神罰者侵入、脱走者の昇格
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◆ドミニク辺境伯領ファースの街 宿屋
カゲマサが脱走者が来ないように祈っている中、神罰者第二席の〈神雷の巫女〉マリアンナ・ミルムは、部下を連れ既にファースの街へ来ていた。
早速宿屋に入ったマリアンナは、連れてきた部下達と部屋に入室。情報のすり合わせを行った。
「脱走者がこの街にいたというのは事実ですか?イリアスさん」
「はっ、事実でありますマリアンナ様。事前に潜入していた諜報員からは、間違いないとの報告を受けています」
「そうですか。後イリアスさん、今私達は聖騎士団ではなく行商人なんですから、お嬢様と呼ぶようにと言ったではありませんか」
「はっ!申し訳ありませんお嬢様!」
イリアス一等級聖騎士は、跪きながら答える。マリアンナ達は、セブンス帝国に入国する際行商人としてやって来た。神罰者として来たら、セブンス帝国に要らぬ警戒を与えてしまうことを考慮してのことである。
因みに脱走者追跡部隊の内訳は、神罰者第二席マリアンナ、犬獣人男性の一等級聖騎士イリアス、大柄な人間の男性である二等級聖騎士マトロ、気が弱そうな女性エルフの二等級聖騎士エリベラ。以上四名である。
「では、これからの方針を決めます。イリアスさん、マトロさん。貴方達二人は街に出てもらい脱走者について情報収集を行ってください。エリベラさん。貴方は、ここから空間魔法【ディメンションアイ】で周囲の探索を。私は、何時でも動けるように待機します。何かあったら通信魔道具で連絡を」
「はっ!了解いたしました!」
「承りました」
「は、はいぃぃ!」
イリアスとマトロは、返事をした後即座に部屋を出る。エリベラは、空間魔法【ディメンションアイ】を発動し、魔力量を気にしながら探索を始める。
(さて、上手く尻尾が掴めると良いですが。おお、我等が神よ。我等に道筋を示したまえ)
マリアンナは暫しの間待機しながら、脱走者ロディックを捕縛出来るよう、聖神に祈りを捧げた。
◆ドミニク辺境伯領北部 夜 廃村
ドミニク辺境伯領北部。その北部にある一つの廃村に、複数のナニかが蠢いていた。
それなりに規模の大きい廃村に蠢いているのは、
「カタカタ」
動く骸骨、スケルトンだった。手に持つのは、錆びている剣。そんなスケルトンが廃村にうようよしていた。
「カタカタ・・・カタ?」
その時一体のスケルトンが何かに気付いた。錆びた剣を持ちながら走っていき、様子を伺う。目玉の無い目でどうやって見ているのかは不明だが、とにかく様子を伺っていた。
「カタカタ?」
スケルトンが見たのは、暗闇の中に光る一つの光。その光が北部にある山へと一直線に向かっているのだ。
「カタカタ・・カタ!」
スケルトンは、慌てたように走りだす。目指す先は、廃村の中で一際大きい建物。スケルトンは、大きい建物に入ると中にいたそれに伝えた。
「カタカタ、カタカタカタカタカタ、カタカタ!」
「なに?北部に大きな魔力の移動が?」
それは、黒い鎧を纏い首から上がないアンデッドモンスター、デュラハンだった。デュラハンは、側にあった球体状の魔道具を起動させる。
「・・・マスターに緊急連絡。北部の山に不審者あり。至急対応されたし」
◆ドミニク辺境伯領北部 山 ????
ドミニク辺境伯領北部に存在する山。そこに一人の巨漢がいた。
「はぁはぁはぁ、ここまで来たら安心か」
巨漢の名は、元一等級聖騎士ロディック・アトルフ。聖王国にて脱走者とされている人物である。
ロディックは、山の斜面を登っていき怪しげな洞窟の中に入っていく。洞窟の先には一つの扉があり、中心に鍵の絵が存在した。
「これか・・・。こうすれば良いのだな?」
ロディックは、身に付けていた右手の手袋を脱ぎ捨てる。その右手の手の平には、扉に描かれているのと同じ鍵の絵が描かれていた。
ロディックは、手の平を扉の鍵の絵に押し付ける。すると、扉はゆっくりと開いた。ロディックは、扉の先に歩いて行く。
歩いた先には、小さな礼拝堂があり複数人の血のように赤い外套と血のように赤いマスクを纏った人間が台座にある目玉が書かれた水晶を熱心に崇めていた。その中心にいた人間が、ロディックを見ずに話しかける。
「・・・試練は果たしたようだな」
ロディックは、その言葉に苦笑混じりの笑顔で答える。
「ランクAになる、だろう?ブラッド。勿論だとも。しかし、聖神連中に紛れ込むのは苦労した。最後にはバレてしまったが」
「・・・ロディック。追われてはいないだろうな?」
「当たり前だ。君が用意した最高位の迷彩魔道具を使ったのだから。あ~、でも街中では外してしまった。来るときにはしたぞ?」
「・・・チッ。まあ良い。昇格の儀を始めるぞ」
その言葉を皮切りにその人間、ブラッドはどこから取り出したのか、赤い宝玉を取り付けた剣をロディックの右肩にのせる。
「汝、何の望みが為に、我が主を奉仕するか?」
「我、神罰者を越えし絶対強者になる望みを果たす為、汝等の主に奉仕する」
「汝、一度契れば運命を共にす。汝の剣を我が主に共にする覚悟ありと誓えるか?」
「誓おう。我が剣は我が主に。我が主の命は我が命である」
「・・・ここに契約はなった。少々わからん宣誓だが、力は上がった筈だ」
昇格の儀を終えたロディックは、己の体を確認する。
「ああ、分かる分かるぞ。力が増した!ハハハハハ!これで絶対強者にまた一歩近付いた!ハハハハハ!」
「・・・おい、あまり調子に乗るな。あくまでも強さの上限が延びただけだ。後は、己れの鍛練しだいだぞ」
ロディックは、己に酔っているのか聞いていない。ブラッドは、ため息をつきながら嗤う。
「・・・まあ、これでお前は完全な仲間だ。よろしくな。〈四兵士〉の一駒、ロディック」
ロディックが怪しげな者達の仲間になった時、北部の山の内、一本の木に一羽のツバメが止まっていた。その目は、ジッとロディックの入っていった洞窟に向けられている。
「はあ~、マジで来やがった。どうしてくれる」
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