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仲介役にはわたしと母が入れば何とかなるでしょうし、心から謝罪の気持ちが娘さん達にあれば、そう難しい話ではなかった……はずだったんです。
そう、『彼女』が帰ってくるまでは…。
「ただいま~。…って、アレ? お客さん?」
居間に一人の女の子が入ってきました。
「おかえり。今、お姉ちゃんのことについて相談してたのよ」
母親が女の子に説明します。
そして次に、わたしに説明してくれました。
「このコは2番目の娘です」
「どーも、はじめまして」
彼女はニコッと人懐こい笑みを向けてきました。
でもわたしは驚愕して、微笑み返すことができませんでした。
何故なら彼女は、喰われて、いたからです。
彼女の全身を覆うように、ぽっかりと開いた口の中。
彼女はまさに、口の中に入っていました。
そしてそのモノは黒い顔、みたいなモノ。
はっきりと言えないのは、口以外、顔のパーツが無いからです。
目も鼻も耳もなし、体も無いんです。
ただ彼女の全身を今にも喰らおうとする黒いモノ、それを背負いつつも微笑んでいる彼女に、わたしはぞっとしてしまいました。
「ん?」
わたしの視線に気付き、彼女は自分の背後を振り返りました。
「…ああ、失礼」
呟くように言うと、片手で自分の肩をパンパンと叩きました。
すると黒きモノは、スゥ…と溶けるように消えてしまいます。
「えっ…?」
呆然と呟くと、彼女は再び笑みを浮かべました。