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「聞いたか?昨日の雷」
「ん?あぁ、かなり大きかったよなぁ」
異世界人の入学式、アルスト学園からのE組入学式が終わった次の日、魔術学園の校門はいつものように生徒達で溢れており、彼らはそれぞれの話題に花を咲かせる。
「マキちゃんやい。私らのクラスは何処なるの?」
「…聞いてなかったのですか?」
「まぁ、私達は貴方が帰った後に全員でサッカーしてたからね。話なんて聞いてないわ」
「引きこもりの癖に妙なところでアグレッシブですね」
俺は校門前でたまたま出くわした黛心理と一緒に歩いていた。
黒髪は肩まで伸ばし、大きな黒縁眼鏡が特徴の女の子だ。身長も小さく、未来の自分に期待しているのか、体のサイズよりも一回り大きい制服を着ている。
「俺たちのクラスはこの学園の一年E組みですよ。どうやら元々あったE組みと合体させるみたいですね」
「ここでも私達はE組みなのね…」
「そうですね…」
「燃えるわ!」
「そうですね」
一年E組みのクラスは三階の一番奥にある。俺達はそこまで歩いて中に入ると、もう殆どの生徒が集まっていた。社交性の高い寺島運慶や東海道影梅雨、東堂梓などは早くも魔術学園E組みの生徒達と話しているようだ。
「おぉ、マキマキじゃん!おっはー!」
寺島運慶が軽いノリで近づいてくる。
昨日のことがあっても接し方に変化がないのはアルスト学園E組みの馬鹿共だ。逆に魔術学園E組みの生徒達は奇異の目でコチラを見ている。
まぁ、貴族に喧嘩を売った人間に対して普通に接しろっていう方が無理な話だ。
俺は黒板に書かれた席順で自分の席を確認してから座る。窓際の一番後ろの席だ。
椅子に持たれてボーッと外を眺めていると前の席の女子がチラチラこちらを見てくる。
「何か?」
「え?!あ、えっと、初めまして、矢酔と言います」
「えぇ、はじめまして、〝唐沢〟矢酔さん」
「ッ!…やはり、知っていましたか」
「えぇ、ですが安心してください。私が敵対しているのは唐沢陣内の方ですから。あなたには興味もない」
「…そう、ですか」
「えぇ」
「あー、おいおい女の子悲しませちゃ駄目だぜマキちゃん!!」
俺が矢酔さんと話していると金髪赤眼で耳に赤いピアスを掛けた男が近寄ってくる。制服も気崩しており、薄いサングラスを掛けてニヤリと笑う顔が特徴の青沼龍司。アルスト学園一年E組みの生徒だ。
「マキちゃんは興味が無いものに対してはとことん冷たいからなぁ。ごめんなぁ、やっちゃん!」
「や、やっちゃん?!」
「あぁ!君の名前って矢酔ちゃんでしょ?だからやっちゃんだ!」
「は、はぁ」
龍司はニヤリと笑う顔をコチラに向ける。
「マキちゃんって本当に社交性無いよね。その癖無駄に人脈あるし、なんなの?」
「知りませんよ。それよりもうすぐ担当の教師が来ますよ。早く始めましょう」
「お、いいねぇ!」
二人がニヤニヤと笑っているのを横で矢酔さんが首を傾げている。
そして龍司が矢酔さんの方へと顔を向けてニヤリと笑う。
「やっちゃん達も参加しなよ。なぁに、ただの鬼ごっこさ」