第七話 初陣 vs スライム
前回までのあらすじ
「武器を持てない」というバグのせいで初めての死を経験した社。
彼は町から出て、最初のフィールドへと歩を進める。
【東の草原】
俺たちが最初に来たのは【始まりの町】から東にある草原。
その名もズバリ【東の草原】。
前もって攻略情報を確認してきた梢か言うには、この【東の草原】が最もモンスターのレベルが低く、東西南北の順でモンスターのレベルが上がっていくようだった。
そんなわけで、俺と梢の当面の目的は「東西南北を順々に周り、レベルを上げる」ということになった。
「さて、そんなわけで草原だが。どうかね」
「どうもなにも、一ヶ月前のオープン当初から始めた人はとっくに北やらその先に行ってると思いますし、こんなもんじゃないですか?」
「だよなぁ……」
草原の端にいる俺らからはアメリカの大農園を思わせる広さの草原と、その遥か先ほどに森らしきものが見える。
そして、プレイヤーは数えるほど。俺らをいれても両手の指で間に合いそうな数だ。とっても少ない。
「これなら他のプレイヤーの武器がかすって俺の持病が出てくる、なんてことはなさそうだな」
俺の「武器に触れられない」というバグは、梢には洗いざらい喋った後で口止めをし、今後は他のプレイヤーが見ているようなところでは「持病」とか「病気」という言葉に置き換えることにした。
「ですね。私も離れてた方がいいですか?」
「うーん……一緒にいてもお互いに前衛タイプっぽいしなぁ。一応“バディ”にはなっとくか」
『バディ』とはこのゲームにおけるプレイヤー集団の最小単位だ。
二人組で『バディ』、『バディ』が2つで『パーティー』、『パーティー』が2つ以上集まるときは『ユニオン』という名前になる。
『バディ』や『パーティー』を組むと、仲間のHPとMPを把握できたりするので、一緒にプレイしようと思ったら休憩とかの目安になるだろう。
「はい、じゃあ私からバディ申請送っときますね」
「おう、許可したよ」
「では、お互いに健闘を祈ります!」
「おう、また後で」
梢は俺にペコリとお辞儀をしてから、身長の半分以上はあろうかという無骨な斧を出現させながら走っていった。
せっかく二人でゲームしてるのに別行動ってのは少々寂しい気もするが、お互いにプレースタイルは「パワーでごり押し」だろうし、向こうから別行動を申し出たあたり、彼女も支援系のスキルは取ってないんだろう。
「……さて、俺もやりますか」
取り敢えず、俺は数十メートル離れた所にいるスライムをターゲットに決めた。
こちらが怪我をしないように倒そうと思ったら、気付かれないようにしながら近づいて不意討ちがいいんだろうが……まぁ、今回はスキルの使用感とかを確かめたいから真っ向勝負を仕掛けよう。
と、いうわけでスライムの目の前に躍り出てみた。
近寄ってみると、両腕で抱えられるバランスボールのようなサイズであることが分かる。
緑色のゼリー状で、目や口のような器官は見えないものの、体の中心に色の濃い球体が浮かんでいる。
Encounter!
ピーという笛のような音と共に遭遇を示す音声が流れる。
スライムがこっちに気付いたようだ。
とりあえずは腕試し、スキルを使わずに倒せるかやってみよう。
まずは一発。相手が小さいので斜め上から地面を殴るように拳を振り下ろしてみる。
「ハッ!」
直撃はしたものの、ダメージが吸収されているような感触だ。ひんやりぷにゅとしててなかなか気持ちのいい感触なのだが、スライムのHPバーは1/4ほどしか削れてない。
よし、次はWAを使ってみようか。
初めは【ストライク】から。
「ストォライクゥゥゥ!」
さすがVR、叫んでみたら発動できてた。
エフェクトは、青色の炎のようなものが拳から吹き出すようなもので、先ほどのパンチより速度が上がってるようだ。
スライムに当たった感触も、よりしっかりダメージが通ってる感じがする。HPバーは残り1/4ほどのところまで削れてるようだ。
「まぁ、こいつは適当に沈めて、次のやつで残りのスキルを試してみるか。……っうお!?」
一人言を言っていたら、スライムが変形して体の一部を腕のように伸ばしてきた。
スライムの腕は、完全に油断していた俺の胴体に直撃する。
「痛っ……最初のモンスターだからって油断してたな……」
スライムの攻撃は武器によるものではなかったため、“持病”による追加のダメージはなかったようだ。と、いうかどうも俺の《素手》と同じような原理の攻撃っぽい。
俺のバグへの対応がやけに早いと思ったら、モンスターのモーションを俺に流用しやがったな運営ども!
「っだらぁ!」
なんとか倒れるのを耐えて、スライムに向かって拳を伸ばす。
最初のパンチに比べて、腰が入っておらずヘッポコなパンチになってしまった。
それでも、スライムは少し吹っ飛んでくれ、HPバーは残り数ミリ、数ドットといったところになった。
「使えるか……インファイト!」
WAである【インファイト】を使用すると、スライムと顔が触れあいそうになるほどの場所にテレポートのように移動した。
「スゥゥゥトォォォライクッ!」
その勢いを殺さないように、すかさず【ストライク】を放つ。
初めての戦闘、初めてのダメージと運営へのちょっとした怒り。それらを乗せた拳は彗星のごとく光を放ちながらスライムの核とおぼしき物体を撃ち抜いた。
Enemy Clear!
「レベル上昇 1→2 、SP+3、 ステータス上昇各+5 ボーナスポイント+3」
「武器レベル上昇《素手》1→3 Str/Kep+6、SP+4」
「スキルレベル上昇【ストライク】1→2 ダメージ上昇:Str値の205%」
なんか色々レベルが上がってるみたいだな。
えーと、プレイヤーレベルは俺自身のレベル。ステータスが等しく上がるのに加えて、自分で好きなように振り分けられる「ポイント」ってのもあるのか。
武器レベルの上昇量が大きいのは、きっと「適合武器ポイント」というやつが大量に振られてるからだろう。
スキルレベルは上昇によってダメージが増えていくって感じかな。使用回数によって経験値が貯まっていくということだと思っておこう。
SPが7ポイント貯まってるが、これは後回しでいいかな。今は手持ちのスキルで十分そうだし。
とりあえず、ステータスのボーナスポイントをStrに+2、Speに+1加算してみた。パワーとスピード重視で育てていくことにしよう。
「よし、次は【クラッシュ】の使い心地の確認と、【腕力強化】の有無でどう変わるかのチェックだな。やることはいっぱいだ!」
社レベル2
装備
装備(頭部):深緑の眼鏡
Def+1
装備(胴):カッターシャツ(白)
Res+1
装備(上):スーツ/ジャケット(黒)
Def+1
装備(装飾):ネクタイ(紺)
Res+1
装備(装飾):錨マークのタイピン(金/紺)
Spe+1
装備(手):指貫グローブ(黒)
Str+1 Kep+1
装備(装飾): アルトラのブレスレット
アルトラと話せる。
装備(下):スーツ/スラックス(黒)
Def+1
装備(靴):革靴(黒)
Spe+2
ステータス()内は装備による加算。
Str:62(+1)
Kep:35(+1)
Def:15(+3)
Mag:5
Res:15(+2)
Spe:36(+3)
武器:素手
スキル:
【WA:ストライク】レベル2
武器《素手》の専用スキル。拳に力を込めて相手を撃ち抜け!
Str値の205%のダメージを与える。
【WA:クラッシュ】レベル1
武器《素手》の専用スキル。貴様の手で砕けぬものはない!
Str+Kep値の150%のダメージを、手で掴んでいるものに与える。
【WA:インファイト】
武器《素手》の専用スキル。防御?そんなものは棄てて相手の懐に潜り込め!
相手との距離を0にする。
【AS:腕力強化Ⅰ】レベル1
Str/Kep上昇+10%
【PS:不屈】
行動阻害系のスキル無効。Res上昇+5%