第三話 元勇者の建国
神歴13200年
オルセルシア王国王城国王夫妻寝室
久しぶりに昔の夢を見たな。
俺の名前は、アルセス・ガイウス・ペンドラゴン・オルセルシアだ。
昔の日本の名前を捨て今の名前にした。
そして、ここは、オルセルシア王国、俺が建国した国だ。
そう、今の俺は、オルセルシア王国の国王をしている。
今日は、この国オルセルシア王国の建国1万3000年記念の日だ。この国を建国したのは、はるか昔、神代や神話と呼ばれる時に、この国を、建国したのだ。
俺が、この世界アウログランディアに召喚されてちょうど100年と、とても、わかりやすい時に建国したのだ。
そして、建国と同時に日本の名前を含めたものすべてを捨てた。
そして、今いるのは、俺の寝室であり王妃の寝室だ。
まあ国王だからね、王妃はいるからね、うん。
「とりあえず、食堂に行くか」
この寝室から食堂まで急いでも30分以上かかる。
それほどに、この王城は、巨大なのだ。この城は、中心から半径5キロの円状に作られており、最上階までの距離が、地上から500メートルほどあり、地下も10キロの深さまで、あるほどの巨城だ。
「まあ、転移魔法陣を使えば、一瞬だけどね」
そう、この城の各地に転移魔法陣というものがあり、移動は、比較的楽なのである。まあ、こんな巨大な城をいちいち歩いて移動するわけないのである。
俺は、魔法陣に魔力を込めて、食堂に移動したにであった。
王城内食堂
「あぁ!遅いよアルセス!もうみんな食べたんだからね!」
そう、俺に言ってきたのは、王妃の一人であるセーニャだ。
「ああ、悪い悪い。ちょっと懐かしい夢を見てたから遅くなった」
さてと、朝食にするか。
俺は、この国の王なので出される食事は、この国での最上級の食事となる。
俺は、この国を建国した当初から、食事に関する法整備や食の開拓のための予算などに、糸目をつけなかったのだ。
なにせ、食事が美味ければ美味いほど、国民が幸せに生活できるようになり国民の活性化にも繋がるからだ。
俺は、建国当初から国の国家予算の半分を食のために費やした。当時は、国民や貴族達からの反発は酷かったが何とか抑えて、今の豊かな国なっているのである。
「うん、今日も美味しいな。これで仕事の疲れも吹っ飛ぶよ」
「いや、あなた最近仕事してないでしょ」
そう、つっこんできたのは、王妃の一人であるエルフのシファーセリナである。
そして、彼女は、エルフの国の第一王女である。
エルフの国は、オルセルシア王国の隣にある、世界樹の森にある王国で、国名は、エレルガンド王国である。
シファーセリナは、そこの王女として生まれてからすでに、約600年生きているのである。
エルフの基本寿命は、約1000〜1500年と言われるほどの長寿であり、エルフ族全員が美男美女のとても美しい種族なのだ。エルフの特徴は、なんといっても大きく横尖って生えた耳である。
そんなエルフ達と我が国は、同盟を結んでいる仲間である。
「まあまあ、そんな細かいことはいいんだよ。ちゃんと今日は、仕事するから」
基本的に俺は、面倒くさがりなので、仕事がいつも溜まっているのだ、まあだいたい半年分くらいだけどね。
え、そんなに仕事が溜まっていたら国が、動かなくなる?
残念、俺は、ちゃんと仕事をしなくても国が問題ないように、仕事の分配や優秀な人員を、配置しており、俺のする仕事の量を少なくしているし、直ぐに終わるように判子や内容にチェックだけにしてあるのだ!
「ふう、今日も美味しかった。さてと今日の鍛錬をするかな」
国王だからといって、守られるだけではなく、自ら戦う事も大事だと思っているので、毎日の鍛錬は、欠かしていないのだ。
王城内第三駐屯所
そんなわけで、いつも兵達が訓練している駐屯所に来た。俺の手の中には、使い慣らされた木の剣があり、服装も動きやすい服に着替えてきたのだ。
「さてと、いつもどうりやるか」
まず始めるのは、精神統一である。勇者召喚された当初から、続けている習慣であり、自分の心を静め武術に集中する、ルーティンでもあるものだ。
そうして、5分間の精神統一をした後
剣を握り素振りを始める。
最初は、簡単な振り下ろしから始め徐々に動作を入れていく、目の前に剣の達人を想像して、様々な剣技をおこなっていく。
それが終わった後、魔力を使い始める。
全身に魔力を、川の流れのように流していく、右手から左手へ、左手から左足へ、左足から右足へ、全身に満遍なく循環させていくこれを、『魔力流動強化』といって、魔力の扱いに慣れたものでも出来ない、一流の戦士の目指す強化魔法の頂の一つである。
これにより、ステータスを100倍以上に上げることができるのだ。
そうして、再び素振りを始める。
30分後
「ふう、さてと、終わりにするか」
俺はこれを、毎日やっている。この鍛錬をする姿を見せることで、王城の兵士達の士気向上にも繋がるし、メイドなどの頑張りに繋がるのでやっているのだ。
つまり、一石二鳥いや、一石三鳥というわけである。
「よーし、仕事を久しぶりにするとするかな」
俺は、再び気合を入れて執務室に向かうのであった。
数日後
王城会議室
「これより、王国大円卓会議を始める!」
この宰相の宣言により、一年に一度の会議が始まった。
この王国大円卓会議とは、その年の国家方針と予算など、オルセルシア王国のことを話し合う場である。
この場に集まるのは、王国の上位貴族である、伯爵、侯爵、公爵の貴族達、そして王国の重鎮達である。
「……今年の予算は、こんな感じでよろしいでしょうかな?異議のある人は、挙手をして下さい」
「無さそうなので、これで予算を、決定する」
パチパチパチパチ
こうして3時間に及ぶ、予算会議は、終わった。
「続いて、これより今年の王国の方針を、決める話し合いを、始めます。まず、宰相の私からは、去年と同じく、産業の促進を進めていきたいと思っています」
「私もそれに賛成だな」
「私も賛成……」
こうして、どんどんと話し合いは進んでいった。
この国には、悪徳貴族は、いないのである、普通の国であるならば、必ず悪事をする貴族がいるのが一般的なのだが。
しかし、この国にはいない、なぜなら国王である、私の持つ権力には、悪人を王の決定だけで裁く権限があるのだ。
普通の国では独裁者でもなければ、こんなことはできないが、それをできるだけの権力を持っているのだ。
これを使って、どれだけの大物貴族であっても、どれだけ長い歴史を持つ貴族でも、一切の容赦なく裁いったのだ。
それにより、悪に手をそめる貴族が、いなくなったのである。
なにせ3000年以上の歴史を持つ貴族でも、悪に手をそめた者を、処刑し、その家の爵位を剥奪したのだ。
このおかげで、貴族達は、自分たちの代で、貴族家を終わらせたくないので、国王である俺に、逆らう事がなくなり悪い事をしなくなったのである。
「……これで話し合いを、終了します。他に何かある人があれば、挙手して下さい…」
他に意見のある者が、いないようなだな。
この場で謝罪等が、あればまだ許せたのだがなぁ。仕方ないか。
「待て、私から少し話したいことがある」
そう俺が言った瞬間、会議場の空気が重くなった。
貴族達が、急にそわそわし始めた。
「まず話を、聞きたいものがいる、なあ、フロイトス伯爵?」
そう、残念ながらここにいる貴族の中に、私を裏切った者がいるのだ。
「へ、陛下、ど、どうかお許しを」
「ほう?弁明があるなら聞いてやろうじゃないか?」
こいつ、フロイトス伯爵は、このオルセルシア王国を裏切ったのだ。
簡単に言えば、俺に何も言わずに、外の国と接触したのだ。
オルセルシア王国は、基本的に外の国とは、関わっていないのだ、いわゆる鎖国という政策をとっているのである。
基本的にうちの国は、建国してから一度も外の国とは、関わらないようにしていたのだが…
「わ、私は、この国の事を、思って、ですね…」
「それならば、なぜ私に何も言わなかったのだ?一言くらいあってもいいと思うんだがなぁ?」
「へ、陛下!この際言いますが!もう外の国と、関わっていいと思うのです!オルセルシア王国を建国してから1万3000年もの間、外の国と関わっていないのですよ!もっと外の国に関心を持つべきだと、私は、思うのです!」
「意見は、それだけか?もういい衛兵、この愚か者を、連れて行け」
さてと、しょうがない。そろそろ、この王国の歴史を振り返るか。
貴族たちの意識を確かめるためにもね。