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第五話 スキルとスキル構成

前回のあらすじ


 ゲームが始まったのもつかの間、キャラメイクでは武器を使えないということが判明した。

 しかし、社は運営側の粋な計らいにより、武器を持たずに素手のみでゲームに参加することになる。

 初期装備の選択で黒スーツを選択した社は、ようやくゲーム世界の大地に立つのだった。

 アルトラの元でのキャラメイクを終え、ようやく俺は本格的にゲームの世界に入ることができた。

 透き通るような青い空、周囲を暖かく包み込む日光、白い石畳。目の前に広がる広場には大きな噴水が置かれており、そこから放射状に道が伸びて、それに沿うように赤レンガ造りの建物が立ち並んでいる。

 視界の端、左上の辺りに【始まりの町:中央広場】とある。

 右上には【プレイヤー:ヤシロ】という表記があり、これに意識を集中させると、詳細なステータスや装備などゲームに関するメニューが表示された。どうやら項目にごとに意識を向けるとさらに細かい項目を選べるようになるようだ。

 視界の右下にはHP(ヒットポイント)が緑色、MP(マジックポイント)が青色の線で表され、左下には現在地らしい小さなマップが出ていて、これも意識を集中させるとより広い範囲の地図に変わった。

 大体のゲーム的な視点を確認したところで、そろそろ梢後輩を探すとするか……。


「わーっ! なかなか綺麗なところですね!」 


 後ろから声が聞こえた。聞き覚えのある声だ。

 振り返ると、キャラメルのような色の明るい髪をショートカットにした、八重歯が印象的な女の子。現実世界と違うのは、髪と同じキャラメル色の犬のような耳がついているところと、同色の尻尾がついている点だな。ちなみに、本来耳があるはずの場所には耳がなく、頭についている犬耳が彼女の耳の役割を果たすんだろう。デザイナーの熱意を感じるいい造形だ。

 目を凝らすと【プレイヤー:コズエ】という表示が浮かんできたので、間違いなくこの子が水杓梢だろう。


「えっ、もしかして! いや、もしかしなくても社先輩ですよね!」

「……」

「あれ、なんで黙るんですか? ……もしかして人違い!? 私やっちゃった感じですか?」

「………」

「な、なんとか言ってくださいよぉ……。ごめんなさい、どうやら人違いみたいですね、私は人を探しにいきますので、これで失礼しますね。では!」


 うむ、慌てておるな。このままいじめるのも悪くはないんだが、さすがにそろそろ反応してやるか。

 俺は、俺のもとから去ろうとする梢後輩の腕を掴んだ。


「はうわっ!? え、な、なんですか!?」

「落ち着け、俺だ」

「ほえ? “俺”さんですか?

「違う。てか、お前からもハンドルネームは見えるはずだろ」

「え、あ、あぁ! やっぱり社先輩じゃないですか!」

「あぁ、そうだよ梢後輩」

「なんで黙ってたんですか! 人違いだと思ったじゃないですか……」

「いや、なんとなく」

「もう、ひどいです……」


 彼女の尻尾が下に下がり、犬耳もたれる。普段の感情豊かな様子がさらに強化されていてとても愉快だ。旅のパートナーにするにはコミュニケーションがとりやすくて助かる。

 さすがにこのテンションのままゲームを始めるのは幸先が悪いので、ここらでひとつテンションをあげるようなことを言ってやるか。

 

「その服、似合ってるな」

「本当ですか! えへへ、これに決めるまでひたすら一人ファッションショーをしてましたからね」


 分かりやすく尻尾振ってやがる。単純だ。

 彼女の今の服装は清楚な印象の水色の、袖はなく膝下までのワンピース。腰を一周するようにリボンが通され、スカート部分の裾は下に行くほど広がるような形になっている。その上に肩を覆う桜色のレース生地のケープ。黒色のタイツと、履いているのは茶色の編み上げブーツだな。

 スーツ姿の俺と並ぶと、“お嬢様とSP”と言った感じだろうか。残念ながら、身長は俺が165cm彼女が160台に乗ったばかりというくらいなので、あまり()()()()()()とは言いがたいかもしれないが。


「先輩はスーツですか……」

「あぁ、無難だろ? 」

「ファンタジー世界としては微妙かと」

「ふむ、やっぱりか。まぁ、とりあえずはこのままで、そのうちもっとそれっぽい服に変えるとするか」

「ですね」


 さて、確かキャラメイクが終わった辺りでなにか言われてたよな。確か、スキルブックがどうとか。


「なぁ、梢後輩よ。スキルブックって知ってるか? 」

「はい、知ってますよ! 私、結構事前に調べてからプレイし始めるタイプなので」

「おぉ、優等生タイプだな。俺は説明書とかも一切読まないからな。わかる範囲でいいから簡単に説明してくれないか?」

「いいですよ、じゃあスキルについてお話しますね。このゲームにおけるスキルには主に3つのタイプがあります。1つは武器攻撃のスキルWA(ウェポンアーツ)、2つめは自己強化や相手に不利益な効果を与えるAS(アクティブスキル)、最後はスキルとして所持してるだけで効果を発揮するPS(パッシブスキル)ですね」

「ふむ、スキルはどうやって手に入れるんだ? 」

「基本的にはメニューにあるスキルブックという項目にあるスキルを、レベルアップなどで手に入るSP(スキルポイント)を消費して取得します。スキルブックのスキルは私たちがとる行動によって追加されていくみたいですね」

「うん、とても分かりやすかったよ。ありがとう。で、今の段階で5つスキルを選べるんだっけ? 」

「ですね、キャラメイクの最後に言われましたし」


 僕らは広場のはしに置いてある長椅子に並んで腰掛けることにした。

 それからお互い黙々とスキルを選び始める。俺たちゲーム研究同好会の鉄の掟その1は「集中するときは黙って集中」である。

 さて、選びますか!


――


 で、俺が選んだスキルはこちら


【WA:ストライク】

武器《素手》の専用スキル。拳に力を込めて相手を撃ち抜け!

Str値の200%のダメージを与える。

【WA:クラッシュ】

武器《素手》の専用スキル。貴様の手で砕けぬものはない!

Str+Kep値の150%のダメージを、手で掴んでいるものに与える。

【WA:インファイト】

武器《素手》の専用スキル。防御? そんなものは棄てて相手の懐に潜り込め!

相手との距離を0にする。

【AS:腕力強化Ⅰ】

Str/Kep上昇+10%

【PS:不屈】

行動阻害系のスキル無効。Res上昇+5%


 はい、バリバリ近接格闘タイプですね。

 実際に動いてみなきゃどうなるかはわからないけど、割と理に適ったスキル構成だろう。

 そもそも《素手》スキルは出来立てほやほやで、そんなにスキルが豊富というわけでもないのだ。


「あ、先輩終わりました?」

「うん、終わった。そういや梢は適正武器なんだったんだ?

「えっとですね、上から斧、大砲、ボウガン、楽器、杖でしたね。キャラメイクでは斧を貰ってきました。……って、先輩! よ、呼び捨てになってますよ!」

「斧か。その清楚系犬耳お嬢様的な見た目で斧ブン回すって、なかなかロマン溢れるキャラメイクだな。ん? あぁ、ここはゲーム世界なんだしハンドルネームで呼びあった方が自然かなと思ったんだけど、ダメだった? 」

「ダメじゃないです! じゃ、じゃあ私も先輩のことは社さんって呼んでいいですか!」

「うん、もちろんいいけど?」


 梢の耳と尻尾がピコピコ動いてる。

 気に入ってもらえたならよかったな。


「えへへ……あ、せんp、社さんは武器なんだったんですか?

「あぁ、俺の武器は素手だよ」

「……素手なんてありましたっけ? 」

「あぁ、なんか適正武器がなかったり、そもそも武器の所持が出来ないみたいでな。なんか急遽作ってもらった」

「武器が持てない? ……えーと、じゃあこれ持ってみてもらえますか?


 俺の証言に疑問を持ったのか、梢が何もないところから斧を出して俺に渡してきた。

 そういや「持てない」って聞いただけで、どうなるかなんてやったことないもんな。やってみるか。

 梢が持つ斧に手を伸ばし、柄に触れる。

 

――◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼――


 頭の中に今まで体験したこともないほと大きな音が響いた。

 思わず椅子から転げ落ちる。


「えっ、せ、先輩!? ちょっ、なにしてるんですか! え、ちょっと何これ……先輩のHPどんどん減ってるし! と、取り敢えず手を離してください! !」


 遠くから梢の声が聞こえる。

 あぁ、必死に手を離そうとしてくれてるんだな。

 だけど、俺は頭の中に響く轟音でいっぱいいっぱいで、何を掴んでるとかどこに倒れてるとか分かんないんだよ。


――そうして俺は視界の端で、緑色のHPバーが完全に消滅するのを確認したのだった。



ハンドルネーム:ヤシロレベル1


装備

装備(頭部):深緑(しんりょく)の眼鏡

Def+1

装備(胴):カッターシャツ(白)

Res+1

装備(上):スーツ/ジャケット(黒)

Def+1

装備(装飾):ネクタイ(紺)

Res+1

装備(装飾):錨マークのタイピン(金/紺)

Spe+1

装備(手):指貫グローブ(黒)

Str+1 Kep+1 

装備(装飾): アルトラのブレスレット

アルトラと話せる。

装備(下):スーツ/スラックス(黒)

Def+1

装備(靴):革靴(黒)

Spe+2


ステータス()内は装備による加算。

Str:55(+1)

Kep:30(+1)

Def:10(+3)

Mag:0

Res:10(+2)

Spe:30(+3)


武器:素手

スキル:

【WA:ストライク】レベル1

武器《素手》の専用スキル。拳に力を込めて相手を撃ち抜け!

Str値の200%のダメージを与える。

【WA:クラッシュ】レベル1

武器《素手》の専用スキル。貴様の手で砕けぬものはない!

Str+Kep値の150%のダメージを、手で掴んでいるものに与える。

【WA:インファイト】

武器《素手》の専用スキル。防御?そんなものは棄てて相手の懐に潜り込め!

相手との距離を0にする。

【AS:腕力強化Ⅰ】レベル1

Str/Kep上昇+10%

【PS:不屈】

行動阻害系のスキル無効。Res上昇+5%

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