新たな計画
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◆ダンジョン コアルーム カゲマサside
「へ?」
いきなり転移した勇者パーティーに俺は、つい情けない声を出してしまった。
「・・・はっ!シロ、奴等は今何処に!?」
「地上に姿を確認しました。脱出を許した模様です」
「・・・おいおいおい、逃げた?勇者が?理不尽の塊が?」
俺は、訳がわからないと頭を抱える。勇者パーティーは勇者を始め、仲間全員がランクAという強者だ。しかも勇者は、理不尽の塊とも言うべき怪物。そんな連中が狂星三人相手に逃げ出すか?
「あの、カゲマサ様?恐らく種族差が関係しているのでは?」
そこに意見を入れてきたのは、ランクAながらシロの副官となっている上級魔人のカレン。
「種族差?無い無い。勇者だぞ?そんなアドバンテージなんか直ぐに飛び越えてくるさ」
「いや、マスター?私は案外合っていると思いますが」
「シロまで言うか!?勇者だぞ!?俺達にとっては天敵だぞ!?理不尽だぞ!?り、ふ、じ、ん!!だぞ!?」
そして俺は、如何に勇者が恐ろしい存在か語って聞かせる。シロとカレンは、半信半疑といった感じで聞いていたが、俺は構わず話し続けた。
数時間後。全てを語り終えた俺は、シロとカレンを見ながらこう締めくくる。
「分かったか?勇者は俺達にとっては災害、いや天災に等しき存在だ。だから全力で追い払うのだ!」
「・・・マスターが勇者を恐れている理由は分かりました」
「ならば」
「しかし、この世界では違うかもしれませんよ?現に狂星三人で撤退させることに出来ましたし」
「・・・・確かに」
確かにその可能性もあるだろう。だがしかし。
「・・やっぱり怖いんだよ」
「マスター?」
「どんなに前向きに捉えようとしても俺の中では、どうしても勇者が理不尽な存在に見えてしまう。たとえ女の子だったとしてもさ」
「・・・・・」
俺の弱音をシロとカレンは、黙って聞いている。元日本人で異世界転生系の小説を見てきた俺は、どう屈折させても勇者は理不尽の塊だ。
「・・・マスター、ご安心ください。勇者パーティーを必ずや撃退し、マスターに安寧をもたらして見せます」
「・・・ありがとう、頼もしいね」
そのシロの宣言に俺は、少し安心した。そして俺は、シロに地上に行くと告げて【ディメンションムーヴ】で転移した。
◆地上 冒険者ギルド支部 カゲマサside
地上に転移した俺は、いつもの茶色変装セットに着替え、ダンジョン前にある冒険者ギルド支部を覗く。
しかしどういう訳か、冒険者ギルド支部は不思議な程に静かだった。普段なら最低でも数人は冒険者がいる筈なのに誰一人いない。職員も同様だった。俺が訝しんでいると、後ろから話し掛けられた。
「どうしたんだカゲマサさん」
「うん?なんだバッガにダシューか」
話し掛けてきたのは、冒険者のバッガとダシューだった。
「いやさ。ギルド支部ガラ空きなんだけど、何か知らない?」
「え?知らなかったのか?」
「?」
「勇者パーティーが去っていったんだってよ」
は?
俺は、あまりの出来事に少し放心状態になる。だがバッガは、構わず話し始める。
「なんでも、ダンジョンのモンスターに負けてよ?『小手調べだったとはいえ修行が足りない。鍛え直して改めて挑戦する』とか言って足早に立ち去ったんだよ。いや~、あの勇者パーティーが負けたって未だに信じられ・・・どうした?カゲマサさん」
「・・・あ、いや、そうか。勇者パーティー負けたのか。信じられないな」
「ああ、信じられないぜ。だがよ?これで勇者パーティーはもっと強くなるって俺は思うんだよな。あの目は、決意を抱いた目だったぜ」
「・・・・そうかい」
俺は、そう返事しながら内心で叫んだ。
(勇者の強化フラグ立てちまったァァァーーーーーー!!!)
俺は、すぐさま勇者パーティーの位置を特定しようとしたが、既にドミニク辺境伯領を出たらしく、時既に遅しだった。
◆ダンジョン 迷宮研究所 カゲマサside
「・・・ってことがあったから、こちらも強化したい」
「いきなりそんなこと言われてもねぇ」
勇者パーティーの強化フラグを立ててしまった俺は、急いで自陣営強化の為に相談するべく、迷宮研究所のミレンダの元を訪ねていた。
「無茶言ってるのは自覚してる。ただ、俺の頭じゃ良い案が出ないんだよ」
「はあ、まあ良いけどね」
するとミレンダは、俺の目の前に一枚の資料を出す。
「・・人造魔人計画?」
「ああ。アンタのスキル《魔人王》や《アンデッド創造》を見て思い付いた計画さ」
「一日一回、知的生命体を魔人に変えるってやつか?」
「そうさ。他にもアンタが作った死霊魔人も該当される」
「アイツもか」
「アイツもさ。話を戻すがこの計画は、その名の通り、人工的に魔人を作り出すって計画さね」
「・・・まてよ?俺が作ったほうがノーリスクだが?」
「アンタじゃ一日一回、効率が悪いね。いち早く戦力を整えたいんだろう?」
「まあな」
俺は、その言葉に同意する。スキルでやっても良いが、一日一回がネックだからな。
「で?どうやって造るんだ?」
「肉体から造るさ。幸いホムンクルス製造過程でやり方は分かってる」
「肉体から?」
「ああ、そうさ。ホムンクルスをベースにいろいろやる。筋肉の移植とか」
「ほう。しかし移植する筋肉はどうする?
「モンスターの死骸か人間から剥ぎ取るつもり」
ミレンダは、何てこと無いように告げる。だが俺は、責めない。身内以外の人間がどうなろうと知ったことではないのだ。
「分かった。筋肉質な人間がいたら、捕らえて渡すよ」
「ああ、頼むよ。カゲマサさん」
ミレンダは、ウインクしながら言った。美人だから絵になるな。そう考えていると、ドミニク辺境伯領に張っていた警戒網に、多数の反応が出る。俺は、ダンジョン機能の一つである映像を出す。
「・・・まあ。タイミングが良いとは、このことだね」
「ああ。・・・・本当だな」
画面には、なんと凡そ百を越える武装した男達。そして、男達を率いる勇者タダユキの姿があった。
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