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第十七話 レッツパーティー

前回のあらすじ


 【西の荒れ地/ダンジョン】に捕らわれ、【看守長:オーククイーン】を倒すためにダンジョン攻略を進める社と梢。

 悲惨な光景に精神的なダメージを負いながらも、奥へと進行していく彼らは、オークに囲まれた二人のプレイヤーを見つけ、救助のために動くことを決めた。

 救出作戦といっても、やることは単純明快。

 目の前に広がるオークの群れを、片っ端から倒していくだけだ。

 とりあえずは俺たち二人で救助対象のプレイヤーを取り囲むオークの輪に穴を開ける。そのあとは殲滅するなり逃げるなり自由にできるだろう。


「とりあえず、このオークの包囲を崩すぞ」

「はい! 了解です!」


 オークたちは俺たちに背を向けている状態なので、後ろから殴ってやれば簡単には倒せそうだ。

 俺は【腕力強化Ⅰ】を唱える。梢もいくつか自己強化系のスキルをかけている。

 俺の場合腕に赤色オーラを纏うだけだが、梢の方は腕や脚、武器そのものにも色とりどりのオーラを纏わせている。オーバーキルする気満々だな。


Encounter!


 アナウンスが鳴ると同時に目の前の一体に【ストライク】をぶつける。

 一体撃破。

 そのまま二体目。次は首を掴んで【クラッシュ】。

 どうやら、このオークの群れ全体で一つの戦闘扱いのようだ。

 レベルアップがないとMPばっかり減っていくんだよな。

 

「アカシア! 私たちもやるぞ」

「そうねキリツちゃん。ただ助けられるなんてキャラじゃないもの」

「いくぞ、【サンダーショット】! 」

「【序曲:マインノーツ】!」


 オークの輪の中からも攻撃音が聞こえてきた。

 向こうもレベルは十分なのか、オークの群れを順調に削っていっている。

 梢の方も時代劇の殺陣のようにバッタバッタとオークを薙ぎ倒しているので、オークを倒した数だと俺が最下位になってしまいそうだ。

 それはいけない。

 頑張らないとな。


 ――


Enemy Clear!

「レベル上昇11→13 、SP+6、 ステータス上昇各+10 ボーナスポイント+6」

「武器レベル上昇《素手》19→21 Str/Kep+6、SP+4」

「スキルレベル上昇【ストライク】10→11 ダメージ上昇:Str値の250%、スキルレベル上昇【クラッシュ】13→14 ダメージ上昇:Str+Kep値の215% 、スキルレベル上昇【腕力強化Ⅰ】8→9、効果上昇:Str/Kep上昇+50%」


 

 戦闘終了。

 二桁はオークを倒した気がする。


「ふぅ……お疲れ様です、社さん」

「うん、おつかれ」


 現在俺たちがいるのは、【西の荒れ地/ダンジョン/セーフポイント】という名前の場所。

 戦闘が終わった後、助けたプレイヤー二人が「腰を落ち着けて話せる場所があるから」と連れてきてくれた場所だった。

 【西の荒れ地/ダンジョン】全体に感じられたリアルな緊張感との一切ない落ち着ける空間は、ここがゲームの中だということを思い出させてくれた。


「あなたたち、さっきはありがとね」

「うむ、例を言うぞ」


 落ち着いたところで二人のプレイヤーが声をかけてきた。

 二人はどちらも背が高く、おそらく170cmは越えている。

 多分どちらも俺たちよりは年上だな。場所の移動を提案したり、一息ついてから話しかけてきたり、さりげない気配りが大人っぽい。


「いえいえ」

「いえいえ」


 うーむ、俺たちの方に大人と接するスキルがないため、返事が素っ気なくなってしまうな。

 幸いにも向こうはこちらの心情を推し量ってくれたのか、無理に会話を続けず、自己紹介を始めてくれた。


「アタシはアカシア。武器は《楽器》を使っているわ」

「私はキリツ。武器は《クロスボウ》を使っている」


 アカシアさんは、青色シャツの上に胸と胴体を覆う銀色のプレート、その上に赤色マントを羽織っている。そして、手には黒に金色のラインが入ったボタン・アコーディオンを持っていた。クリーム色の髪を赤色レースリボンでハーフアップに留めた、優しげな美人さんという感じの人。

 キリツさんは巫女さんのような服装だが袴は藤色。手には90cmほどの黒いクロスボウ。長いネイビーの髪をポニーテールのように赤い紐で縛っている。しなやかな強さを感じさせる女性だ。


「えっと、私は梢っていいます。武器はこの斧ですね」

「俺は社といいます。武器はまぁ……あはは」


 俺たちも続いて自己紹介をする。

 が、俺の方は下手な誤魔化しのようになってしまった。「武器に触れられない」という持病(バグ)の誤魔化し方は考えてたが、武器のことについては考えていなかったのだ。

 

「ふむ……訳アリか」


 キリツさんが俺の顔をまっすぐ見ながら聞いてきた。

 思わず目をそらしてしまう。

 

「えぇ、まぁ」

「そうかそうか。それなら仕方ないな、深くは聞くまい」

「いいんですか?」

「あぁ、言いたくないようなことなんだろう? それならば聞くわけにはいかないよ」

「……ありがとうございます」


 普通にいい人だった。

 竹を割ったような性格とでも言うのだろうか。


「えーと、そっちの梢ちゃん……だっけ? あなたも訳アリだったりするのかしら」


 アカシアさんが梢に問いかける。

 こちらはまっすぐな目というよりは、優しげな視線だった。

 

「えっ……私は……なにもないですよ?」

「……そっか、ごめんなさい。つい勘繰っちゃったわ」

「い、いえ、大丈夫です……」


 一方の梢は俯きながら応えている。

 まぁ、優しい視線だからといって緊張感がなくなるわけでもないもんな。

 耳と尻尾が伏せているところを見ると、「不安」といったところだろうか。


「じゃあ、そっちは男の子と、それから女の子の二人組(バディ)ということでいいのかしら? 他に仲間とかいたりする?」

「いえ、こっちは俺と社の二人だけです」

「あらそう! なら、こっちと同じね。アタシたちも()()()二人組だし」

「えっと……、やっぱりアカシアさん、男性でしたか」

「『やっぱり』という言い方が少し気になるけど……。まぁそうよ私は男。キャラメイクの段階でも男性の体を選択してるわ。……あ、別にそんなに深い事情があるってわけでもないのよ? ただ、私は男のままでこういう喋り方がしたいだけなんだから」

「なるほど」

「あら、案外普通の反応するのね。結構引いちゃう人多いのに」

「いやぁ、正直言って俺には関係ないですからね」

「……いい答えね。その通りだと思うわ」


 今の応え方が素直に受け入れられたのは珍しかったりする。

 懐が深いというか、人生経験に差があるように感じられるな。


「話がズレちゃったわね。話を戻すわ。……ねぇ、あなたたち私たちと四人組(パーティー)組まない?」

「パーティーですか」

「えぇ、嫌かしら?」

「いや、そういうわけではないんですけど……。ただ、どうしてそうなったのかなぁって」

「ふむ、動機が知りたいと」

「ですね。一応その、初対面ですし」

「なるほど。……本音と建前があるけど、どっち聞きたい?」


 そんな堂々と建前って言ったな、この人……。

 肝がすわってるのか、はたまた俺たちを子どもだと舐めているのか。

 ……これはさすがに失礼だな。


「建前から聞かせてください」

「いいわよ。建前としては、君たちは観るからに前衛二人、アタシたちはどちらかと言えば後衛寄り。パーティー組めばバランスが取れていいかなって思ったの。win-winの関係じゃない。ほら、あなたたちも『看守長』倒しに行くんでしょ?」


 確かに俺たちはどちらも前衛タイプなので、後方からクロスボウの支援があればやりやすいだろうし、楽器のように見るからにトリッキーな戦い方をする武器を使用できる人と組めば戦略の幅は広がりそうだ。


「まぁ、そうですね。……それで、本音は?」

「あなたたちと友達になりたいの」

「……本音と建前が逆じゃないですか」

「いや、合ってるわ」

「なるほど……。ちょっと相談してもいいですか?」

「もちろん」


 壁に寄りかかって暇そうにしている梢の隣に立つ。


「パーティーの打診が出た。どうする?」

「えーと……いいんじゃないですか?」

「ふむ、異論はないのか?」

「……ちょっと怖いですけど。まぁ、社さんが間に入ってくれますよね?」

「それはもちろん」

「なら大丈夫です!」

「うん、じゃあパーティーの申請してくるよ」


 まぁ、梢はちょっと人見知りだからな。

 

「話はまとまったかしら?」

「えぇ」

「それで、どうかしら。私たちとパーティー組まない?」

「はい、お願いします」

「本当? それじゃあ申請送るわね」

「……ん。はい、申請許可できました」

「ありがとね。これからよろしく!」

「えぇ、よろしくお願いします」


 まさかここにきて初対面の人とパーティーを組むことになるとはな……。

 悪い人ではなさそうなんだが。


「さて、折角パーティーに参加してもらったところ悪いんだが、私とアカシアはそろそろログアウトしないといけないんだ」

「え、そうなんですか?」


 てっきりこのまま進むのかと思っていたのだが違うのか。


「いいの? キリツちゃん」

「あぁ、あっちの梢君がさっきから時間を気にしてるっぽいからな」

「……なるほど、ありがと」


 アカシアさんとキリツさんが小声で話している。

 割と聞こえてきているが、これは聞こえないフリが正解かな。


「えっと、次はいつ来れますか?」

「私たちはいつでもいいんだが……そうだな、時間が長めにとれるのは週末かな。君たちも平日は学校だろ?」

「やっぱり学生だってのはわかりますか。そうですね、それじゃあ週末……土曜日で大丈夫ですか?」

「あぁ、構わない。時間はどうしようか、何時がいいとかあるかな?」

「俺たちは朝の8時から9時あたりから始めると思います」

「ふむ、では朝の9時にここに集合でどうかな?」

「分かりました。では、それで」

「うん、それでは楽しみにしているぞ」


 そういって、キリツさんとアカシアさんはログアウトしていった。

 手際がいいな。

 

「社さん、どうなりました?」

「次は来週の土曜日、時間は朝の9時に、この場所に集合だな」

「なるほど、了解しました。……えーと、これからどうします? パーティー組んだ以上、勝手に進むわけにはいきませんよね?」

「あぁ、平日は今まで通り、ゲーム研究同好会としてVR以外のゲームをしようと思ってるんだが、どうだろう」

「いいですね! そうしましょう!」


 さっきまでは壁にもたれかかって暇そうにしていた梢だが、ちょっとテンションが回復したみたいだな。

 視界の端に表示されてる時刻を見る。

 現在時刻は15時過ぎ。

 今日は朝8時からゲームをしてるから、そろそろ8時間かな。


「梢、もうそろそろ時間だけどどうする?」

「うーん……そろそろログアウトしましょうか」

「うん、そうだな」

「戻ったらいっしょにおやつでも食べましょう!」

「おぉ、楽しみにしておくよ」


 ほとんどゲームの中は体を動かさないのに、起きたら間食というのは少々不健康だが……まぁ、いいか。


「それじゃあ、梢。おやすみなさい」

「はい、社さん。おやすみなさい」


 そうして、俺たちはログアウトした。

(ヤシロ)レベル13


装備

装備(頭部):深緑(しんりょく)の眼鏡

Def+1

装備(胴):カッターシャツ(白)

Res+1

装備(上):スーツ/ジャケット(黒)

Def+1

装備(装飾):ネクタイ(紺)

Res+1

装備(装飾):錨マークのタイピン(金/紺)

Spe+1

装備(手):指貫グローブ(黒)

Str+1 Kep+1 

装備(装飾): アルトラのブレスレット

ナビゲーションキャラクター アルトラと話せる。

装備(下):スーツ/スラックス(黒)

Def+1

装備(靴):革靴(黒)

Spe+2


ステータス()内は装備による加算。

Str:139(+1)

Kep:145(+1)

Def:70(+3)

Mag:60

Res:70 (+2)

Spe:90(+3)


武器:素手 レベル21 Str/Kep +60

スキル:

【WA:ストライク】レベル11

武器《素手》の専用スキル。拳に力を込めて相手を撃ち抜け!

Str値の250%のダメージを与える。

【WA:クラッシュ】レベル14

武器《素手》の専用スキル。貴様の手で砕けぬものはない!

Str+Kep値の215%のダメージを、手で掴んでいるものに与える。

【WA:インファイト】

武器《素手》の専用スキル。防御?そんなものは棄てて相手の懐に潜り込め!

相手との距離を0にする。

【AS:腕力強化】レベル9

Str/Kep上昇+50%

【AS:リフト&キャリー】

自身の限界まで力を使いきったからこそ得られた技術(スキル)

人や物、モンスターなどを持ち上げ、運ぶ際に必要となるStr/Kep値を半分にできる。

【PS:不屈】

行動阻害系のスキル無効。Res上昇+5%


SP:75

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