炎の波と決死の壁
自分の稚拙な文章しか書けない自分の文才に呆れてしまう作者です。
そしていつの間にか500000PV越えてました!本当にありがとうございます!
◆ツンドルン正門前 戦場
時は少し遡る。ジメイが死霊混合人を滅ぼした頃、カイ・ザーバンスと人造魔族兵ジェイビスは未だに戦いを続けていた。戦況は、伸骨腕を四本生やして手数を増やしたジェイビスが若干有利になっていた。若干有利になったことで余裕を持ったジェイビスは、カイを見てあることに気付く。
(・・・・この男、血を流していない?)
カイは、伸骨腕四本と腕二本による連続攻撃を必死に捌いている。だが、一部の攻撃がカイに当たり、肉を切り裂いたのだが、血が殆ど流れ出ていないのだ。
(どうなっている?)
当のカイ本人は、傷などお構い無しに動いている。いや、傷自体にも気付いていない。
(ふむ、これではまるでアンデッドみたいではないか。・・・ん?アンデッドだと?)
ジェイビスは、思考して出た己の仮説を証明するためにあることを実践することにした。その時、突如としてジェイビスの後方で炎の壁が出現したではないか。
「ッ!?なんだあれは!」
「この魔力・・・ジメイ殿か。勝負を決めにいくつもりだな」
「勝負だと?・・・ま、まさか!」
カイは、何かを察したのかジェイビスに背を向けて走り出した。カイの背中が遠ざかるなか、ジェイビスは追撃をしなかった。
「この魔法・・・戦術級の火魔法とは。おっと、早く逃げなければ。こっちまで巻き込まれしまう」
ジェイビスは、一旦伸骨腕を背中にしまいこむと、今度は骨を使った羽を生やした。そして、骨の羽で空へ飛び出したジェイビスは、進み始めた炎の壁を見てため息を吐く。
「まったく、あれ程の規模の魔法を軽く発動させるとはな。主の魔力はどうなっているのだ?さて、奴はどうしている?」
ジェイビスは、空から地面を見渡すと、必死にプーリ侯爵軍の本陣に走っているカイを見つけた。道中で人造魔族兵に邪魔されているが、一刀の元に切り殺している。
「ふむ、やはり下級の奴等では無理か。まあ、分かっていたが」
ジェイビスは、カイの動向を確認するとツンドルンの方向へと翔んでいった。
◆平野 プーリ侯爵軍 本陣
プーリ侯爵軍の本陣では、兵士が慌ただしく動き回っていた。その原因は、勿論こちらに向かってくる炎の壁、いや波である。兵士が慌ただしく動く中、プーリ侯爵家当主であるカリウス・プーリは、兵士に指示を飛ばす。
「モタモタするな!急いでフィナロムス殿下を安全な所に逃がすのだ!」
「侯爵様!ご報告が!」
「何だこんな時に!」
「例の炎の波の進行速度が上昇しています!」
「何だと!?」
カリウスは、炎の波の方向を見る。すると、見えた炎の波は明らかに速く進んできている。初めは、亀程度だったが今では、馬が出せる最高速度だ。何時ここに到達するかわからない。
「ぐっ・・・!!フィナロムス殿下の避難はまだか!?」
「それが・・・」
「どうした!!言え!!」
「は、はっ!それが、馬車用の馬が何故か一斉に死んでしまいまして」
「馬が死滅!?他のもか!?」
「はっ!我が軍の馬が一斉に死んでしまったのです!!」
カリウスは、最早絶句するしかない。誰がやったのかは知らない。だが、フィナロムス・フリンの死は、こちら側の敗北である。何とかしなければならないが、思い付かない。
「・・・おお、神よ。聖なる神よ。何故このような仕打ちをなさるのですか。正義は我等にあったはず・・・・」
兵士の一人は、既に諦めたのか膝をつき神に嘆きをこぼしていた。だが、そうしているうちにも炎の波は迫ってくる。カリウスは、炎の波を見て猶予がないと悟ると自分の護衛に声をかける。
「お前たち、今すぐにフィナロムス殿下の元へ行け。フィナロムス殿下の壁となるのだ」
「ッ!?侯爵様は!?」
「私の代わりなどいくらでもいる!今はフィナロムス殿下を生かすことが先決だ!行け!!」
「・・・はっ!!」
カリウスの覚悟を聞いた護衛達は、急いでフィナロムスの元へ向かっていった。カリウスは、ホッと息をつくと向かってくる炎の波に向き直る。
「ふん、恐らく例の魔道師の仕業であろう。だがな。そう簡単に我等の希望は奪わせぬ。このカリウス、フリン公国の未来の為ならば、一瞬の時でも稼いで見せようぞ!!」
そう言ってカリウスは、炎の波の前に立ち塞がる。そして、炎の波に飲み込まれてしまった。灼熱の炎によって、体が焼かれ、炭と化し、砕け散りながらもカリウスの脳裏にあったのは、領地に置いてきた最愛の愛娘であるカナベール・プーリとフィナロムス・フリンが仲良く話している所だった。
(カナベール・・・すまんな。フィナロムス殿下のこと、頼んだぞ)
カリウスは、そう告げながら炎の中で砕け散った。そして、カリウスの覚悟が伝わったのか、只の奇跡か。ほんの一瞬、ほんの一瞬だが、炎の波は動きを止めた。だが、またすぐに動き出した。
◆フィナロムスのテント 本陣最奥
フィナロムスは、現在突如としてやって来たカリウスの護衛達に背負われていた。
「あ、あの!貴方達はカリウスの護衛では無かったのですか!?」
「お許しを!侯爵様より、あなた様の盾となれと命令を受けました!ですので逃げます!」
「待ってください!カリウスは!」
「・・・」
「・・・・そうですか。分かりました。行ってください」
「承知しました!お前ら、行くぞ!」
「「「「おうッ!」」」」
こうしてフィナロムスを背負った護衛達は、走り出した。走りやすいように鎧は捨てている。だが、彼等の頑張りを嘲笑うように、炎の波は更にスピードを上げた。
「駄目だ!追い付かれる!」
「糞ったれが!こうなったら、お前達!殿下に覆い被され!!」
「えっ?」
フィナロムスは、一瞬呆けたようになったが、護衛達が次々にフィナロムスに覆い被さった。
「な、何をしているのです!!」
「大丈夫です殿下。我等がいる限り、あんな炎は殿下に一切触れさせません!」
どんどん迫ってくる熱気に、フィナロムスは思わず目を瞑る。すると、聞いたことの無い声の男女の声と無数の声、そして何処かで聞いたことのある声が聞こえた気がした。
◆平野 上空
「さて、そろそろ全滅したでしょう。行きますよジェイビス」
「了解した」
平野上空にて、炎の波による蹂躙を見ていたジメイは、ジェイビスを共として炎の波が消えた場所に向かう。そして、その場所に着くとジメイは、信じられない光景を目にした。
そこには、山盛りの灰が鎮座していた。そして、何が起きたのか理解出来ていないフィナロムス一行。だが、注目すべきはそこではない。灰の山の前。そこには、三人の人影が存在した。三人とも、皮膚が焼け骨が露出している、片腕が無くなっている者もいる。だが、それでも三人は立っていた。地面には、彼等の証だった仮面らしき物の残骸が落ちている。
その中でジメイは、ある一人を特に注視した。あれは、間違いなく自分が後押しして、公王に始末命令を出させて始末した筈だった男。
「馬鹿な、馬鹿な馬鹿な馬鹿なァァァ!?・・・・何故貴様がいる!カイ・ザーバンスゥゥ!!」
「・・・・・・久し、ぶりかな。黒ロー、ブ君」
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