神罰者、ダンジョンに向かう
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◆ドミニク辺境伯領 宿
ロディックを取り逃がしてから数日が経過した。未だにロディックの足跡が掴めないマリアンナ等が苛立ちを感じているときに、マリアンナ等が泊まる宿に、三人の男性が訪れた。
「マリアンナ様、聖王国より追加で派遣されました。パトリック・ウォーズリー一等級聖騎士であります」
「よく来てくれました。いきなりですいませんが、情報のすり合わせを行いたいのですが」
「はっ、了解しました」
マリアンナは、パトリック達を椅子に座らせて情報のすり合わせを行った。
「・・・なるほど、そうでしたか。イリアスが破れたと聞いて耳を疑いましたが、マリアンナ様を近接戦闘で追い込んだ手練れ、侮れませんね」
「私はあくまでも魔法メインなので、近接戦闘は不得意です。ギリギリだったのは致し方ありません。それよりもパトリック、例の物は?」
「はっ。おい」
パトリックは、二人の部下に指示を出すと、二人の内一人の部下が空間魔法【ボックス】から、二メートル近い縦長の箱を取り出す。パトリックが蓋を開けると、そこには神々しい一本の槍が納められていた。
「ありがとうございます」
「いえ、お安いご用ですよ。・・・ところでマリアンナ様、ロディック及び“冥府教”の潜伏場所は掴んでおいでで?」
「いいえ。エリベラ二等級聖騎士が【ディメンションアイ】で必死に捜索していますが、一向に手掛かりが見当たらないのです」
「ぬう、そうですか。聖王国直轄の諜報部隊も捜索しているのですが、足取りが掴めなくて困っているのです」
「なんと・・・」
マリアンナとパトリックは、お互いにため息をつく。数日たっても足取り一つ見付けられない不甲斐なさが精神を蝕んだ。
「仕方ありません。暫く我々は待機を」
「あ、あの~、マリアンナ様ぁ。一つ良いでしょうかぁ?」
一旦話し合いを止めようとした時、【ディメンションアイ】を展開していたエリベラが話しかけてくる。
「なんでしょうか、エリベラ?」
「あ、あの、確か“冥府教”の目的って死の力ていうものを集めているのですよね?」
「・・・ええ、そうです」
「なら、沢山の人間が死ぬ所にいるんじゃないでしょうかぁ?」
「沢山の人間が死ぬ場所?はて、この近くに・・・・あ」
マリアンナは、頭に雷が落ちたような感覚に見舞われた。そうだ、あるじゃないか。この領地にもっとも人が死んでおり、死の力が集めやすい場所が。
「パトリック一等級聖騎士、我々は今から南東にあるダンジョンに向かいます。直ぐに支度を」
「はっ!」
「エリベラ二等級聖騎士、貴女は【ディメンションアイ】による監視をダンジョン周辺に集中なさい。怪しい人間を確認できるように」
「は、はいぃぃぃ!」
そして数十分後、神罰者マリアンナとパトリック一等級聖騎士、部下二名はドミニク辺境伯領南東にあるダンジョンへ赴いた。
カゲマサのいるダンジョンへと。
◆ダンジョン コアルーム カゲマサside
「ま、マスター!!神罰者連中がこのダンジョン目掛けて進行を開始しました!」
「ぬぅわぁにぃぃぃぃーーーーー!!??」
どうやら、数日前の祈りは無駄だったようだ。
「ふざけんな!!何数日で特定してんだ!優秀か!!」
「ま、マスター、落ち着いて!」
「落ち着いていられるか!シロ!ダンジョン全兵に通達!最大級の警戒及び、例の“冥府教”の二人を見かけたらあわよくば、神罰者連中にぶつけろ!」
「む、無理です!例の二人は、今地表の宿屋に潜伏しています!モンスターを動かせば人間にバレて一発アウトです!」
「ぐぬぬ、仕方無い!もう国際問題なんか知るか!奴等纏めて我がダンジョンの贄にしてやる!」
と、ダンジョン内部は絶賛混乱中だった。
「シロ!ダンジョンにある全ての殺害ギミックを発動させる!一般兵に下がるよう伝えろ!」
「ぜ、全部ですか!?」
「当たり前だ!毒ガス、爆弾、落とし穴からのマグマ、水攻め、ありとあらゆる手を使って奴等を抹殺だぁぁ!!」
俺は、混乱からのテンションがハイになり、神罰者抹殺宣言をしてしまった。まあ、無理だろうが一応掲げとくか。
「わ、わかりました!では、神罰者や例の二人と相対するのは」
「最高幹部〈六将〉、幹部〈狂星〉および、特殊型人工魔人しか相対を許さん!いや、待て?迷宮近衛隊も参加させる!塵一つ残さん!」
「ダンジョンの防備は!」
「下級幹部の〈百魔〉に指示を出させろ!今いる冒険者は〈百魔〉に対処させるしかない!」
「わかりました!直ぐに指示を出します!」
「頼むぞ!これはダンジョン始まって以来の危機と心得ろ!」
その言葉にダンジョンモンスター達は、息を飲み込み準備を急ぐ。
「畜生、畜生畜生!“冥府教”め!とんだ災禍を連れてきやがって!絶対後悔させてやる!」
俺は、姿形が変わった例の二人に小物的呪詛を吐いた。
◆ダンジョン地表 宿屋
ダンジョンがありとあらゆる罠、武器、兵器を準備、戦力の緊急配備が成されていると露知らず、例の二人であるブラッドとロディックは宿屋にてある情報を入手した。
「ほう、このダンジョンは第五階層より下は魔境となっているのか。さぞや、良い死の力が取れるだろう」
「・・・ロディック、油断するな。生まれて一年しか経っていないにも関わらず攻略されていないダンジョンだ。どんなモンスターが待ち構えているか」
「はっ!怯えすぎだ。強いモンスターなんて、地下深くにしかいねぇよ。それがセオリーだ。魔境と呼ばれる第五階層より下の階層だって精々ランクCが関の山さ」
ロディックは、正に余裕綽々といった雰囲気だ。しかしブラッドは、不安を覚える。
(情報をくれた冒険者の話だと、第五階層に赴いた冒険者チームの中には、ランクBクラスのチームもいたと聞く。ランクCのモンスター程度にやられるものか?・・・そんな筈はない。このダンジョンには何か異質な気配がする)
そんな考えが頭を過ったのだ。
その後もブラッドの不安は心に残り続けた。
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