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生きること以上にダルい事はない。
うん、本当にその通りだ。
人生というのは本当に面倒で居心地が悪い。
俺は20年というまだまだ短いと言われるであろう年月を生きてはいるが、本当につまらない。
何度か死んでやろうかと思ったりもしたが、まぁ無理な話だ。痛いのとか無理だし。
今までゲームやら漫画やらを読んできたが、どうにもピンとこない。
結局あれだ。どうでもいいのだ。
生きているから生きているのだ。生きる理由なんてサラサラないが、特に死ぬ理由もない。どこかでぽっくり死んでも構わない。今この瞬間死んでも何も思わない。まぁ、辛い痛いは嫌だけどさ。
親父が言うには家族を持てば、それが変わるらしい。うーん、でもどうなんだろうか。それは生きなくちゃいけない理由なんじゃないだろうか。俺が欲しいのは生きていたいと思える理由だ。
そうなると……幸福になる事だろうか。
曖昧な答えだが、これが一番しっくりくる。
生きている不幸を感じさせないくらいの幸福を味わえば、俺は生きていたいと思えるのではないだろうか。
「あぁ、いいかも」
俺はバイトの帰り、自転車で坂道を疾走しながら、そんなことを考えていた。
「うん、いいじゃん。我ながらにナイスアイデア」
真冬の冷たい風が顔にあたり、鼻頭が痛くなってくるのを我慢する。
幸せになる事。これが今から俺の人生となる。
なんとしてでも俺はこのつまらない人生を幸福色に染める。
灰色の景色に色が生まれた気がした。それはぼんやりと何色かもわからないほど曖昧だが、確かな色だ。
「そのためなら、俺は…」
◆◆◆
「そのためなら、俺は、神だって勇者だって殺してやる」
純白の白衣に身を包み、白い手袋を嵌めている俺は煙草を投げ捨て、足で踏む。
あの時、あの瞬間に起きた出来事、今でも忘れない、忘れるなんてことはできない。夢にも出る勢いだ。
「マキマキ、煙草のポイ捨てダメだからな」
「あぁはいはい、わかりましたよ」
俺は捨てた煙草を拾って水で濡らしたあとに、ゴミ箱へ放り投げる。
「それじゃあ、行きますよ」
「へーい」
俺の後ろに数十人の学生服を来た生徒達がいる。今から入学式だ。学ぶ気があり、実力のあるものならば誰でも入学することのできる『魔術』学園。
学生にとって、恋に部活に勉強を楽しむ花の学園生活の始まりだ。
そして、俺にとっては醜い復讐劇の始まりだ。
「Hey!マキマキ!!
感傷に浸る暇があるなら金をくれ」
「少しは空気を読みなさい。札束詰めて窒息死されたいですか?」