その魔法、太陽が如し
◆セブンス帝国離宮 秘密の庭園 カゲマサside
ナナさんに呼ばれた俺は、ぶちまけたコーンスープを片付けた後、やって来たロロという少年執事に拉致、転移された。そして現在は、ナナさんのもつ庭園にいる。
「良く来たわね、カゲマサ。あなたのダンジョンの噂、我が帝国の帝都セプトにも届いているわよ?何でも、謎に包まれたダンジョンですって」
そう言うのは、俺の取り引き相手であり実質上司のダンジョンマスター、ナナさん。邪神によって七番目に生まれたらしい。
「・・・今回は一体何のようで?」
「うふふ、話が早くて助かるわ。ロロ、お願い」
「はい」
ナナさんは、少年執事のロロさんに指示を出すとロロさんは、一枚の資料を俺に渡す。俺は、その資料を読んでため息を吐いた。
「ああ、そうですか。だから俺ですか。エルザム神聖国との戦争のきっかけを作った俺にこれを」
「うふふ、貴方なら造作もないでしょう?」
「あのですねっ!ご存じかも知れませんが、俺にも守るべきダンジョンがあるんです!また、外国に赴き戦争へ介入しろと言われても!」
「あら、知らないの?」
「何がですか!」
ナナさんは、意外そうな顔で俺にあることを教えた。
「貴方と貴方のダンジョンはもう、一介の軍程度じゃ勝てない強さなのよ?ならば、エルザムの軍くらい余裕じゃなくて?」
「ですが!万が一もある!貴方が召喚した勇者が来たらどうするのです!」
「ああ、そのこと?大丈夫よ。今勇者達は、貴方のダンジョンには来れないわ」
「なんですと?」
「今勇者達は、帝国の北西部にある私のサブダンジョンを攻略中よ。移動を阻害するタイプの罠を沢山置いたから、暫くは来れないわね」
ま、まさか俺が勇者への懸念を示すことを予想し勇者を遠ざけたというのか?
「ああ、それと報酬だけど。貴方に表での権力をあげる。名誉職みたいなものだけど。それと、この世界の地図もあげる」
「世界の地図、ですと?」
「そう、貴方が喉から手が出るほどの一品よ?貴方はなんだかんだ言いながら、この世界を知らないものねぇ」
世界地図。うん、ほしい。俺がこっちに転移して以降、まったく知る機会のなかった、世界。ぐ、糞。知識欲が!はあ。
「・・・・分かりました。引き受けます」
「ありがとね。さて場所はと、ロロ」
「はい」
するとロロさんは、一枚の紙を開く。そこには、恐らく帝国全体の地図があった。帝国の領土は良く分からないが、恐ろしく精密な地図である。
「場所は此処、帝国北東のハーサー荒野。既に海軍以外の帝国軍第四軍が展開を開始しています。では参りましょう」
「え?今から?」
「今からです」
「ちょっ」
俺は、再び転移した。
◆帝国北東ハーサー荒野 第四軍の陣 カゲマサside
ハーサー荒野に転移した俺とロロさんは、暫く荒野を歩いていく。すると、次第に大勢の軍人達が忙しなく動いているのが見えてきた。
「あれですか?」
「はい。参りましょう」
俺とロロさんが陣らしき場所に到着すると、大勢の軍人達がロロさんの前に集まり敬礼する。その中で、一人の指揮官らしき壮年の男が声を掛けた。
「お疲れ様です。ロロ元帥閣下」
「ゼルバ・フラーク大将、軍の展開は?」
「はっ、海軍以外の帝国軍第四軍全二十万、万事順調です。空間魔法を用いた大規模輸送により、速やかに軍を集結、展開できました」
「よろしい」
「ありがとうございます。・・・因みに付かぬことをお聞きしますが・・・彼は?」
ゼルバと呼ばれた男は、俺を不審者を見る目で見ている。というか、コイツ《鑑定》したけどランクA+ってマジかよ!?強者いすぎだろ帝国!
因みに今の俺の服装は、ちゃんと仮面と外套を纏った状態である。
「彼は例の冒険者です。この戦争にて開幕の一撃を放つ役目も持ちます」
「え?聴いてな」
「なるほど、彼が。失礼、私はゼルバ・フラーク。帝国軍第四軍を預かっている。階級は大将だ。宜しく頼む」
「あ、俺はカゲマサという若輩者です。こちらこそよろしくお願いします」
手を差し出されたので、俺は反射的に握手する。
「・・・なるほど。良く鍛え上げているな。魔力も洗練されている。皇祖帝様が目に掛けるのも頷けるかもしれん」
何やら合格といった感じでゼルバ大将が俺の手をニギニギしていると、一人の兵士が飛び込んできた。
「歓談中失礼します!神聖国軍の軍勢を確認!数、約十万!」
「・・・ほう、全戦力の二分の一を引き出してくるとは。エルザムの連中、相当お怒りだな。では、カゲマサ殿。開幕の一撃楽しみにしている」
そう言ってゼルバ大将は、指揮を取りに離れていった。
「では、私達も移動しましょう」
「何処にですか」
「直ぐ着きます」
そして俺とロロさんは、転移した。転移した先は、小山の頂上。眼下には、今まさにハーサー荒野を行軍しているエルザム神聖国軍がいた。
「さ、殺りましょう」
「え?」
「ほら、早く」
「ああ、はいはい。わかりました」
俺は、半ば自棄糞になりながら魔導書を捲る。そしてちょうど良い魔法を見つけた。俺は、ニヤリと笑うと風魔法【フライ】を使って空に舞い上がる。
「ふ、ふふふふふ。もう自棄だ!どうなろうと知らん!【フライ】に使っている魔力以外の魔力すべて!この魔法に使ってやる!」
俺は、集中力して指先に魔力を込める。今まで以上に真剣に込める。込めて、込めて、込めて、込めて、込めて、込めて、込めて。込めに込めて。
「準備完了・・・・」
俺は、十分にたまった魔力を眼下のエルザム神聖国軍に向ける
「よく考えたら、俺の仲間を性奴隷扱いした貴族の故郷なんだよな。何か腹立ってきた」
俺は、怒りを覚えながらも、魔法を崩さず敵軍に向け直す。
「悪いな。エルザムの者共。恨みは、あの三男坊に言ってくれ」
「【核撃爆弾】!」
それを最初にその光を見たのは誰だったか。兵士か。部隊の隊長か。貴族か。誰かは、分からなかった。でも、軍に襲いかかったのは皆共通だった。
今日この日、ハーサー荒野にて一つの小さな太陽が発生した。
コロナの第二波が続いていますね。皆様もお気をつけください。
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