静かな怒り
この先、ご都合主義が混じります。ご注意ください!
◆首都ツンドルン ヤーレラ城 カゲマサside
何処かに結界からの出口がないか探し回っていた俺は、唐突に結界の揺らぎを感知した。
(結界が揺らいだ?チャンスだ!!)
俺は、全速力で結界へと走る。その速さは、下手したら音速並の速さである。そして俺は、その速さのまま結界に飛び蹴りをブチかます。すると結界は、派手な音を立てて粉砕された。それを見た俺は、急いで死霊魔人達の居る玉座の間に走って舞い戻る。実は、この時点で魔法は使えるようになっているのだが、テンパッていた俺は気付かなかった。
「おいお前達!今から城を出て転移する!着いてこい!ドラヌス将軍は抱えていけ!」
「むう、主、これは?」
「はあ!?」
若干苛つきながらも、死霊魔人の方を見ると死霊魔人が抱えていた公王ハマルが、何かをわめき散らしていた。
「き、貴様ら!これが終わったら覚悟せよ!全員処刑して」
「うるさいっ!さっさと行くぞ!」
俺は、ハマルを殴り気絶させると、死霊魔人と部下の死霊混合人二体、そして担ぎ上げられたドラヌス将軍と共に、ヤーレラ城の外に脱出した。
「よし!これで魔法が使えるぞ!魔力を察知して・・・・・【ディメンションムーブ】!」
脱出した直後に俺は、死霊魔人達と空間魔法で一番魔力のある人物の所に転移した。
◆プーリ侯爵軍 陣地跡地 ジメイside
時は少し遡る。
魔道師ジメイは、今にも殺されかけていた。原因は言わずもながら、スキル《憤怒王》で理性が吹っ飛んだキラーの手によるものである。氷魔法【アイスロック】を粉砕されて、呆けた隙を付かれたジメイは馬乗りされて剛拳の雨をその身に喰らっていた。一応魔力を使って身体を強化しているが、焼け石に水である。
だが、その状況は直ぐに崩れた。
「悪いが、一応主から何でな。邪魔させてもらうぞ?」
上級人造魔族兵のジェイビスがキラーにタックル。キラーは、吹き飛ばされたが、何とか体勢を立て直しジェイビスを睨む。
「■■■■■■■・・・・・!」
「ふむ、理性を犠牲に身体能力を強化するスキルを使っているのか。《凶化》か《憤怒》が該当するが・・・・まあいい。主よ、無事か?」
「ゴホ・・・ッ!!ゲホッ!ゲホッ!・・・チッ、ええ、無事です。しかし、侮ってましたよ。まさか、ここまで力を付けていたとは」
「主がコイツの村を実験がてら潰したせいだろうが。因果が巡ってきたのだ」
「ふん!因果など知ったことではありません。私はあの方の役に立てれば良いのですよ。それよりジェイビス、カイ・ザーバンスは」
「ああ、始末した」
ジェイビスは、後ろを指差す。そこには、体に剣を突き立てられたカイ・ザーバンスの姿があった。
「ああしてみると、あっさりと死にましたねぇ」
「いや、アンデッドだったからやっと死体に戻った、と言うべき・・・主ッ!!!」
突然ジェイビスは、ジメイを庇うように前に躍り出る。そして、
「【災禍の炎】」
漆黒の炎に包まれてしまった。
「ッ!・・・これはいったい!?」
やがて漆黒の炎が消えると、ジェイビスはある程度形は保っていたが、肉は溶け、骨も溶け、内臓は半分溶けてもう半分は焦げ臭くなり、体からドバドバと落ちていた。
「ジェイビス!おいジェイビス!」
「・・主・・・・・よ、・・に・・・・げ」
そう言うとジェイビスは、膝から崩れ落ち炭化していた体は砕け散った。そして代わりにその場に立ったのは、別の男。茶色の仮面にローブといった、いかにも怪しい風体の男だった。だが、ジメイは別のところに目を向けていた。
(何だ・・・・この山のような魔力はっ!!!???)
ジメイは、一応《魔力視》という魔力を見ることができるスキルを所持している。このスキルを使ってジメイは、目の前の男の魔力量を視たのだ。
結果はジメイの予想を悪い意味で越えてしまった。ジメイは、たとえ凄腕の魔道師がいても自分と同等であるという謎の自信があった。だが現実は違う。単純な魔力量なら、動物で表すとジメイは子ウサギ。茶色の仮面男は、十分に成長した大人のマンモスだ。それぐらいの差があったのだ。
「な、ななななな何者だ!!」
だが、屈するのはプライドに反するのか、ジメイは精一杯声を張り上げ、茶色の仮面男に問うた。
「知らなくていい。お前はここで殺す」
だが、相手は無慈悲にもジメイに殺害宣告。殺意もヒシヒシと伝わってくる。
(・・・・どうすれば良いのだっ!!??)
前方には、茶色の仮面男。後方には、理性が吹っ飛んだキラー。片方は魔力量がおかしく、もう片方は恨みによってジメイ絶対殺すウーマンになっている。先程までの優位は何処へやら。ジメイは、圧倒的劣勢になっていた。
◆プーリ侯爵軍 陣地跡地 カゲマサside
転移した矢先、キラーがタックルされていたので、威力の高そうな【災禍の炎】を打ち込んでおいた。親玉は取れなかったが、手下らしき怪物は無力化したと考えるべきだろう。問題は、目の前で顔を真っ青にしている優男だ。辺りを視る限り、どうやらうちのアンデッド兵団はフィナロムス一行を庇って果てたらしい。山積みになっている灰や骨が良い証拠だ。カイもミリスもロンドも逝った。だが、代償にフィナロムス一行は生き残っている。彼等は自分の指示、フィナロムスを守れという指示に最後まで忠実だった。
(ああ、よくやったよお前達。そしてごめんな、遅れてしまって。仇は取って見せるから)
俺は、任務を果たした彼等に黙祷を行い、仮面ごしにジメイとかいう魔道師を睨んだ。ジメイは、ビクッと震えて後退する。
「■■■■■■■!!!!」
キラーがそれをさせない。理性が吹っ飛んだとはいえ、ジメイへの恨みは消えていないのだ。その目は、しっかりとジメイを捉えている。そして。
「■■■■■■■!!!!」
キラーが我慢できなくなったのか、ジメイに襲い掛かった。
「ッ!!!【アイスウォール】!!」
ジメイは、何とか氷の壁を創り妨害しようとする。だが。
「余所見か。余裕だな。まあいい、死ね。【サンダーランス】!」
そこに俺が魔法で雷の槍を撃ち込む。雷の槍は、見事ジメイに命中。ジメイは、あまりの痛みに悲鳴を上げるが、キラーは急接近して無慈悲にも雷の槍が命中した箇所に拳をめり込ませる。
「~~~~ッ!!!~~~ッ!【フライ】!!」
声にならない悲鳴を上げたジメイは、風魔法【フライ】で緊急退避。肩で息をしながら、声を張り上げる。
「き、貴様等ッ!!!そんな冷徹に私をいたぶって楽しいか!!それでも人間か!!??」
あれ?コイツは、俺が加虐趣味で殺そうとしてると思っているのか?ハッハッハ、馬鹿言っちゃいけない。
俺は、今、猛烈に、怒っているとも。
糞野郎が。
他の方々って、何で上手く書けるのですかね?素直にすごいと思います。作者です。
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