講和と戦場にいたナニか
◆セブンス帝国皇宮 大会議室 カゲマサside
俺がサタリム王国軍を壊滅させてから二日が経過した。現在も会議が行われており、様々な議題について西方諸国の国王達が話し合っていた。そんな時である。
「会議中失礼します!」
突然一人の帝国軍兵士が大会議室に駆け込んできた。西方諸国の国王達は、何事かと言わんばかりに振り向く。
「何事ですか?」
「はっ!ナナ皇祖帝陛下!実は城門にて」
兵士は、一呼吸置いてから再び話し出す。
「城門にて、怪しい三人組を発見。尋問しようと近付いた所、一人の老人が皇祖帝に会いたいと!」
「私に?」
「はっ!此方が何故かと問うと、その老人はこう答えました。・・・自分はサタリム王国国王、バルマフ・キン・サタリム二世。先の戦について話がしたいと!」
その言葉に諸国の国王達からどよめきが起こった。二日前に戦争で負けた国がやって来たのだ。そりゃどよめきも起こるか、と仮面の下で俺は納得していた。
「それは、何とも急な話で」
「いかがいたしましょう?」
「良いでしょう。連れてきなさい」
「はっ!」
兵士は、敬礼した後サタリム王国国王、バルマフ・キン・サタリム二世を連れてくるべく走り去った。
暫く後、再び大会議室の扉が開き、先程の兵士が三人の人間を連れてきた。
一人は、地球で言うところの中東にいる民族が着そうな衣装を身に纏い杖を付いた老人。恐らく彼がバルマフ・キン・サタリム二世だろう。
もう一人は、エキゾチックな服を着た女性。年齢は二十代後半から三十代前半辺りか?何処と無く高貴な雰囲気があるから、王族の一員かね?それともバルマフ国王の嫁さんかな?
最後の一人は、アラビアンナイトのような服装をした戦士。多分護衛だな。油断無くバルマフ国王を守護している。因みに《鑑定》すると、レベル34のランクA-だった。近衛兵だと。
「この度は、話し合いに乗っていただき有り難く思う」
「ふふふ、二日前の戦争で話題になりましたから。そろそろ来る頃合いだと思いましたよ」
「そうか・・・」
「それで、どのようなご用件で?」
ナナさんは、小さく笑いながらバルマフ国王に先を促す。
「・・・我が国サタリムは、ナデラン王国と講和を望む。その仲介役をお願いしたい」
「あら」
「「「!?」」」
ナナさんは珍しげに、西方諸国の国王達は驚きながらバルマフ国王を凝視していた。
「講和、つまりナデラン王国の領地を諦めると?国が滅ぶのを許容すると?」
「・・・皇祖帝殿、我が国が負った被害は既にご存知の筈だ。我が国は、サタリムは、もう戦争をやっている場合ではない。周りに仮想敵国がいる状況で、これ以上ナデランには余力を割けない」
「だから講和を?」
「そうだ」
「ふぅん、ですって。ナデラン王国国王」
名指しされたナデラン国王は、ビクッと肩を震わせる。
「は、はい」
「サタリム王国からの被害を受けたのは、貴方達ナデラン王国です。望むならこの件は、ナデランに一任しますが」
「あ、いや」
ナデラン国王は、あわあわと取り乱しながらも発言した。
「わ、我が国としては、〈帝将〉カゲマサ殿に一任すべきと考えています」
おい、なに言ってんだ馬鹿。俺は、この後ダンジョンに帰る予定なんだぞ?余計な仕事はしたくない!
「ふむ、カゲマサに?」
「は、はい。サタリム軍を壊滅させたのはカゲマサ殿ですし、当然の権利かと」
「・・・それもそうですね。カゲマサ、サタリムとナデランの講和、どうします?」
俺に聞かないでくれ!俺は、政治のド素人だぞ!?
「・・・御心のままに」
「ふむ・・・わかりました。西方諸国の取り纏めとして講和に賛同いたしましょう。ただし、講和内容は此方で決めさせていただいても?」
「問題ない」
「お、同じく」
その言葉を皮切りに会議は一時中断、ナナさんは講和内容を決めるためロロさんと共に奥の部屋へ消えた。
俺?そこに突っ立ってたよ。周りの目線が痛かった。
やがてナナさんとロロさんが出てきて、講和条約の内容を発表する。
1.サタリム王国はナデラン王国に対して金貨百万枚を支払う。
2.サタリム王国は今後西方諸国会議に参加する義務を負う。
3.サタリム王国内にセブンス帝国軍を駐留させる。
4.内務・外務・軍事などにおいて帝国の顧問を置く。
5.サタリム王国の第一王女、アシュミー・キン・サタリムと第二王子、ピディン・キン・サタリムを人質としてセブンス帝国に送る。
といった物が含まれた講和条約の内容だった。勿論他にも項目はあるが、聞いて一番に感じたのは。
(実質的な属国宣言みたいなものだろこれは!!)
チラッとバルマフ国王の方を見ると、体をプルプル震わせて怒りを出すのを耐え忍んでいた。セブンス帝国との国力差は痛いほど分かっているからだ。
「どうでしょう」
「・・・・ふ、ふふふ、敗者が口を出すが、まったく厳しい条件だ」
「うふふ、返事はどうかしら?」
ナナさんは、ニコリと笑いながら返事を促す。
「・・・受けるとも。断って滅ぼされるよりかはマシだ」
バルマフ国王は、項垂れながら頭を縦に振った。
◆サタリム王国国境付近
場面は代わりサタリム王国国境付近。そこにある小山の頂上で、一人の男がいた。
「ふるぅむ、やはり六万もの死は良いものでしたね~♪怒り、憎悪、嘆き、血飛沫、悲鳴等々の大合唱♪ああ♪辛抱たまりませんな♪我が盟主にも聞かせてあげたいものですぅ♪」
「・・・“騎士”様。エネルギー回収完了致しました」
そこに現れたのは、一人の騎士。血のような色をした髪に血のような赤い鎧を纏った男が現れた。脇には、一つの器具が挟まれていた。
「おやぁ♪もう終わりですかぁ♪残念ですねぇ、そうでしょう?♪」
“騎士”と呼ばれた男は、笑顔のまま振り向く。そこには。
無数の人間の顔が埋め込まれた肉塊が置かれていた。しかも、良く見ればどれも年齢が十を満たない子供ばかりである。
「・・・う・・・・ああ」
「た、・・・・・す・・け」
「・・いた、い・・・・よ・・・・ぉ・・・お、かあ・・さん」
「おやぁ?♪おやおやおやおやおやおやおやぁ?♪帰りたいんですかぁ?♪」
“騎士”は、笑顔のまま肉塊に近づき。
「んん~~~~っ♪駄☆目♪」
そう言いながら“騎士”は、いつの間にか抜いた剣で肉塊を切り刻む。それもゆっくりと丁寧に。まるで石像を作る時の彫刻家が丁寧に石を削るように、ゆっくりと丁寧に子供達の顔を切り刻んでいった。
「ああああああ・・・ああああ!!」
「痛い・・痛い痛い痛い痛い痛い!!」
「やめてェェェェェェ!!」
子供達の悲鳴が響く中、“騎士”はうっとりとした顔で血を拭う。
「ふるぅむ♪何とも無垢で、純粋な悲鳴でしょうか♪ああ、良い!♪良い良い良い良い良い良い良い!♪ふァァァァ!!」
と、鼻血を出しながら狂喜乱舞していた。そんな中配下とおぼしき男が、タオルを“騎士”に差し出す。
「お気に召したのでしたら持ち帰りますか?」
「おやぁ♪気が利きますねぇ♪・・・いいえ、持ち帰りません♪これは只の、粗大ゴミをつかっての暇潰しですから♪」
そう言って“騎士”は、今まで切り刻んでいた肉塊を見据えると、剣を構えて振り下ろす。
すると肉塊は、塵レベルまで切り刻まれ消えた。
「ああああああああああああああああ!!」
きっちり悲鳴を残しながら。
「やっぱり悲鳴は良いものです♪」
“騎士”は、狂気を纏った笑みで呟いた。
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