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Gボックスと勇者サユリ


◆地上 カゲマサside



 うん。一先ず助けることには成功したな。

 俺が咄嗟に女性と少年を助けたのは、打算ありきである。一つは、村人から感謝される可能性があること。二つにあわよくば勇者を追放することだ。出来るかどうかは分からんが。


「・・・誰ですか?貴方は」

「こっちの質問に答えろ。お前、守るべき人間を殺そうとしたよな?何故だ?」


 俺の上辺だけの質問に勇者タダユキは、コイツは何を言っているんだと言うような顔で話した。


「はあ、その少年は僕のローブを汚したのです。そちらの女性も僕のハーレムに入る名誉を断ったので」

「え?それだけ?」

「そうですが?」


 俺は予てより考えていた答えを口にする。まあ、本音だ。というか、本当にコイツ日本人か?倫理観が違いすぎる。


「服が汚された?洗えばいい。ハーレムに入らなかった?そこらの令嬢でも囲ってろ。貴様の勇者という看板ならいくらでも寄ってくるさ。主に尻軽な女がな」

「誰を囲おうと僕の勝手でしょう?殺しましょうか?」


 お。あっさりと食いついた。魔力を集中させているな。


「言っておきましょう。僕は、聖神様から全属性の魔法が使えるスキルと膨大な魔力量を保有しています。命乞いすれば許しますが?」


 その言葉に取り巻きの令嬢達がそうだそうだと騒ぎ立てる。聖神もこんな奴になるなんて、予想外だったろうな。


「殺ってみろや。糞ガキ」

「はあ、【クリムゾンボンバー】」


 そして灼熱の玉は、至近距離にいた俺に命中し、爆発した。それを見て俺が死んだと思ったのだろう。後ろを向き去っていく勇者タダユキ。勿論事前に魔力障壁を張っていた俺は無傷だ。俺は、あまりにも隙だらけな背中を見るとイタズラ心が擽られ、つい魔法を放った。


「【ハイパーグラビティ】」

「ッ!?がッ!!!???」


 重力魔法で地面に叩きつけられた勇者タダユキ。必死にもがいているが、全く動くことが出来ない。


「はっはっは、ザマァないね勇者。こんな簡単な不意打ちを防げないとは」

「・・・ッ!」

「あ?何睨んでんるんだ?まさか、早く解除しろってか?残念だが、しないよ。先程の態度は目に余る。悪いが転移させてもらおう」

「・・・な、何を」


 俺は、ある場所を思い浮かべる。この帝国で最も賑やかな場所、帝都だ。そして俺は、【ボックス】から一つの箱を取り出す。その箱は無色透明なものだが、中には黒いなにかが蠢いていた。


「勇者、貴様にはここに入ってもらう。ああ、中にいるのは野生のゴ○ブリだ。人間は食わないから安心しろ。身体中を這いずり回るが。また、気持ち悪い臭いがこもっているので吐かないように。【ゲート】」


 俺は、【ゲート】で勇者を通称Gボックスに入れる。その瞬間勇者は、鼻を押さえながらのたうち回った。ゴ○ブリが何匹か潰れ死んだが、構わない。勇者が何かを叫んでいるが、全く聞こえない。それもその筈で、この箱は防音機能と耐久力強化、なんと魔封じの結界が付与されているミレンダの力作だ。何でも、牢屋作りの際に興が乗ったとかで作ったらしい。


「~~~~~~ッ!!~~~~~ッ!!」

「すまんなぁ。何て言ってるか分からん」


 俺は、悪い笑顔で答える。こちらの声は聞こえないが、馬鹿にされたのは分かったのだろう。勇者は、怒りに顔を歪ませるが、関係無いと言わんばかりに俺は、【ゲート】で大量のムカデを投入。勇者は、再びパニックになった。


「ははっ、愉快愉快」

「・・・容赦無いな!俺だったら即気絶だぞ!?」

「バッガか。済まないが、あの二人を孤児院に送ってくれないか?俺は、勇者を帝都に送り返す準備するから」

「おう、任せろ!」


 バッガは、女性と少年を連れて村の孤児院に歩いていった。一方の俺は、悶え苦しむ勇者を見て愉悦に浸りながら、周囲の警戒を行う。勇者を奪還しようとする者がいないか、その確認を。と、思ったのだが、いつの間にか取り巻き達は馬車と共に消えていた。あいつ等見捨てやがった。残っているのは、浮かない顔をしていた一部令嬢と亜人達だけだった。置いてかれたか。

 俺は、一部令嬢達を見ながら、勇者への制裁を楽しんだあと、再び【ゲート】を使い、帝都に送った。帝都のどこに出るかは分からないが、まあ知ったこっちゃない。勇者を送った俺は、一部令嬢達に話しかける。


「おい貴様等、勇者の取り巻きだったよな?何か言うことは?」

「・・・いえ、ございません。端から勇者様が勝つとは考えておりませんでしたから」

「ほお?何故だ」

「あなた様が〈帝将〉だからです。皇祖様から直々に放送がありましたから」


 ・・ナナさんめ。本当に余計なことをしてくれたな。今は、それが役立ったがな。


「話は変わるが、お前らはどうする?働くか?」

「働く、ですか?」

「ああ、酒場が人手不足らしいからな」

「・・・・分かりました」


 えらく従順だが、まあいい。さっさと案内を済ませよう。こうして勇者タダユキの一件は、一旦終結した。勇者タダユキは帝都に送還、取り巻き達は逃亡、一部令嬢達は酒場や孤児院で働くこととなった。

















◆ダンジョンへの道中 勇者サユリside



「糞兄貴め、村の皆さんに迷惑かけてないだろうな」


 そう言うのは、この世界に勇者として召喚された阿川(あがわ)小百合(さゆり)という異世界人だ。あの勇者タダユキの妹である。召喚された彼女は、力に溺れることなく順調に成長していった為、行く先々では戦乙女やら戦う女神やらと呼ばれるようになった。

 そんな彼女には、三人の仲間がいる。


「こら、仮にもお兄さんなんだから、糞なんて行っちゃダメよ?」


 超一流の重戦士(タンク)であり、勇者パーティーのお姉さんのサマンサ・レーシュ。ランクAである。


「そう?アタシはいいと思うけど」


 そう答えたのは、パーティーの耳と目を担うレンジャーで、エルフのナハリア・エルーデン。ランクA。


「あの方は、人を見下す時がありましたから、嫌われるのは自業自得では?」


 そう言うのは、パーティーの回復役で聖堂教会所属の上級神官(アークプリースト)、リリエル・アールクルス。ランクA。


 勇者サユリ、サマンサ、ナハリア、リリエルの四人で勇者パーティーである。


「そうだけどさぁ。あの糞兄貴は、力を手にした途端あれだぜ?この世界の住人には、傍迷惑だろ」

「う~ん、それはそうだけど」

「もういいじゃん。さっさと行こうよ。アタシ、早く行きたいよ。ダンジョン」

「ええ、何でも詳細不明のダンジョンだとか。腕がなります」


 そんな会話の最中、勇者サユリは兄のタダユキのことを考えていた。


(あ~あ、バチ当たらないかな。糞兄貴)


 既に制裁を受けているなど露知らず、勇者パーティーは詳細不明のダンジョンのある村に向かっていった。


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