勇者、侵入
※「勇者パーティーの戦い」と統合しました。
◆ダンジョン コアルーム カゲマサside
勇者パーティーがダンジョンに侵入したのを確認した俺は、早速ダンジョン内にいる迷宮防衛軍に指令を下す。
『お前らぁぁ!!いよいよ勇者パーティーが侵入してきたぞ!!持てる全てを使って奴等を追い返せ!!』
『『『おおォォォォーーー!!』』』
良し。モンスター達の士気は高いな。萎縮されたら困るし。さて勇者パーティーの様子だが。うわっ、もう第四階層終盤に進んでるしゃないか。仕掛けた罠も容易に掻い潜られている。
まあ、冒険者へのもてなし階層なので、簡単な造りになっているが。それでも速い。見た感じ重戦士が攻撃を引き付け、引き付けた敵を勇者とナハリアが仕留め、神官が回復を行う、こんな感じか。俺の纏めを聞いていたシロも頷いていたので、あっていると思う。
「ちっ、それなりに連携がとれてるな。忌々しい。勇者ならワンマン化しても良いだろうが。一人なら転移罠使って、ダンジョン奥地に転移させ全戦力をもって抹殺出来たものを」
「マスター、そんなことを言っても仕方ありません。ほら、勇者パーティーが第六階層に到達しようとしています」
「やはり、レベル固定のスポーンモンスター程度では話しにならんか。シロよ。第六階層には誰が居る?」
「ギガースの〈狂星〉マキアと四人の〈百魔隊長〉が守護しております」
一瞬俺は、ギガースって何だっけ?と思ってしまった。映像で見る限り巨人の種類で多分トロールから派生進化したのだろう。まあ、それは置いといて。
「足りない。他の〈狂星〉や〈百魔隊長〉を呼び寄せろ。あと、ミレンダが開発したゴーレム部隊を足止めとして放て」
「かしこまりました」
シロは、直ぐに指令を発する。すると、第六階層に百を越すゴーレムが現れた。おそらく空間魔法で転移させたのだろう。大半はクレイゴーレムだが、ストーンゴーレムやアイアンゴーレムも混じっている。
そのゴーレム部隊は、勇者パーティーと遭遇するやいなや、腕からスリングショットを放ったではないか。ゴーレムの武装の中にあったな。スリングショットの雨を浴びた勇者パーティーだが、最初は面食らっていたものの、容易に持ち直しゴーレムを次々と壊していっている。だが、足止めにはなった模様で、第六階層には〈狂星〉三人が揃っていた。そのうちの一人に第八階層のオニメの姿もある。他二人はというと、
名前 マキア
種族 ギガース
職業 階層二十狂星
レベル 30
ランク A
スキル 巨人王・・トロール等の統率力上昇、繁殖力上昇、身体能力超上昇 気配察知 再生 魔力障壁etc.
名前 バロン・ブ
種族 オークキング
職業 階層二十狂星
レベル 7
スキル 豚鬼王・・オーク種の統率力上昇、繁殖力上昇、身体能力上昇 気配察知 再生 魔力障壁etc.
因みにバロン・ブだが、何とカレンのお兄さんでオーク達の部族長だったオークである。俺の傘下に入り、一族の安全を貰ったことで俺に恩返しするべく鍛えたらしい。その成果もあってか、今では〈狂星〉にまで上り詰めた。
「あれ、〈百魔隊長〉達は」
「・・・マスター、彼方を」
「・・・駄目だったか」
目を写した先には、果敢に挑んだにも関わらず、見事に殺された〈百魔隊長〉達が写っていた。
「・・・兵士を使え。奴等が百魔隊長から素材を剥ぎ取る前に〈狂星〉のいる部屋に追いたてろ」
「はっ」
勇者パーティーが、百魔隊長から素材を剥ぎ取ろうとした矢先、大量の兵士を投入。勇者パーティーは、応戦しようにも数が多すぎた為に、一時撤退した。だがいく先には、狂星三人が待っている。俺は、そちらに目を向けると同時に、百魔隊長達の遺体を火葬するように兵士へ告げた。
◆ダンジョン 第六階層 勇者サユリside
アタシ達は、今現在ダンジョンの第六階層に居た。ギルド職員曰く、このダンジョンの第六階層からは未知の領域で、調査に出した冒険者達は皆戻らなかったという。当初アタシ達は、これまでダンジョン攻略を成し遂げてきた自信から、何とかなるだろうと踏んでいたが、その予想は覆された。
誰が予想出来るだろうか。第六階層に入った瞬間、ゴーレムが百体以上襲ってくるなんぞ。しかも、スリングショットといった兵器まで持ち出してきた。幸い、低ランクのゴーレムばかりだったので対処出来たが、その次に出てきたモンスターが厄介だった。出てきたのは、トロールジェネラルを初め、オークジェネラル、ゴブリンキング、オーガジェネラル等の上位種族だったが、これまた厄介。なんと、冷静に連携してきたのだ。サマンサのようにトロールジェネラルが攻撃を押さえ、オークジェネラルとオーガジェネラルが攻撃、ゴブリンキングは回復魔法は使用しないものの、回復ポーションらしきアイテムでトロールジェネラル達を癒していた。
その後、ナハリアが一瞬の隙を突き、ゴブリンキングの頭に矢を命中させ、絶命させたことで連携を崩し、勝利した。だが、冒険者としての癖で素材を剥ぎ取ろうとした瞬間、後ろから大量のモンスターが襲い掛かってきた。アタシ達は、剥ぎ取りを中断せざるを得なくなり逃走した。ここまで言えば分かるだろうか。このダンジョンは第六階層以降、殺意が強すぎる。
「アタシとしてはそう思ったんだが、どうだナハリア?」
「同意するわ。他のダンジョンは、最初は弱いモンスターばかりで進めば進むほど強くなる仕組みだったけど、このダンジョンは違うわね」
「最初から殺しに来てますね。ゴーレム百体に加え、先程出会った四匹のモンスター。目が恐ろしかったですね」
「そうねぇ。殺意が高いのは認めるわ。現に」
重戦士サマンサは、逃げ込んだ部屋に居た三体のモンスターに目を向ける。
「あの三体は別格よ。一体一体が私より強いわ」
「ランクSのモンスターなのか?」
「いいえ。ランクSのモンスターは伝説の存在。そう簡単に出てくる訳が無いもの。ランクAの上位あたりね」
アタシ達が戦力分析をしていると、モンスターの一体が焦れたのか、
「・・・話は終わったか」
「ッ!」
そのモンスターは、身長が十メートル以上ある巨人だった。次に口を開いたのは、オークの上位種族。
「この階層から先は、我等が迷宮防衛軍が守護せし場所」
「・・・貴様等侵入者達の入る場所ではない」
「という訳で、いっちょ死になぁぁ!!」
雌のオーガの咆哮を合図にダンジョン勢とアタシ達は、戦闘を開始した。まず突っ込んできたのは、雌のオーガ。手に持った鉄の金棒を振り回し、サマンサに叩きつける。
「ぐっ!?・・力強っ!」
「ハッハッハ!!テメェ等が弱いんだよ!!」
サマンサは、辛うじて盾を用い防いだものの、余りのパワーに押されてた。勇者サユリは、慌てて加勢すべく剣を振るおうてすると、
「・・・させぬ」
「ッ!?ガハッ!」
いつの間にか移動していた巨人がこん棒を振るい、勇者サユリを後方に吹き飛ばす。
「サユリ!?このォォォ!!」
「ふん。ふぅぅぅーーー!!」
ナハリアが矢を連射するも巨人は、矢を突風の如き息で吹き返した。
「【ロックショット】」
そしてなんと魔法で岩の弾丸を打ち出したではないか。岩の弾丸は、慌てて躱したナハリアの頬を掠り壁に激突。壁に深く突き刺さった。
「・・・ふむ、その程度か?勇者の取り巻き共」
「・・・ッ」
「大丈夫ですかナハリア」
巨人の挑発にナハリアは若干苛ついたが、神官リリエルの回復魔法で何とか平静を保つ。
「あの巨人、強いわね。単純な身体能力なら、サユリを上回るかも」
「ええ。魔法はランクC程度でしたが、それを差し引いても恐ろしい敵です」
そう分析しているてと、巨人の元にオークの上位種族が近付いてきた。
「マキア殿」
「・・・どうした」
「はい。マキア殿には、勇者の相手をお願いしたく」
「・・・わかった」
「お願いします」
そう会話し、マキアと呼ばれた巨人は、勇者サユリの元に向かおうとする。
「待て!!私達が行かせると思って」
「無駄だ」
ナハリアは、巨人に矢を射かけたが、一振の斧によって防がれてしまった。
「ぐっ!」
「邪魔はさせんよ、侵入者。お前達は、この私が止める」
そう言ってオークは、斧を構える。その間、リリエルはあることに気付いた。
(不味いですね。・・・分断されてしまいました)
◆コアルーム カゲマサside
「あ、あれ?あっさりと分断が成功したぞ?どういうことだ?」
俺は、絶賛混乱中であった。狂星三人分では、足止めは難しいと踏んでいたが結果はどうだ。マキアが勇者を吹き飛ばし孤立させ、オニメが重戦士を押さえ、バロンがナハリアと神官を食い止めるといった状況が出来上がっていた。
「本当にどういうことだ!?」
「恐らく勇者パーティーの強さが、想定を下回ったのでは?」
シロが宥めるようにそう言ってくるが、俺にはそうは思えなかった。
「そうか!舐めプだな!?ある程度余裕を持って戦った後、一気に力を出して圧倒する積もりだろう!そして、俺Tueeeeeeってする積もりだろう!?俺の目は誤魔化せんぞ!!」
俺が見てきた物語の主人公だって、そうやって舐めプしてきたのだ。コイツだってやりかねん!!だって勇者は、理不尽の塊なんだから!勇者タダユキ?アイツは除外。
「シロ!暇そうな狂星達を第六階層に送り込め!!全力出す前に早く決着着けるぞ!」
「分かりました。・・杞憂だと思いますけど」
「杞憂な訳が無い!本当に勇者嘗めるなよ!?」
シロは、若干ため息をつきながら狂星達に指令を出す。シロには分かっていた。今の勇者パーティーには、狂星を突破する力はないと。これは、鑑定結果や実際の戦闘データを元にして出した結論だった。現に勇者パーティーは、狂星三人に分断され苦戦している。だが、そんなことは表面上どおりに受け取らない俺はというと。
(ぐぬぬ!まだ余裕を持っているのか!?どれだけ舐めプしたら気が済む!?はっ!まさか、ダメージを蓄積して力に変えるとかいうスキルでもあるのか!?)
未だに勇者への恐怖で頭が一杯だった。
◆第六階層 勇者サユリside
アタシは、何とか立ち上がり巨人と対峙していた。
「・・・勇者サユリ、だな?」
「・・ああ、そうさ!そういうアンタは何だ!?」
「・・・侵入者に名乗る名は無い。死ね」
巨人は、こん棒を構えると、アタシに凄まじいスピードで突進、こん棒をアタシに叩きつけようとする。アタシは、紙一重で躱して跳躍、巨人の目元に手を翳す。
「・・・む?」
「【ライトレーザー】!!」
「・・・ぐぬっ!?」
突然のレーザーに巨人は目を瞑るが、目はレーザーによって容易に貫かれた。その間にアタシは、巨人の足元に移動し、巨人の脚を切断しようとした。だが。
「・・・ぬん!!」
「なっ!?嘘だろ!?」
巨人が咄嗟に後ろ回し蹴りを放ったのだ。アタシは何とか躱したものの、当たってたら大ダメージは免れない。
「目を潰したのに、何で・・・!」
「・・・目を潰した程度で勝った気になるなど、舐められたものだ」
良く見ると、目が元通りになりかけている。
「《再生》スキル持ちか!」
「・・・さあ、死ねぇ。勇者ぁぁ!!」
巨人がいざ襲い掛かろうとしたその時。
「勇者サユリ、撤退です」
「え?」
いきなり現れたリリエル、そしてサマンサとナハリアが纏まったと思ったら。
「スクロール起動。【ディメンションムーヴ】」
アタシ達は、その場から消え去った。
◆第六階層 オニメ、マキア、バロンside
「・・・何をしている、バロン」
勇者パーティーが転移した後、マキアは敵を取り逃がした一因であるバロンを問い詰める。
「申し訳ない。敵の矢を弾いていた矢先、突如神官が上位の光魔法を使用しのですよ。威力も十分で、私が怯んだ隙に、離脱されたという訳でして」
良く見ると、バロンの腹が焼け焦げているのが確認された。
「・・・次からは気を付けろ」
「分かっています」
「そうだそうだ!反省しろよバロン!ハッハッハ!」
「・・・貴様はどうなんだ。オニメ」
そう問われたオニメは、笑顔から途端にバツが悪そうな顔になり、
「え、えっとさ?初めは良い勝負だったんだぜ?次第にアタイが有利になるとアイツ、即座に引きやがったんだよ。せっかく良い勝負だったのにさぁ!」
その話を聞いたマキアとバロンは、若干呆れた雰囲気になっていた。
「な、なんだよ!」
「・・・これは一対一ではない。戦争だ。敵の判断は別におかしくない」
「他の人は、別に戦闘狂ではありませんから」
「な、なんだよそれぇ!!」
「・・・シロさんに報告しにいくぞ」
そして三体は、第六階層から転移した。
あっ、アッサリとしすぎたかな?ま、まあ、今回は様子見で(震え)。
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