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「ああ、そりゃそうだね」
すると母はあっさりと肯定しました。
「いくら何でも取り付いた人間一人分だけでは、補えないでしょう。そこは多分、別んとこから調達してくるだろうよ」
「調達ってまさかっ…!」
母はスっと目を細め、低い声で呟きました。
「そのコ、自分の親戚や近しい人達の死期がわかるんだろう?」
「っ!?」
あまりの言葉に、息を飲みます。
「でもっ、そんな…。まさかっ…!」
言葉を失いかけているわたしを、母は冷静な目で見ています。
「―まっ、現代でもそういうのはいるってことさ。念を押すけど、くれぐれも自ら関わることはしなさんな。相談されたら、せいぜい大人しくさせる方法を教えてやればいい」
どこか遠い目をしながら語る母は、過去にも同じようなモノを見たことがあるのでしょう。
そして…結局、何もできなかったんでしょうね。
「でもあのままで良いのかな?」
「良いも何も…。とりあえず、今現在の持ち主は満足しているなら良いんだろう? そのコは覚悟があるようだし、自分の最期も分かりきって、取り付かせているんだ。アタシ達がどうこうしようなんて、はた迷惑な話と思っているだろうよ」
確かにそれは彼女自身から言われたことです。
そう―彼女はとっくに自分の最期を知っているんです。
自分の願いが、あのモノを通して叶えられ続けたとしてもその最期は……
あのモノに、身も心も魂すらも、喰い尽くされる最期を―。
<終わり>




