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勇者タダユキ


◆ダンジョン コアルーム カゲマサside



「なんでッ!?なんでッ!?なんでッ!?なんで今このタイミングッ!?エルザム軍壊滅させて、やっと落ち着けるって時にッ!?巫山戯るなァァァ!」


 俺は、動揺のあまり叫ぶが俺の動揺など知らぬように、二人の人間の会話は続く。


『噂じゃあ、片方は女の子の勇者様なんだろう?名前は、サユリだったか?しかも、帝都の軍人達を纏めて倒したって聞いたぜ?』

『ああ、それに不正をしていた商会を一人でいくつも潰したらしい。もしかしたら、このダンジョンを攻略するつもりなのかもな』

「・・・そんなこと、絶対にさせてたまるか」


 俺は、かつてやってきた勇者を思い出す。仲間を殺したクソッタレなんぞどうでもいいが、あれを基準とするとその二人の勇者は最低ランクAなのだろう。そりゃ、小説なんかでよく主人公がなる代名詞みたいなもんだ。俺Tueeeeeeッ!!だったか?


『だがなぁ。問題は、もう一人の勇者様なんだよなぁ』

『ダダユキだろ?何でも貴族令嬢や商会の娘なんかをを囲って贅沢三昧らしいぞ?最初は大人しかったらしいが』

『ああ、最初は臆病な性格だったって友人が言ってたよ。だけど、自分の力を見ていくうちに増長したんだろうな』

『勇者様だし力はあるだろ。それが悪い方向に行っちまったんかねぇ』


 成る程。もう片方の勇者が問題ありなのか。会いたくないなぁ。絶対争いになるよ。

 俺は、聞き耳を止め、いつもの茶色仮面セットに着替えると、カレンに告げる。


「カレン。俺は、地上に行き勇者の様子を見る。お前は、シロ等〈六将〉に勇者襲来を伝えるんだ。そして迷宮防衛軍の警戒レベルを最大に上げろ」

「はっ、了解しました」


 そして俺は地上に転移した。
















◆地上 酒場 カゲマサside



 地上に転移した俺は、とりあえず酒場に入る。すると、一人の冒険者から声を掛けられた。


「おっ!カゲマサじゃないか!二週間ぶりだな!」

「・・・なんだ。お前かバッガ」

「おう!」


 バッガ。俺がダンジョンに人を呼び込む際、広告塔として利用した冒険者パーティーのリーダーで戦士である。今は、この村の冒険者達の筆頭らしい。因みに俺は別枠だとさ。いじめか?


「で、何のようだ?」

「それがさ?この村に勇者が二人も来るんだよ!俺今からワクワクしてさ!」

「バッガ、興奮しすぎだよ。すみませんカゲマサさん」

「リーダーが迷惑かけた・・・」


 そこに現れたのは、バッガのパーティーの一員で盗賊のダシューと魔導師のムークだ。


「いやいや、勇者は稀有な存在だからな。興奮するのも分かるよ」

「そうだろ!?」

「だが、今は少し忙しいんだ。また今度聞かせてもらうよ」

「おう!またな!」

「バッガ!・・・すみません。あ、それと、〈帝将〉就任おめでとうございます」

「は?」

「エルザム軍壊滅の後、帝国政府からお触れがあったんです。皆知ってますよ?」

「・・チッ、ナナさんめ」


 俺が少しナナさんを恨んでいる隙に、バッガ達は酒場から出ていった。俺は、暫くして再起動すると、カウンターで切り盛りしている牛の獣人マヤに小声で話しかける。


「マヤ、少しいいか?」

「?何でしょうかご主人様」

「お前、今からダンジョンに戻れ」

「まさか、勇者ですか?」

「ああ、万が一お前に危害が加えられたら堪らない。間違いなく俺は暴れる。勇者を惨殺するまで止まらん」

「・・・ッ、分かりました。少々お待ちください」


 マヤは、カウンターから奥の部屋に入り、少しすると出てきた。若干顔が赤いのは気のせいか?


「許可が出ました。カゲマサさんの指示なら仕方無いと」

「すまん。ナタリアも呼べ」

「はい」


 そして合流したナタリアと共にダンジョンに転移、両名の部屋に案内し本やらボードゲームなんかを渡した後、俺は再び地上に転移した。

 転移した俺は、暫く酒場で簡単な小料理を食べながら寛いでいると、外が騒がしくなっていた。勘定を済ませ外に出ると、三台程の馬車が止まっている。すると、馬車の扉が開き次々と美女達が出てきた。スキル《鑑定》を使ったが、誰も彼もランクFかE、最大でもCが限度だった。大体の美女は、尊大な顔だったが、少数の令嬢や亜人達は沈んでいた。

 俺が注目したのは、最後に出てきた若干太っている少年。とにかく《鑑定》してみる。



名前 阿川(あがわ)忠行(ただゆき)

種族 人間

職業 勇者 魔導師

レベル 3

ランク A

スキル 魔法一式 魔力障壁 鑑定 豪遊 暴食etc.



 成る程、純粋な魔法職か。鑑定も持っているから、偽装しとかないと。だがなぁ、後半はなんとかしろよ。

 俺がそんなことを考えていると、勇者の少年はゆっくりと村を見渡し、ため息を吐いた。


「はあ、ナナ様から言われて来てみれば、何の変哲もない村じゃないですか」

「全くですわ、タダユキ様!こんな辺鄙な村なぞ捨て置けば良いのです!」

「タダユキ様は勇者様。選ばれた人間なのですから!」


 周りの貴族令嬢の煽てに気をよくしたのか、微笑を浮かべながら歩き始める。そんな彼の足元にどこからか一人の少年が倒れ込み、彼の来ていたローブに汚れをつけた。


「・・・っ!」

「あ、ご、ごめんなさい」


 少年は、怯えながらも謝罪する。一方の勇者タダユキはというと。


「この、ガキがぁ。僕の、選ばれた人間の僕のローブを汚しやがって!」

「ひっ!」

「お、お待ちください!」


 タダユキが少年に拳を振るおうとしたら、保護者らしき女性が止めに入った。


「勇者様、この子は孤児院で遊んでいて、たまたまあなた様に当たっただけでございます!責任は院長である私にあり」

「・・・へえ」


 タダユキは、現れた女性を見る。女性は、なかなかに良い体付きをしていた。タダユキは、ねっとりとなめ回すように女性を見ると、口を開く。


「君、なかなか良さそうですね。僕のハーレムの一員にしてあげましょう」

「そ、そうすればこの子は」

「?殺しますけど?」

「えっ」

「だって、選ばれた人間である僕の服を汚したんですから当たり前じゃないですか」


 その言葉に周りの貴族令嬢達も同調する。一部令嬢達は、何かを言おうとしたが、言わずに黙ってしまった。


「さて、僕の服を汚した罪です。死ね。【フレイムジャベリン】」

「ひぃ・・・・っ!」

(誰か・・・・誰か助けて!!)


 女性がそう祈り、少年を抱き抱える。女性と少年に魔法が当たるその時だった。


「は?」

「・・・え?」


 魔法は、女性と少年には当たらず、差し出された一つの手に着弾していた。だが、その手は全くの無傷だったが。


「おい、おいおいおい、この村の人間に何手を出してんだ?勇者様ぁ?」


 茶色の仮面に茶色の外套。その姿は、村人達にとって見慣れた姿であり、一番の希望だった。

 英雄カゲマサ、参戦である。


(何でこうなった)


 咄嗟に動いてしまったカゲマサは、一人そう思った。


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