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「昔、ウチの先祖は権力と金を持っていたの。それで好き放題に生きててね。そうなれば自然と人に恨まれる」
当時は人を呪う職業があった時代。
先祖は呪われるであろうことは、予想していたようです。
そして頭の回転が良かった先祖は、力の強い呪術師を家に迎え入れたそうです。
「ただ迎え入れただけじゃない。―己の娘と結婚させて、血と呪術を入り交じらせた。その結果がこうなのよ」
彼女は自傷気味に笑いました。
「私の中にいるモノは、私がこの世に生まれ落ちた時からいるの。だからムリに外そうとすれば、私もただじゃないだろうけど、外す方も無事では済まない」
そこでスっと目を細め、わたしを見つめてきました。
「でも貴方はそれで良いの?」
確かにアレが中にいるウチは、彼女は滅多なことでは怪我や病気にはならないでしょう。
しかし時を経て、大きくなり過ぎたモノ。
やがては彼女自身をも、飲み込むでしょう。
…そう、始めて彼女を見た時。
あのまま飲み込まれても、おかしくはない状態なのです。
ですが彼女はニコッと笑います。
「別に今のままで、不自由はないわ。私はコレとは相性が良いみたいでね。ある程度は使いこなせるし」
確かに出入りは自由にできるみたいですが…。
「でもそれで得た分だけ、貴方にも何かあるんでしょう?」
「ん~。でも別に私自身があんまり気にしないからねぇ。それに私にはあるから」