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指揮官ギゼード戦


◆サタリム国境付近 空 三人称



 サタリム王国の国境付近の空。そこでは、剣を用いた空中戦が展開されていた。


「ふんっ!」


 一本の剣を持ち空を駆けながら敵と戦うは、サタリム軍先遣隊指揮官ギゼード。


「おわっ、危ねっ!・・お返し!」


 ギゼードの剣を回避しては反撃、回避しては反撃を繰り返している茶色仮面の男。正体は、セブンス帝国から増援としてやって来た〈帝将〉カゲマサである。


「くっ、貴様ぁ!マトモに戦う意思はないのか!?」

「勿論あるとも。現に逃げてないじゃないか」


 俺が反撃しかしないのでギゼードは、思わず怒鳴った。しかしカゲマサは、飄々としながら攻撃を回避。端から見れば余裕を保っており、ギゼードが遊ばれているようにしか見えない。


「ッ!?・・・俺を、俺を侮辱するのもいい加減にしろ!」


 ギゼードは、遊ばれていると感じ剣撃を加速させる。それでも当たらない。


(この速度にも対応するのか!?どうなっているんだこの魔導師は!?)


 ギゼードは、内心驚愕するが直ぐに気を取り直して相手を観察する。


(・・・見た感じ身体能力を魔力で強化しているようだが、剣技は素人に毛が生えたレベルか?剣も只振っている感じだ)


 その他の情報を合わせてギゼードは、敵の実力をこう判断した。


(コイツは、魔法こそ一級品だが武術には疎い)


 勿論未知数な事柄もあるが、今はこの評価が妥当だとギゼードは考えていた。

 一方のカゲマサはというと。


(早く本隊来いよ!?糞ぅ、コイツが中々強いので時間を稼ぎ、本隊到着後直ぐ様魔法で全滅させる作戦なのに!)


 カゲマサが狙っていたのは、一網打尽。自分という危険分子を餌に本隊を釣りだし、纏めて始末するという荒業だった。


(《存在関知》で把握はしているが、如何せん行軍が遅い!逃げ延びた奴が居たはずだろう!?)


 カゲマサが先遣隊を潰している最中、本隊の居る方向に逃げていく数名の兵士がいたのだが、あえて見逃した。俺という危険分子を伝えてもらって、今すぐ始末しなければと思ってもらい、本隊が来るように仕向ける為。退却するかも知れなかったので、賭けだったがゆっくり来るということは、侵略の意思はあるらしい。


(・・・仕方ない。待つとしよう)


 カゲマサは、行軍が遅いことに少しイライラしたが、待つことにした。その後何度か打ち合ったカゲマサとギゼード。一向に決着が着かず、地上に残っていた兵士達が上を見すぎて首を痛め始めた時。


「埒が開かん」


 ギゼードが剣を下ろしながら、呟いた。


「貴様の中にマトモに決着を付けようとする意思が無いのは十分わかった」

「なら止めるかい?」


 カゲマサの答えにギゼードは、若干怒りを覗かせながら剣を振り上げる。


「止めん。何故ならば、貴様は我らが同胞の命を屠った敵。引くなどありえない」

「じゃあどうする?」

「こうする」


 ギゼードは、振り上げた剣に魔力を集中させる。すると、ギゼードの剣に次々と風が纏まり始め、やがて一本の剣のように凝縮された風を剣が纏っていた。


「なんだそりゃ」

「冥土の土産に教えてやる。これは《暴風刃》、剣に暴風を纏わせ近距離は勿論、中距離や遠距離にも対応できるスキル。貴様は、荒れ狂う暴風の剣を捌ききれるか?いくぞ!」


ギゼードが《暴風刃》を纏った剣を振るうと、十数における暴風の刃がカゲマサに襲い掛かった。


「っ!これは、早い!」


 カゲマサは、瞬間移動のごとく躱した。暴風の刃は地面や山に落ちていき、


「・・・中々の威力なこって」


 暴風の刃が直撃した場所は、大地や山の地表が抉れていた。


「まだまだ!」


 ギゼードは、まだまだ攻撃を止めない。恐らくカゲマサを本気にさせる為だろう。


「・・・このまま躱すだけでも良かったが、もういいか。やっと奴等の本隊もそこまで来ている。流石に迎撃準備をしなければ」


 カゲマサは、ぶつぶつと呟く。そして行動に移した。


「・・・頃合いだな。【アクセラレート】+【ヘルフレイム】」


 【アクセラレート】。ダンジョン最高幹部〈六将〉の一人、ゼクトとの模擬試合に使った魔法。自身のスピードを超加速させる代物である。


「・・なっ!?」


 突如として背後に現れたカゲマサにギゼードは対処しきれず、【ヘルフレイム】で炎に飲み込まれた。そして力尽きたのか、地面に落下していった。カゲマサは、ゆっくりと着地。燃えているギゼードの元に向かう。カゲマサはじっくりと燃え盛るギゼードを見ていた。その時。


「があああああァァァァぁ!!」


 燃え盛るギゼードは、カゲマサに掴み掛かったのだ。しかしカゲマサはそれを躱し、止めと言わんばかりに闇魔法【デス】を放つ。即死魔法として名高いソレを受けた燃え盛るギゼードは、そのまま倒れて動かなかった。


「強かったな、アンタ」


 カゲマサは一言言って、歩いてくる。しかし、何事も上手くいくはずがなく、邪魔が入った。


「お前らは?」

「・・・我等はギゼード様の配下、〈暴風旅団〉である!ギゼード様の仇、討たせてもらう!覚悟しろ!」


 いきなり出てきた緑色の軍服を着る軍人達。彼等は、腰に挿していた剣を抜きはらい駆け出した。


「覚・・・!」

「すまん。面倒だから、全員斬った」

「・・・・は?」


 〈暴風旅団〉の面々がいざ走り出そうとした時には、カゲマサは彼等の後ろにいた。


「なっ!?」

「いつの間に!?」


 カゲマサは、狼狽える彼等を見ながら剣を鞘に納める。


「【アクセラレート】+【エンチャント・デス】」


 【エンチャント】。別名、付与。物品に魔法を付与する魔法。例えば、剣に【エンチャント・フレイム】を付与すると、剣から炎がでるようになる。【エンチャント・デス】の場合は、斬った相手が死ぬという凶悪仕様である。しかし、即死魔法に耐性があるものや、ゾンビやスケルトンといった元から死んでいる者には効かない。

 【エンチャント・デス】が付与された剣で傷付いた〈暴風旅団〉は、軒並み倒れていった。カゲマサは、念のため息を確認して死んでいることを確認した後、死体を【ボックス】に仕舞い込み、敵本隊を待った。


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