二回目の爆弾
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◆第二十五階層 迷宮研究所 カゲマサside
「勇者タダユキ、か。何で来たと考える?」
「確実にアンタへの復讐だろうねぇ」
だろうな。あんな目に遭ったんだから、怒るのも無理はない。
「で、どうするんだい?」
「・・・・ふむ」
俺は少し考え、告げる。
「ミレンダ、闘技場にギオと死霊魔人がいたよな?」
「ああ、いたねぇ」
「借りるぞ」
「あいよ」
そう告げた俺は、【ディメンションムーヴ】で転移した。
◆ドミニク辺境伯領 空中 カゲマサside
ギオと死霊魔人を連れてきた俺は、現在【グループフライ】という魔法で空中に浮かんでいた。
「おいカゲマサよぉ!何時になったら戦えるんだぁ!?」
ギオ・ウォーマン。フリン公国で出会った元半巨人でスキル《魔人王》でランクAの上級魔人となった猛者。現在は、名目上闘技場の番人を勤めているが実際は時々連れてこられる冒険者相手に暴れまわっているだけなのだが。
「む、敵、沢山」
死霊魔人。数多くの死体掛け合わせて作成された死霊混合人がスキル《魔人王》によって魔人となった怪物。死霊混合人時は様々なモンスターの部位が合わさってかなりグロテスクな見た目だったが、魔人時は上手く部位が合わさってきれいな見た目になっている。現在は、迷宮近衛隊の一員としてコアルームを守っている。
「良し、お前ら。今から彼処に魔法をぶちこむから、それを合図に突っ込め」
「殺すのか?」
「体は残せ。それなら良いぞ」
「はっは!腕がなるぜ!」
「ん、了解、任せて」
俺は、その頼もしい声に微笑むと、魔力を集中させる。使ったのは、覚えて間もないあの魔法だった。
「【核撃爆弾】」
この日ドミニク辺境伯領に、一つの太陽が発生した。
◆ドミニク辺境伯領 勇者タダユキside
「・・・・糞っ」
勇者タダユキは、苛立っていた。何故勇者たる自分がこんな目にあうのかと。
勇者タダユキ、またの名を阿川忠行17才。日本にいた頃は、そこらにいる大人しい高校生だった。そんな彼には一人の妹がいた。名を阿川小百合、勇者サユリである。小百合は、今年16才だが、忠行よりも学力や運動能力が上だった。忠行は、次第に自身へコンプレックスが芽生え、何事も先へ行く妹に苛立ちも生まれ始めた矢先に、勇者として召喚された。忠行は歓喜した。これなら妹を超えられると。だが結果はどうだ。妹は、異世界でも自分の先を行っている。こちらも頑張っているのに何故先に行くのか、忠行には分からなかった。その結果忠行は、守るべき民に当たるようになり、捻れに捻れ現在の弱者を見下し、自分の思い通りにならないと怒り出す自分勝手な性格が形成されていった。
そんな背景のある勇者タダユキだが、現在彼が苛立っている対象が、茶色の仮面を被ったカゲマサである。
「あの屈辱は忘れないぞっ・・・!選ばれた僕に逆らった罰を与えてやる・・・!!」
そう怒りを露にした。因みに引き連れている男達は、帝都にて食いっぱぐれていた冒険者達である。ほとんどかランクFからD程度だが、足止めにはなるだろうと連れてきたのだ。建前として、ダンジョンで一儲け出来ると伝えてある。殆どの冒険者は、儲けるという思いの元で動いているが、ある一人だけは違った。
「・・・なあ、勇者様。本当に儲けられるのか?」
「ええ、ウィリーさん。貴方の恋人を病から解き放つ薬を買える金が稼げますよ」
ウィリーと名乗る冒険者は、唯一のランクC冒険者である。勇者タダユキが鑑定した所によると。
名前 ウィリー・モルガム
種族 人間
職業 Cランク冒険者 弓手
レベル 26
ランク C+
スキル 弓術 罠設置 遠目 風魔法 俊敏 気配察知 気配隠匿etc.
それなりに優秀だ。
「その村を襲うことがか」
「・・・あの村は敵です」
だが、反抗心があることが難点だ。唯一まともな感性をしているだけに扱いづらい。
「・・・・」
「反対なら、手前の街に戻りなさい。それなら村をおそ・・ッ!?」
その瞬間、勇者タダユキ達は、太陽のごとき光に飲み込まれた。
◆上空 カゲマサside
おーおー、死んでる死んでる。
【核撃爆弾】を発動させた俺は、下の惨状を見ていた。威力は調整したとはいえ大体が腕や脚、頭、腹などの部位が捥げたり、炭化していたりと、いろいろ酷かった。どうでも良いが。そしてよく見ると、勇者タダユキは生き残っていた。だが、見るからにボロボロで立つのもやっとと言った感じだ。
「よし、ギオと死霊魔人。行けぃ」
「よっしゃあぁぁ!!」
「ん、行く」
俺が号令を掛けると、ギオと死霊魔人は一斉に飛び出して行った。
◆地上 勇者タダユキside
いきなり光ったと思ったら、今度は異常な程の爆風と衝撃波、そして熱。勇者タダユキは、何とか魔力障壁で防ごうとしたが突破され、結果ボロボロになってしまった。そんな勇者タダユキの前に、二人の巨漢が降り立つ。
「おうおう!コイツか!?勇者って奴は!」
「ん、主、肯定」
「そうか!随分とガリガリだな!」
舐められている。そう感じた勇者タダユキは、苛立ちを覚えながらも、耐える。
「・・・貴方がやったのですか?この惨状を」
「ん?いや、俺達のボスがやった。それだけか?じゃあ」
片方の巨漢は腕を振り上げる。腕は、ミキミキと音を立てて肥大化していく。
「死ねェェ!!」
十分に肥大化した腕を思いっきり振り抜いた。
「っ!【ディメンションムーヴ】!からの【ライトニングランス】!」
だが、そこは勇者。空間魔法で辛くも躱す。そして、反撃用の魔法を発動させた。
「軽いんだよォォォォ!!」
しかし巨漢は、拳による一撃で魔法を粉砕。そしてそのまま勇者タダユキの腹に拳をねじ込んだ。
「・・・ガッ!?」
「あ?」
すると勇者タダユキは、無理をしていたのか気絶。そこには、立ち尽くす巨漢、ギオと死霊魔人。
「・・・何だ。案外弱かったな」
「体、貧弱、無鍛練?」
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