特殊型死虫魔人
◆神都メーカ サブダンジョン カゲマサside
ダンジョン調査隊の大半が死んで以降、何故か引っ切り無しにダンジョンに挑む輩が増えた。どうやら俺のサブダンジョンと悪魔のダンジョンで産出された宝、ミスリル鉱石や上等な魔剣、スキルオーブなる物に引かれたらしい。上手く餌に食い付いたか。
「まあ、それらの宝は全部最下層に移したけどな」
あれらは、広告の為に用意したもの。本来は深い階層に置かれる宝だ。だから、浅い階層で必死に探している奴は完全な徒労である。見付からないことに苛立ったのか、更に深く潜ろうとする輩もいるが、そういった奴等はウチの迷宮防衛軍の兵士に捕まり、生命力を奪われ人工魔人の素体とした。
「あ、そういえばミレンダから人工魔人、デッドパラサイトについて報告があったな」
俺は、ミレンダから送られてきた資料に目を通す。
・デッドパラサイトについての報告
デッドパラサイトに進化が発生。名称がデッドパラサイトリーダーとなり、他のデッドパラサイトを統率できることが判明。ランクE。これにより人工魔人の指揮官を製造することが可能となる。なので、現在製造している量産型とは違った特殊な魔人製造に乗り出した。取り敢えずは、量産型をベースに改良を進める。
次にデッドパラサイトの生態について。当初我々は、デッドパラサイトは寄生して終わりと考えていたが違った。デッドパラサイトは、時間を掛ければ掛ける程死体との親和性が上がり、親和性が最高になるや否や死体と完全な同化を果たした。これにより、死体だった物は種族名称、死虫魔人となることが判明した。
因みに、死虫魔人となったデッドパラサイトは、二度とその死体から離れることが出来なくなる。その代わりに、死体の肉体能力・スキルを遺憾無く発揮することが可能。
「なるほどね」
俺は、一人呟く。死虫魔人か。人工魔人計画は一応の成功といった感じかな?安定した戦力の開発は急務だから成功だと思いたいけど。
「・・・戻ろう。俺でも出来ることがあるかも」
俺はそう決断し、側にいた階層二十狂星の一人、ギガースのマキアに指示を出す。
「マキア。俺は、暫くここを出る。防衛は任せたぞ」
「・・・お任せあれ。我が主よ」
マキアが頷いたので俺は、本部へ転移した。
◆ダンジョン 迷宮研究所 カゲマサside
さて、迷宮研究所まで戻ってきた訳だが。
「見張りご苦労さん」
「「はっ!」」
俺は、門番の魔人に声を掛けながら迷宮研究所に入っていく。暫く進んでいくと、培養土に満たされた大量の装置が並んでいた。中には、人形の何かが漂っている。
「それが量産型のボディさ」
お、ミレンダが来たな。ミレンダは、白衣に身を包みダークグレーの髪を靡かせながら歩いてくる。
「へぇ、これがねぇ。腕や脚の太さが通常の人間よりも太いな」
「人間やモンスターの筋肉を移植したんだ。そりゃ太くなるよ。それよりカゲマサ、あんた特殊型の人工魔人を見に来たんだろう?」
「ああそうだ。あるのか?」
「勿論さ。既にデッドパラサイトリーダーを寄生させる用を培養中だよ。コッチさね」
俺は、ミレンダの案内で歩いていくと、十二個の装置がある部屋にたどり着いた。
「おお、これは何というか、凄いな」
「そうだろうさ。何せ特殊型だからねぇ。オリジナリティをもって制作したらこうなったのさ」
装置の中には、様々な肉体が培養されていた。異様に太った肉体。細身で高身長な肉体。腕が複数ある肉体。etc.etc.どの肉体も個性に溢れた肉体だった。しかし、どの肉体にもあるものが付いている。
「空を飛ぶための羽にスキル《再生》の上位互換である《超速再生》、空間魔法【ボックス】、知性を上げるための脳強化、《気配察知》、か」
「羽は空を飛ぶため、《超速再生》はどんなに攻撃をしても再生するしぶとさ、【ボックス】は様々な道具を入れる為、脳強化は考える知性を与える為、《気配察知》はまあ索敵用だねぇ。他にもスキルを備えている全員ランクAは下らない化け物共さ」
「頼もしいじゃないか。俺はそう思うぞ」
実にいい。実にいいぞ。こんな戦力が量産可能になれば、俺のダンジョン防衛力は更に強固となる。
「ああ、そういえば一体だけ、もう死虫魔人になっている奴がいたけど、実地実験も兼ねて動かしてみるかい?」
「おお、頼む」
そう言うとミレンダは、装置を操作して培養液を抜いていく。培養液の抜かれた装置の中には、二メートル程の人形が立っていた。試しに《鑑定》してみる。
名前
種族 特殊型死虫魔人
職業 迷宮研究所直属部隊
レベル 1
ランク A
スキル 超速再生 脳強化 気配察知 空間魔法 身体能力超強化 体力吸収 魔力吸収 毒無効etc.
「じゃあ、あ~。名前がないと不便だな。よし、お前はアルファだ。どうだ?」
すると死虫魔人は、ゆっくりと近づき、
「ソ、レガ、オレ、ノ、ナマ、エ、ナノカ?」
おお、片言だが喋ったぞ。知能があるって本当だったんだな。
「そうだとも。お前はアルファ。それがお前の名だ」
「ウ、オオ!」
アルファは、喜びを表しているのか両腕を振り上げ、吠えた。喜んでもらえて何よりだ。
「じゃあ、アルファ。ちょっと仕事を頼みたいんだが」
「ン、ナンダ?」
俺は、笑顔で頼みを口にした。
◆神都メーカ近郊 廃村 カゲマサside
「死ネェぇ!!」
俺は、現在下で暴れているアルファを見ていた。隣にはデータを取るミレンダもいた。
「ふむ、やはりたかが盗賊風情では太刀打ち出来んか」
「そうだねぇ。仮に傷を付けても《超速再生》で治るしねぇ」
アルファは、長い手足を利用して盗賊を薙ぎ倒したり、スキル《体力吸収・魔力吸収》で盗賊を干からびさせたり、何と炎を吐き盗賊を焼き払った。やがて盗賊を全滅させたアルファは、物足りなさを出しながらも雄叫びを挙げ勝利を示した。
「まったく、頼もしい戦力だよ。本当に」
特殊型死虫魔人の量産が軌道に乗れば、ダンジョンの防衛力のさらなる成長が見込める。そう思うたび俺の頬は緩んだ。
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