新たな発見
いつの間にか、累計PVが700000越えてた・・・!本当にありがとうございます!こんな稚拙でド下手な小説ですが、これからも覗いてくれたら嬉しいです!
◆ダンジョン 牢屋 カゲマサside
俺は、此方を睨んでいる勇者タダユキに嘲笑混じりで話し掛ける。
「ザマァないな勇者。勇者とあろうものがパンチ一発で倒されるなんて」
勇者タダユキは何も喋らない。ただ此方を睨むだけだ。
「おいおい、睨むだけじゃなくて何か言ったらどうだ?」
「・・・・貴方は何者ですか」
ああ、今の俺は茶色変装セット着てなかったんだっけ。となると、今は冴えない若者に見えてるかな。
「う~ん、裏の人間?」
「裏ですと?犯罪組織の人間か?」
「まあ、そんなとこ」
嘘じゃない。ダンジョンマスターなんて、人類を殺しまくったりしてる犯罪組織みたいなもんだろ。暴論かもしれんけど。
「何が目的ですか?金ですか?」
「金か。あれば助かるな」
主に地上での生活では、必要になってくるし。金があったら多少賄賂に使えたり、必要なときに必要な道具を買えるからな。
「・・・取引しませんか?」
「取引?」
「僕は今金を持っています。ざっと金貨三万枚といったところでしょうか。それを貴方に差し上げます」
「ほう?」
「その代わり、僕をこの牢屋から出してください」
「ふむ、だが肝心の金が無いな」
「空間魔法【ボックス】に入れてあります。この手錠を外してくれたら直ぐにでも」
あ、コイツの思惑が分かった。金をちらつかせて手錠を外したら、俺を攻撃して逃亡だろう。そんなことを考えていると、傍らに仮面を被ったミレンダが何かの器具をもって現れた。その器具は、まるで注射器のような形状をしている。
「待たせたねぇ。コイツが例の物さ」
「これがか?効くか?勇者に」
「それを今から試すのさ」
ミレンダは、牢屋の扉を開け中に入っていく。勇者タダユキは、異常に気付いたのか身をよじり手錠を外そうとしていた。
「さて、アンタにはこの器具の実験台になってもらうよ」
「な、何をする!僕は勇者だぞ!?」
「はあ?何を今さら言ってんだい?」
「勇者である僕に何かあったら帝国が」
「ああ、それなら問題ない。お前は、もう世間じゃ死んだことになってるから」
「なっ!?」
そう。何時の間にか、帝都からの声明で勇者タダユキの死が伝えられたのだ。俺もついさっき知ったのだから驚くのも無理はない。声明のことを伝えてくれたナナさんからは、こう伝えられた。
『好きに始末しなさい』
ナナさんがこう言うんだ。コイツに助けは来ないしどう扱おうと、ナナさんは、黙認するつもりなのだ。
「そ、そんな馬鹿な!!僕は勇者だ!!特別な存在だぞ!?何で切り捨てられなきゃいけないんだ!?」
「お前の所業を見たら納得の末路だな。ミレンダ、始めろ」
「あいよ」
ミレンダは、注射器を勇者タダユキの首に刺し、何かを吸出し始めた。
「あァァァ・・・ガァァァァ、、!!」
「おー、随分と吸い出せるものだな」
「まぁね。さすが勇者ってところかねぇ」
注射器には、透明な液体が貯まっていっている。
「ああ、ダメだね。一本じゃ足りない。予備のもう一本も必要だね」
ミレンダは、そう言ってもう一つの注射器を刺しこみ、更に吸い出す。そして数十分経ち、勇者タダユキは廃人のように項垂れていた。
「で、どうだった?」
「ああ、しっかり取れたよ。〈生命力〉」
〈生命力〉。ミレンダが人体の実験の折りに見つけた物で、この生命力の量が生物の強さを表す?らしい。ゲームで言うところの経験値か?その経験値が全て抜かれたとなると。俺は、勇者タダユキを《鑑定》してみる。
名前 阿川忠行
種族 人間
職業 勇者 魔導師
レベル 1
ランク F
スキル 無し
うわぁ。レベルからスキルまで、全て吸い取られとる。俺は、絶対こうなりたくないな。
「ふぅ、いやぁ凄い量の生命力だねぇ。勇者様々だ」
「で、その生命力どうするんだ?」
「これから実験するよ」
「考えてなかったのかよ」
俺は、呆れたように笑うと勇者タダユキに目を向ける。もはや、この肉塊は用済みだ。
「じゃあ、コイツは用済みってことで」
「あいよ」
俺は、数匹の小柄な鬼、餓鬼を呼ぶ。ダンジョン内では、〈掃除屋〉と呼ばれるモンスター達だ。常に飢餓感に苛まれている彼らから見たら、勇者タダユキは餌にしか見えない。
「おら、食事だ」
俺が呟いた瞬間、餓鬼達は勇者タダユキに襲い掛かった。だが勇者タダユキは動かない。いや、動けない。生命力を全て奪われた彼に立ち上がり逃げる力は無い。それ以前に、牢屋の中なので逃げられない。そんな勇者タダユキに餓鬼達は、容赦なく喰らい付く。肉を喰らい、内臓を引きちぎり、骨をかみ砕きながら、勇者タダユキという存在そのものを喰らい尽くしていった。
餓鬼達が勇者タダユキを喰らい始めてから数分後、勇者タダユキは何の悲鳴も上げずただ喰われ、呆気なく死んでいった。肉体は勿論、骨も全て喰われてつくされたのだ。
◆迷宮研究所 カゲマサside
勇者タダユキの最後を見届けた俺は、研究所に移りミレンダの実験を見学することにした。
「んじゃ、今から〈生命力〉活用の為の実験を行うよ!いいねアンタ達!」
「「「はいっ!」」」
おーおー、部下達も張り切ってるな。というか、若干深夜テンションのような気配が無いわけでもない。寝てないのか?
「まず生命力は、生物にとって強さの基準となるものさ。例えば、ランクやレベルといった数値=生命力と考えていい」
「という訳で、まずは人間にこの生命力を投与したらどうなるか、確かめてみるよ!!」
ミレンダは、腕を振り上げて指を鳴らす。すると一人の男が連れてこられた。ミレンダは、その男に注射器で生命力を流し込む。すると、男の肉体がみるみると肥大化していった。
「おお!」
「生命力を少し入れただけでこれか。勇者の奴だからか?」
どんどんと肥大化していく男。しかし許容限界を越えたのか、男の肉体はパァンと弾けとんだ。
「ふむ、さすがに許容限界有りっと」
その後も実験は続けられた。生命力を口から入れたり、量を多くしたり少なくしたり、無機物に垂らしたり、モンスターに与えてみたりと数多くのパターンをミレンダは試した。結果、あることが判明する。
「この生命力の液は、ランクFの生物に適量を飲ませたら、最大でもランクCの生物に強制的に進化するようだねぇ」
「それは凄いな!」
ランクFからCまで楽になれるということは、これからの戦力増強も容易い。もちろん力に慣れる期間は必要だが、それでも素晴らしいものだ。その他にも分かったことはある。ランクC以上の生物が飲むと、一時的なドーピング状態になり、身体機能が上昇すること。傷口に少し掛けると、傷口が塞がること。純粋なエネルギーでもあるため、手順を踏めば魔力に変換することだって可能であることなど、様々だ。これが分かった日を境に、ダンジョンでの人間の扱いががらっと変わった。
ランクが低い人間や生物は、いつも通り実験台になるか、血生臭いモンスターの餌食になる。だがランクの高い生物は、生命力を吸い出され、平行して進められている「人工魔人計画」の実験台又は素体となっていった。吸い出された生命力は、ホムンクルス製造の際にホムンクルスに投与して、即席のランクCを造ることや、モンスターへの投与並びに治療薬となった。
因みに俺も飲んでみたが、進化どころかドーピング状態にさえならなかった。何で?
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