勝利?
何か早めに上げちゃいました。
◆プーリ侯爵軍 陣地跡地 カゲマサside
あれから俺とキラーは、よってたかってジメイをボコボコにした。俺の一撃でジメイの脚の骨が折れたり、キラーが腕に噛みつき肉と骨を同時に引きちぎったりと酷いものだった。だが、手は緩めない。恐らくアンデッド兵団と死霊混合人を殺ったのもコイツなのだろう。ならば、仇討ちしなければならない。
「・・・・・や・・やめ・・・・ッ!」
ジメイが何かをほざいたが関係無いな。俺は、容赦なくジメイを殴る。そして、数分後。
「あ・・・・あが・・・・」
ジメイは、ボロボロどころかズタズタになっていた。腕はあらぬ方向にネジ曲がり、脚は潰れ、血は溢れたりと酷い姿になっていた。喋ることさえままならない。
俺は、ひとまず殴るのを止める。キラーも何とか制止した。そこに死霊魔人が話し掛けてきた。
「主、そいつ、どうする?」
「殺す。生かしておけない」
俺は、そう言ってジメイに振り向いた時、俺の後ろから一本の剣が通り過ぎた。
「ぐぎゃあァァァ!!」
そんな悲鳴の先には、右腕が切り離されたジメイの姿があった。右腕には、何やら注射器のような器具が握られている。俺は、剣の飛んできた方向を見ると、肉体から突き出たひび割れている骨や焼け焦げた肉、片腕が捥げた姿のカイ・ザーバンスが立っていた。
「カ、カイ・・・。お前」
「気に・・・しないで。私のこと・・は、・・・・屍が動き出・・・・・したとし・・てくれ・・・れば。もう・・死んで・・・ますけど」
カイは、辛うじて声を出すが、喋る度に肉がこぼれ落ち骨も崩れ落ちていく。カイにはもう、アンデッド化による偽りの生命が終わることを意味していた。
「もういい。よくやった」
「最後・・・・に一言、良い・・・です・・か?」
「何だ?」
カイは、俺の服を掴みながら言葉を紡ぐ。
「私に・・・・国・・を・・・祖国を・・・救う機会・・・をいただき・・ありがと・・・うござい・・ました」
そう言ってカイは、静かに灰となって崩れ落ちた。
◆プーリ侯爵軍 陣地跡地 ジメイside
(糞ッ!糞糞糞ッ!!!何故だッ!やっと奴等を皆殺しにして、この国を完全に掌握出来たはずなのに!!そうすれば私は、あの方のお役にたてるのにッ!!!)
丁寧な言葉をかなぐり捨てたジメイは、カゲマサ達がカイに意識を向けている隙に地を這いずって、カイが切断した右腕に握られている注射器の元に向かっていた。
(あれだ!あの方からお預かりした、あの秘薬さえあれば!!)
ジメイは、必死に秘薬へと手を伸ばした。
だがジメイの悪あがきは、秘薬を目の前で踏み潰されたことで幕を閉じた。
「あ・・・・」
ジメイは、情けない声を出しながら秘薬を踏み潰した人間を見る。そこには、理性を取り戻したと思われるジ・キラーが立っていた。
「無様だな」
キラーの第一声は、ジメイへの嘲りだった。手には、拾ったであろう槍が握られていた。
「私が散々恨み、殺そうとしていた男の最後がこれとはな」
「ジ・キラーか・・・・復讐者の女が何のようだ?」
「貴様なら、十分にわかるだろう?」
「・・・キラー、取引しないか?」
ジメイは、這いずりながら突然そう言った。
「取引?」
「私を見逃せ。その代わりに妹を創ってやる」
「妹を?」
「そうだ!私の技術を動員すれば、貴様の妹そっくりの生命体を創るなぞ簡単だぞ!誕生した後は、貴様好みに教育すれば貴様の大好きな妹の完成だ!どうだ!」
ジメイは、必死に熱弁する。それに対してキラーは、静かに告げる。
「断る」
「ッ!何故だッ!?まさか、まだ復讐心があるのか!?復讐したとしても、貴様には何も残らんぞ!?ましてや私は、貴様の妹を」
ジメイは、信じられないと叫ぶ。
「確かに復讐を生の目標にしていた私は、生きる意味を無くすだろう。以前の私ならな」
「何だと?」
「今の私は、新たな生きる意味を見つけた」
そう言ってキラーは、カゲマサ達に目を向ける。カゲマサ達は、こちらを見ていたが、カゲマサは静かに頷く。キラーは、答えるように頷き返すと、槍を構える。その時ジメイには、キラーの顔が一瞬復讐者ではなく女の顔に見えてしまった。
「ま、待て」
「待たない」
「わ、私を、殺すな。私は、あの方の」
「もういい。黙れ。そして死ね」
キラーは、ジメイの命乞いなど知ったことかと言わんばかりにジメイの頭を槍で突き立てた。ジメイは、暫くもがいたが、すぐに事切れた。キラーは、ジメイの首を引きちぎりカゲマサの前に持ってくる。
「終わりました。私に復讐の機会を与えてくださったことに改めて感謝を。カゲマサ様、我が愛しの主よ」
「・・・ああ、ご苦労様。よくやったね、キラー」
「はい!」
そしてここに、プーリ侯爵軍の起こした革命戦争は、プーリ侯爵軍の勝利に終わった。
◆秘密の研究室 ????side
かつてジメイが何かを集めていた研究室に二人の男女がいた。男は、長身だがまるで病人のように痩せ細り、片手には杖を握っている。女は、地球でいう黒を基調としたドレスを着た少女であった。
「どうやら、ジメイは死んじゃったようだね」
「だからワタクシは言ったんザマス。僧正に任せるんじゃなく、城塞か騎士に任せるべきだったザマス」
「あははは、面目ない」
少女は、特徴的な語尾で男を非難する。男は、苦笑しながらジメイの集めた黒い液体の貯まった装置を見る。
「でもまあ、ジメイだってここまで集めたんだ。よくやった方だよ」
「む、それはそうザマスね。誉めて上げるザマス」
「じゃあ、持って帰ろう。〈女王〉、頼むよ」
「はいはい、わかったザマス。【ゲート】」
そう言って少女は、空間魔法を発動させ装置を移動させた。
「さっ、後は貴方だけザマス。〈王〉」
「ああ」
そして二人の男女は、研究室から消え去った。
や、やっと終われる・・・。あ、戦後処理があった。
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