不滅のシミター
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◆オロッカのダンジョン カゲマサside
棺から出てきた毛むくじゃらの巨漢。俺は、思わず鑑定してみる。
名前 不滅のシミター
種族 上級吸血鬼
職業 核の守護者 オロッカの眷属
レベル 21
ランク A
スキル 暴走 魔力吸収 剛力 俊敏 吸血 超速再生
強い。《鑑定》結果を見た感想がそれだった。しかし疑問も残る。中級吸血鬼な筈のオロッカが、上級吸血鬼を眷属に出来るものか?何か裏技をしたのか?最初から育てたのなら納得いくが。
「ゴブイチ、ワイズ。お前達は、あの吸血鬼マスターを捕えろ。俺は、あのシミターって奴を殺る」
お、クロが動き出すみたいだ。
◆オロッカのダンジョン 三人称
ゴブイチとワイズが吸血鬼マスターの元に向かったのを見届けたクロは、シミターと呼ばれていた巨漢と向かい合う。
「さてと、《鑑定》では暴走のスキルがあったな。だから言葉が通じないのか」
「GAAAAAAA!!」
シミターは、肉切り包丁を振り回しクロに襲いかかる。クロは、肉切り包丁の一閃を空に飛び回避。そして巨体に似合わない速さに加速してシミターの身体を踏み潰した。余りの威力にクレーターが発生、シミターはグチャグチャになりながらクレーターに飲み込まれる。
「・・・本来ならこれで終わる。だが」
クロは、そう呟きながらクレーターを覗く。そこには、身体がグチャグチャだったにも関わらず、既に完治しかけているシミターの姿があった。恐らく特殊型人工魔人が持つ《超速再生》のスキルの効果だろう。
「GAAAAAA!!」
「ぬっ」
シミターは、肉切り包丁をクロに投げ付けた。クロは、首を動かし躱す。その瞬間、クロの頬にシミターの拳が突き刺さった。
「ぐっ、・・・中々に速い」
「GUUUUOOOOOO!!」
シミターは、ドラゴン形態のクロに怒涛の連打を加えていく。クロは、後退しながら反撃のタイミングを伺う。そしてシミターが僅かに攻撃の手を緩めた瞬間、
「《古龍の咆哮》」
オロッカのダンジョンを貫通したスキルを放った。《古龍の咆哮》は、黒い光線となりシミターに直撃、シミターは黒い光線に飲み込まれていった。
クロは、《古龍の咆哮》を吐き終わり、辺りを見渡す。どこもかしこもボロボロで何時崩れるか分からない状態だった。
「・・・ふん、生き残ったか」
辺りを見渡していた時、クロは見つけた。瓦礫が散乱する部屋の隅っこで、一つの眼球から再生を始めているシミターを。そしてシミターは、ものの十数秒で元通りに再生を果たす。
「GYUUUUAAAAAAA!!」
「俺が言うのも何だが、タフすぎるなお前」
シミターは、転がっていた肉切り包丁を拾い上げ駆け出す。どんどん加速していき、ほぼ音速の域にまで加速した。
「良し、《人化の術》発動」
いよいよ肉切り包丁が触れようとした瞬間、クロは《人化の術》で人間サイズに変身。いきなり人間サイズになったので、シミターの肉切り包丁は空を切るだけだった。
「GUUUOOO!?」
「隙ありだ。《古龍の咆哮》!」
クロは、再び《古龍の咆哮》を発動。再びシミターを消し飛ばした。今度は相当力んだので、またダンジョンを貫通、上層に上がっていった。
「さて、奴が《古龍の咆哮》の中に飲み込まれたのは見た。流石に死んでいる筈だが、生きてたら仕方ない。再び始末するだけだ」
クロは、そう呟きながらゴブイチとワイズの元に向かった。
◆オロッカダンジョン第四階層 三人称
「GUU・・UU・・・・O・・・OOOO!!」
再び《古龍の咆哮》を喰らったシミターだが、案の定生きていた。今度は、頭だけだったが《超速再生》を開始して再生、五体満足となる。
「GAAAAAAAAAA!!」
シミターは、自分の敵がいないことに気付き、敵を探すために歩きだそうとして、
後ろから首を切られた。シミターは、再び《超速再生》を開始する。頭から血管が伸び頭と胴体をくっ付けようとしていた。それを見ている首を切った張本人はというと、
「何だコイツ、オレと同じ《超速再生》持ちかよ。面倒だな、鑑定しておこう」
シミターの首を切ったのは、カゲマサやミレンダによって最初に生み出された特殊型人工魔人、アルファ。両腕から巨大な爪が生えており、それでシミターの首を切ったのだ。
「GUUUUOOOOOO!!」
「《鑑定》完了、吸血鬼だな。ならば、これでいく」
肉切り包丁片手に襲い掛かってきたシミターにアルファは、巨大な爪を突き刺す。シミターは、必死に踠き脱出しようとするが、アルファの体表から出てきたネバネバの物体に絡め取られ、身動きが取れない。
「【ライトボム】!」
アルファは、シミターの体内で光魔法を発動した。シミターの身体は肉片となりあちこちに散らばる。
「ゼータ、イプシロン」
「ナァァァァニィィィィ?」
「けっひっひ、なんだい?」
異常に太った肉体を持つゼータ、痩せ細った肉体だが彼が引きずる吸血鬼の死骸を見れば、見せかけとわかるイプシロン。二人とも特殊型人工魔人である。
アルファは、今に再生しようとしているシミターに目を向ける。
「イプシロン、コイツに〈眠りの鎖〉を。持って帰れば、良い生命液になる」
「けっひっひ、わかった。【ボックス】」
イプシロンは、【ボックス】から鎖を取り出し今に五体満足となり掛けているシミターに巻き付けた。
「GUUUUOO・・OOO・・・・・O?」
再生を終わらせたシミターは、暴れようとするが鎖が巻き付けられた瞬間、猛烈な眠気に襲われた。シミターは、身体能力が化け物な分精神干渉には弱いということだろう。実際シミターは、あっさりと眠りに付いた。
「けっひっひ、凄いなミレンダさんの道具は」
「そうだな。良し、ゼータ。コイツを《格納》してくれ」
「ワカッタァァァァァ」
頷いたゼータは、眠るシミターに触れる。すると、シミターがみるみると小さくなり、十センチ程度に縮んだ。ゼータは、それを己の腹に取り付ける。すると、縮んだシミターはどんどん腹に沈みだし、やがて完全に腹のなかに《格納》された。
「さ、行くぞ」
「オオオオオオ!」
「けっひっひ」
こうして三体の異形は、クロが作った縦穴に向かった。
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