第九話 王の日常1
「さあ〜て今日の仕事始めるかー」
「ええ、そうですね陛下、早速半年分の仕事やりましょうね」
「多すぎない?俺を殺す気か?大宰相?」
ここ最近仕事せずに、いろんな貴族の元に遊びに行ったり、家族旅行を楽しんできて、帰ってきたらなんか半年分の仕事しろと言われたよ。ひどくね?
「そうです。死ぬ気で頑張ってください」
「わかったから、睨むなよ。じゃあやるとするか」
そう言って、部屋から出て行こうとすると。
「何逃げようとしてるんですか?逃がしませんよ?陛下?」
と言いながら、臣下の身で王である俺の襟首を掴んで引きずって執務室に閉じ込められたのであった。
「ああ〜何か刺激が欲しい〜」
今現在の我が王国は非常に平和であった。
そのため極々平凡な日々が続いているのである。
「そうだ…刺激がないなら…作ればいい!」
こうして国王が動き出したのである。
まず国王がやったことは、様々な方面への根回しである。
何をするにも準備というものが必要であり国王が何かをするのであれば尚更である。
よって国王はこの国の司令塔であり王国政府の中枢を担う6大臣に話の場を設けた。
「急な召集に来てくれてありがとう諸君」
「はあ〜なんでしょうか陛下?また何かしたいんですか?」
「毎度毎度、私達を巻き込まないでくださいよ」
「ええ、怒られるのは私達全員なんですからね?」
国王の号令に集まったのは六省のトップである六大臣は早々に国王への非難を投げかけた。
オルセルシア王国政府は文官の頂点である大宰相をトップとしそのしたに四人の宰相その次に来るのが六大臣である。
この六大臣はそれぞれが大貴族の中でも特に名門である御三家と御三卿と呼ばれる王家、皇家,魔法皇家、教皇家、法皇家の五大君主の次にくる貴族である。
「それで、いったい何がしたいんですか?」
六大臣の中から代表して発言したのは、軍務省の頂点である軍務大臣のグーテア・フォン・ヴェルヘルムである。
「大規模な大会を開こうと思ってね~」
この発言の後に言われた王の説明は六大臣の頭を抱えさせるものだった。まあ、いつものことのため嫌々ながらも働くのが臣下の務めと動き始めるのであった。
「さてと、次は皇帝とかそこらへんに言っておくか~」
そう言って自由人な国王は帝都に向かって転移魔法を使いて瞬間移動したのであった。
帝都についた国王は、直接皇帝のいる城には転移せずに帝都の外の転移した。
国王の実力なら帝都に貼られている強力な結界をすり抜けて城に転移できるのだが、前にそれをやって皇帝に怒られたので、今回は普通に帝都の周囲を囲む城壁の門から帝都に入ることにしたのだ。
門には警備の衛兵が12人ほど立っている。普通に考えて人数が多いのだが、帝都に出入りする人が非常に多いためこの人数が警備をしているのだ。
警備といっても、ただ立っているだけで身分証の提示などは無く怪しいものがいないかを見るだけなので非常に早く帝都に入ることができる。
「久しぶりに門から入るな~」
国王は暢気にそう言いながら門を通ろうとしたが、そうはいかなかった。
「そこの者待って」
「すまないが身分証の提示をしていただけないか?」
衛兵の一人がそう言って国王を呼び留めて別の者が丁寧に身分証の提示を求めた。
通常であれば身分証を求めたり呼び留めたりしないのだが、例外があり、怪しそうな人や明らかに強者といった雰囲気の者は身分証の提示を求められる時があった。
そして国王の今の姿はいかにも放浪者の服装だった。
「自分は怪しいものじゃないよーただの冒険者だよー」
そう言って面倒な身分証の提示をかいくぐろうとしたのだが、そんなものが通用するはずがなく
「ありきたりなことを言わずに早く出してくれ」
と当たり前のことを言われたのである。