ナハリアとの決闘
※「決闘の結末」と統合しました。
◆ダンジョンコアルーム カゲマサside
え?なにこれ?姉さんだと?あの勇者パーティーの女、ナタリアの妹だったのか!?あ、よく見るとエルフ特有の横長い耳が見えてる。
『ナタリア姉さん、確かに私は姉さんより強くなったわ。でも、今の私があるのは姉さんのお陰なのよ?あの時、姉さんが戦う術を教えてくれなかったら私は!』
『ナハリア。何がどう言われようとも、私は行けない』
『ッ!?』
あ、断られて涙目になってやがる。いいぞいいぞ。そのまま折れてくれ。出来れば余所に行ってくれ。
『・・・さい』
『ん?』
『姉さんの主を呼びなさい!私がガツンと言ってやるわ!!』
『・・・主君は多忙な身だ。叶うことはない』
『ちょ、ちょっとナハリア!私達の目的はダンジョンなのよ!?』
『そうですよ。予定を崩すのは良くないことかと』
おっと、重戦士と神官に止められているな。ハッハッハ。ダンジョンには来て欲しくはないが。
『うるさい!貴女達に何がわかるのよ!!』
『ナハリア、落ち着けよ』
『ッ!サユリ・・!』
そこに待ったを掛けたのは、勇者サユリであった。俺としては仲間割れして欲しかったよ。
『なあ、ナタリアさん。アタシは別にアンタを入れることに抵抗はない。でも、アンタの主とやらを一回見せといたほうが良いと思うぜ?そしたら、ナハリアも納得するし』
『しかし、勇者様。主君は多忙な身』
『知ってるさ。少しでいいから、会えないか?』
『・・・確認を取る』
すると、俺のもとに念話が届いた。
『主君、多忙なところすまないが』
『知ってる。勇者サユリの取り巻きが何か言ってるんだろう?』
『・・・すまない、私の妹が』
『いいっていいって。家族間の問題は根深いもんだ。というか、妹いたのね』
『あ、ああ。だがこれは、主君とナハリアの問題だと思うが・・・』
『・・・まあ、細かいことは気にしない』
俺は、いつもの茶色変装セットを纏い【ゲート】で地上に転移、酒場に入った。
◆地上 酒場 勇者サユリside
酒場にそれが入ってきた瞬間、場の空気が変わった。それは、茶色の外套を纏い茶色の仮面を被った男だった。
「俺のもんになんか用か?」
発せられた声は、意外にも若い声だったがナハリアは、ズカズカと男に近づき捲し立てる。
「貴方がナタリア姉さんを買った奴ね?」
「如何にも」
「じゃあ、言うわ。痛い目を見たくなかったら、今すぐナタリア姉さんを解放しなさい!」
「何故だ?」
「はあ?何故ですって?私と姉さんは唯一の肉親!なら、私と姉さんは一緒に居るべきでしょうが!」
「ふむ・・・。これは、貴様が指示したのか?勇者サユリ」
「いんや、ナハリアの独断だ。けど、アタシ自身奴隷制は嫌いだね」
「なるほど・・・・」
アタシがそう答えると、男は再び考え込む。そして口を開いた。
「ふむ、承諾しかねるな。ナタリアはマヤという亜人の護衛として雇ったのだ。また選ぶのが面倒臭い」
「め、面倒臭いですって!?」
「そうだ」
「ふざけないで!どうせ護衛なんて名ばかり、裏では変なことを強制してるんでしょう!?あ、あ〜んなことや、こ〜んなことを!」
その言葉に男は、首を傾げる。
「ナタリア。俺そんなことしたっけ?」
「いや、無いな。主君はそっち方面はヘタレだし」
「おい、今なんと言った」
ぶふっ、そうか。ナタリアの主君はどうやら性に関してはヘタレらしい。意外な一面だ。
「そもそも、俺は嫌がる相手に対してヤること自体が好かないんだ。だからヤらないだけであってだな。強姦は駄目、絶対」
「主君、時々マヤの胸をチラ見してたな。童貞の行動だぞ」
「ふぁっ!?見てたのか!?」
・・・随分と仲良しだな。無理矢理やらされてる感も無い。自然体だ。あれ、ナハリアが震えている?
「・・・くっ、姉さんがあんな自然体に・・・!」
「あー、えっと、落ち着けよナハリア。姉さん取られたのは残念だけど、幸せそうだし、ここは」
「・・・決闘よ!」
「はあ?」
「決闘よ決闘!貴方と私、勝利したほうがナタリア姉さんを手に入れるのよ!」
ふふ、いつもはクールだけど、姉のこととなると凄いなナハリア。さて、男はどうするんだ?
「・・・受けようではないか」
おっ、受けたか。仮にも勇者パーティー何だから、勝てるかもだが、アタシの勘が囁いてるぜ。あの男は、強いってな。
◆冒険者ギルド支部 訓練場 カゲマサside
えー、俺は現在ギルド支部にある冒険者訓練場に来ております。目の前には、お姉さんを取り返すことに躍起になっている勇者パーティーのシスコンエルフちゃんがいます。
「ルールは三つです。訓練場から出るのは厳禁。殺しは無し。制限時間三十分。先に相手を気絶又は降参させたら勝ちです」
「吠え面かかせてあげるわ」
「お手柔らかに」
立会人のギルド職員がルールを読み上げ、俺とシスコンエルフのナハリアは了承する。
「では、双方構えて」
ナハリアの武装は、弓矢と短剣。一応非殺傷用を使っているが、当たったら痛そうだ。俺は、安値で買ったこん棒だけだった。何故?ギルド職員のひそひそ話によれば、勇者パーティーを殺さずにする処置だという。あっち弓矢だぞ?ああ、勇者パーティーを有利にするためか。
「始め!!」
「喰らいなさい!!」
決闘が始まって直ぐにナハリアが矢を射かけてきた。俺は、何とか躱すも、何と後ろに飛んでいった矢が180度方向変換、こちらに飛んでくるではないか。
「残念。私の矢は対象を追尾するスキルを付与してるの。その矢はどこまでも追っていくわ」
ほう、追尾矢か。まあ、どうでもいい。さっさと終わらせたいよ。勇者対策練らなきゃいかんからな。
「【フレイムアロー】」
俺は、火の矢を生み出し、追尾矢を迎撃。矢は燃え屑となり、地に落ちた。
「ふん、次は三ぼ」
「させんわ阿保が」
俺は、【ディメンションムーヴ】を発動させ、瞬時にナハリアの前に転移。そして、こん棒を腹に向かってスイングした。
「ガハッ!?」
ナハリアは、吹き飛ばされながらも何とか態勢を立て直し、着地した。
「貴方・・・っ!」
「さて、シスコンエルフよ。続きだ。さっさと終わらせるぞ」
「・・・上等じゃない!!」
そして、再び戦いが始まった。
さて、あれから数分経ったのだが、シスコンエルフのナハリアはまだ諦めていない。中々厄介な相手だな。何しろ俺が魔法を放っても。
「【フレイムアロー】」
「【ウッドウォール】!!」
突如として樹木で出来た壁を生み出し防御してしまう。力ずくで破ることは出来なくもないが、面倒な上に隙が出来てしまう。それなら【ディメンションムーヴ】で転移したらと思ったが、一回してみると、矢が十数本飛んできた。
「ふむ、どうしたもんか」
「どうしたもんか?なら降参しなさい!」
ナハリアは、十数本の矢を放ちながら叫ぶ。そんなに姉を取り返したいのか。まあ、シスコンだしね。
「降参?嫌だね。何だかんだでナタリアは気に入ってんだ。それにマヤにとって友である存在を渡すわけにはいかんからな」
俺は、こん棒で飛んできた十数本の矢を弾き落とし、魔力強化した身体能力で加速、ナハリアに急接近する。
「な!?このぉ!」
「遅いわぁぁ!!」
魔力強化した身体能力で加速したら普通に意表を突けたので、こん棒を持っていない左腕で頬を殴り付ける。ナハリアは倒れ込むが、何かを俺の脚に巻き付けた。
「は?」
「・・・捕まえたわ」
巻き付けたのは、太い樹木。その太い樹木は、俺の脚を圧し折らんとして、力を増し続けている。地味に痛い!
「チっ、こんなもん火魔法で」
「させない!」
ナハリアは、また俺に矢を放つ。だが、その矢は黒く塗られており、通常の矢とは違うことが見受けられる。俺は、身を曲げ躱そうとしたが、脇腹に掠ってしまった。するとどうだ。
「なっ、魔力が使えない!?」
「そうよ」
ナハリアは、勝利を確信した顔で語る。
「戦ってみた感じ貴方は、魔法を中心に戦う魔導師。肉弾戦が強いのも魔力で肉体を強化しているから。そんな貴方が魔力を封じられたらどうなるかしら?」
ああ、なるほど。確かに俺は、魔法を中心に戦っている。今までもそうだったし。
「効果は数時間。少なくとも今貴方は戦えない。降参を勧めるわ」
「おお、さすが勇者パーティーの一人!」
「凄い観察眼だ」
どうやらギルド職員はナハリアの勝利を確信したようだな。だがなぁ、シスコンエルフよ。お前は勘違いしてる。
「なあ、ナハリア」
「何よ。命乞い?」
「思い込みは危険だぞ?」
魔人としての身体能力で樹木を殴り破壊、そして先程では無いが十分異常な速さで急接近。ナハリアは、慌てて矢を放つもこん棒ではたき落とされた。接近した俺は、こん棒の先端部分をナハリアの鳩尾に叩きつける。ナハリアが悶絶しているうちに右脚で顎を蹴りあげた。ナハリアは倒れ、そのまま動くことはなかった。
「終わったな。審判、判定を。医療班、手当てだ」
「・・・あ!は、はい!〈帝将〉カゲマサの勝利!」
俺は、今回の戦いを振り返って、やはり応用力が足りないと悟った。今までは、只高火力の魔法ばかり撃っていた。単調だったのだ。これからは魔法の応用力にも力を入れよう。そう思ったカゲマサであった。
◆数時間後 夕方 地上宿屋 ナタリアside
あの決闘から数時間が経過した。主君はダンジョンへ帰還し、勇者対策に勤しんでいる。一方で私は、妹のナハリアを看病していた。
「・・・様子はどう?」
「ああ、別状は無い。ありがとう、マヤ」
そこに入ってきたのは、私の友人にして主君の奴隷仲間であり友である牛の獣人マヤ。その手には、水の入った桶とタオルがある。
「う、う~ん」
「ッ!ナハリア、無事か?」
「え?あ、ナタリア姉さん!」
そこでナハリアが目覚めた為、私は決闘の結末を話す。話し終わると、ナハリアは俯きながら口を開く。
「・・・そう、負けたのね」
「・・・ああ。相手は〈帝将〉である主君だ。ナハリアとは地力が違う」
「〈帝将〉ですって?・・・なるほど、ランクSの怪物相手は無理だったってわけか」
そこまで呟いた後、ナハリアは涙を流し泣き出した。というか、勇者達は知らなかったの?
「ぐすっ、ごべんね姉ざん。ずぐえなぐで」
「大丈夫だナハリア。主君は、ああ見えて優しいんだぞ?強制もなしだな」
「・・・ぼんど?」
「本当だ。私は勿論、後ろにいるマヤもだ。前に言っただろう?主君は、性に関してはヘタレだって。無理矢理事に至ったことは無い」
その後何とか誤解は解け、ナハリアはナタリアに謝罪した。ナハリアは、起きた後勇者パーティーの元に帰り、勝手に騒動を起こしたことを謝罪。勇者サユリは笑って許し、むしろ今話題の〈帝将〉の力を見れたと喜んでいた。
◆翌朝 ダンジョン コアルーム カゲマサside
決闘から一夜明け、俺はダンジョン内の大改装を実施していた。第二十四階層に終結していた〈六将〉や〈階層二十狂星〉は、一旦各階層に帰らせ兵士の訓練に勤しんで貰っている。ダンジョン内の大改装は、単純に罠を増やすだけだが、とにかく罠を仕掛けまくった。落とし穴の中に槍がある罠や天井かいきなり落ちて対象を潰す罠。他にも水攻めや火攻め、毒ガス、幻覚、デバフ部屋、転移罠など様々だ。
だが、そこまでやっても俺は安心できない。心の奥底に理不尽の権化足る勇者、というイメージがついて回っているためだ。
「はぁ、全くどうしたものか」
解決策が見つからないまま、いよいよその時が訪れる。
「じゃあ皆、ダンジョン攻略するぞぉぉ!!」
「「「おおーー!!」」」
勇者パーティーがいよいよダンジョンに侵入したのだ。
アッサリと終わってしまったが、これで良いのだろうか?まあ、いいか!
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