胡散臭いものを見る目で睨んでいる。
「まあ、いいか。俺だって宝は欲しいからな」
その言葉にブラッドとロディックは、内心ニヤリと嗤う。
(・・・後はコイツを始末してダンジョン内部でも死の力を吸い取れるか実験だ)
(悪く思うな坊主。いや、俺達の計画の一部になれることを光栄に思え)
二人がほくそ笑みを内心浮かばせていた時、ブラッドはシャドウを見て、
悪寒が走った。
一瞬シャドウの顔に、邪悪としか認識できない笑みが浮かんでいるように見えてしまったのだ。
「ん?どうした?」
「・・・いや、何でもない。ディーク、シャドウ、行こう」
そして三人は、第六階層に向かう為の階段を降りていく。
ピリッ。
「?」
「・・・何だ?何か違和感が」
ブラッドとロディックは、辺りを見渡して異常を確認しようとして。
「お、おい!坊主がいないぞ!」
「・・・なに?」
後ろに振り向くと、いつの間にかシャドウの姿が無くなっていた。そして登り階段も。
「ブラッド、これは」
「・・・しまった!図られた!」
ブラッドは、武器を構えて最大限の警戒を露にする。
「・・・ロディック、あれはダンジョンの手先だ。我々を嵌める為に我々に接触したのだ」
「はぁ!?じゃあここは!」
「・・・第六階層ではないな。更に下の階層だ」
「くっ、チクショウが!」
ロディックは、剣を抜き払い辺りを見渡す。
二人がいるのは、神殿にあるような石で出来た大部屋。余計な遮蔽物は無く、ただ広い大部屋だ。
「どうする?」
「・・・とにかく出る方法を探す。それまで来るであろう敵を凌ぎきる」
「おう、わかった」
そう言ってロディックは、ブラッドの前に付く。
(・・・もし、出口が見つからなかったら、その時は)
一方のブラッドは、ロディックに冷たい目を向けながら出口を探し始めて。
「行かせる訳ないだろうがい」
「・・・っ!?ごはぁ!!」
突如飛来した鉄拳が、ブラッドの腹に捩じ込まれ胃の中にあった胃酸や血を口から溢れださせた。
「ぶ、ブラッドぉ!?」
ロディックは、ブラッドに振り向くが。
「ふわぁ~、殺らせるわけないじゃん」
いきなり生えた樹の根に腕や脚が絡め取られた。
「貴様等には、何もやらせんぞ」
「僕に仕事が来る一因なんだ。殺すぞゴミが」
それは、ブラッドとロディックを見下ろしながら名乗った。
「幹部、〈狂星〉リューゾウ」
「ふわぁ~、〈狂星〉ツリー」
「「ここで死ね、侵入者」」
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