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俺は始めからこうなることを想定していた。
俺の復讐を果たすためには、王族を利用する必要がある。しかし、王族貴族は庶民の前には滅多に姿を現すことがない。
それでも一度だけ、王族でも庶民の前に姿を現すことがある。それが魔術学園の入学式だ。
魔術学園は世界に認められた学園だ。この学園の存在は魔法大国とも呼ばれるナステリカ王国も認めている。
そんな学園の校長の地位は、王族よりは下だが、国王にとってはなによりも優先したい存在となっている。
(本当に、この学園に呼ばれたことはラッキーだった)
あとはこの入学式を復讐に利用するだけ。
国王は人格者であり、新しいもの好きの男だ。となれば俺の格好は怪しく、今から話すことも国王からしたら興味を引かれることだろう。
(さて、いくか)
焔木はいつも通りの笑顔を浮かべて国王に視線を向ける。
「えぇ、ですがその前に国王陛下、一つお願いがあるのです」
「ほぉ、言ってみたまえ」
「これから私の話すことは貴族様方にとっては気に食わぬことばかりでしょう。故に、国王陛下から貴族達に私、又は私の関係者を襲わないように命令してほしいのです」
「ふっ、なんだそんなことか。わかった」
「陛下!!騙されてはいけません!」
「なんだ?やましいことでもあるのか?無いだろう?ならばあやつの意見少し聞くまで待っておれ、不敬罪ならその後でもできる」
国王は必ず話を聞く。この長い入学式の最後に回ってきた俺の出番と奇妙な格好、そして今の襲撃犯で見せた的確な対処に国王は絶対興味を示す。
ここまで来たら後は事実を話すだけでいい。
「陛下!崇高なる貴族の我々が馬鹿にされているのですよ!!事実かそうでないかは関係ないのです!!」
会場に響く唐沢陣内の声。誰からも尊敬され、崇拝され、名誉も金も持ち、突出した実力を持つ貴族の声。
あぁ、不愉快だ。
「黙れよ」
会場にいる全員が、まるで静電気を受けたように体が跳ねる。
冷たいナイフのような言葉に会場が沈黙し、喚いていた唐沢陣内も無理矢理口を結ばれる。
「唐沢陣内、あんたは国に歯向かう国賊だ。許してはおけない。なにより、俺があんたを許さない」
俺の口から発せられる不敬罪のオンパレード。しかし、喚く口すら開けさせない。
「あんたが犯した罪は二つ。
一つは、暴力団組織、『曙』との繋がり。
そして、もう一つは━━━━━━━━━━」
俺は横目で紅葉先生に視線を向ける。
彼女は驚いたように口をポカンと開けて俺を見ているが、それに少しの笑みを返してから『クズ野郎』に視線を向ける。
(殺してやるよ唐沢陣内。俺の『幸せ』を汚したテメェを俺は絶対許さねぇ)
「━━━━━━暴力団組織との繋がり、その証拠を見つけた酒巻青葉様を襲撃したことだ!!」