山の攻防
◆北部の山 山頂 ダンジョン側捕獲部隊
「ギオとゼータは?」
「上手く暴れている。今のうちにロディックとやらを回収し・・・たいところだが」
ドミニク辺境伯領北部の山山頂では、カゲマサが派遣した捕獲部隊が陣を張っていた。陣内では、隊長格のシロと副隊長であるゼクトとキラーを中心に、後はランクAの特殊型人工魔人がいた。
「良く見ろ。奴の身柄が無い」
「逃げ足は早いようね」
ゼクトが指摘した通り、死に体だった筈のロディック・アトルフの身体が消えていた。血が地下に続く階段に続いていたので、どさくさに紛れて逃げたのだろう。
「ガンマ、魔力妨害は?」
「はいはいはい、上手くいってますよ~!」
シロは、近くで踞っている特殊型人工魔人ガンマに確認を取る。
「アタシの魔力妨害で、奴等が使おうとしてる魔道具の発動を遅らせてるから、後数分はいけるよ」
「分かりました。キラー、貴女は人工魔人を率いて地下を強襲しなさい」
「わかった」
「ゼクト。貴方は、ギオとゼータのいる礼拝堂に行き、支援を。ギオ一人では、神罰者の相手は荷が重いでしょうから」
「了解した」
そしてキラーは、人工魔人を率いて【ゲート】を開き地下へ。ゼクトは、申し訳程度の人化を行ってから礼拝堂に向かった。
◆北部の山 礼拝堂
黒仮面の巨漢、ギオは今現在押されていた。相手は、他ならぬ神罰者マリアンナ・ミルムである。
「いい加減に、倒れてください!」
マリアンナは、身体に雷を纏った姿でギオと戦いを繰り広げている。一方のギオは先程の攻勢が嘘のようで、防御に徹していた。
「ヌギギギギ、嫌だ!こんな楽しい戦い止められるか!」
だがギオは笑っていた。満面の笑みだ。
「おらぁぁ!!」
「くっ、戦闘狂でタフとは。厄介な敵ですね!」
マリアンナは、凄まじいフットワークでギオを翻弄し、人体の急所を的確に突いていくが中々倒れない。
対するギオは、ただひたすらに殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。それだけだ。技とか技術など無い。有るのは、化け物じみた身体能力から放たれる拳の嵐だ。
そんな時マリアンナは、ようやくロディックが逃げていることに気付く。
(し、しまった!黒仮面の戦いに意識を割いてしまった!)
「余所見すんなぁぁぁ!」
「っ!?がはっ!」
マリアンナが後悔する中、頬にギオの打拳が直撃。そしてそのまま、暴力の雨あられを受けた。
(コイツ!もう人間の力を遥かに逸脱してる!一体何者なんですか!?パワーだけなら、一等級聖騎士を越えてます!)
マリアンナは、どちらかと言えば魔導師タイプであるため防御は弱い。殴られ痛いと思いながらも黒仮面ギオを人外と認定した。どうにか反撃に移りたいが、相手が中々隙を見せない。
どうしためのか。マリアンナは、殴られながらも思考に更ける。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、化け物が!」
マリアンナが黒仮面と殴り合いをしている頃、一等級聖騎士イリアスは、肥満の化け物と戦っていた。
イリアスは、何度も肥満の化け物の脂肪を切り裂いたり、腕を切り飛ばしたり、魔法で風穴を開けたりしたが、悉く再生される。
(コイツの再生速度が早い!いや、早すぎる!糞、傷を抉る機会がねぇ!)
イリアスが攻めあぐねているその時、肥満の化け物の横腹を【聖光刃】が突き刺さった。
「っ!?」
「イリアス様、大丈夫ですか!?」
「お、応援ですぅぅ!!」
やって来たのは、マトロとエリベラ。頼もしい増援にイリアスは、犬耳をピくッと動かし尻尾をフリフリさせて肥満を見る
「よし!反撃にで」
「残念だが無理だ」
と後ろから声をかけられ、突如冷や水を浴びせられた形となる。イリアスは、苛立ち混じりに振り返った。
「誰だ!」
「敵だ」
その言葉と同時に、異常な早さで何かが顎をかする。その瞬間イリアスの脳は揺れ、意識を刈り取った。
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