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第十六話 監獄の奥、新たな出会い

前回のあらすじ


 【西の荒れ地/ダンジョン】に入った社と梢。

 オークが人間を牢へ入れ支配しているという光景に驚きながらも先へ進む彼らを待ち構えていたのは、「監獄踏破」というクエストだった。

 目を背けたくなるような状況のなか、監獄の奥へと進んでいく。

Encounter!


「社さん! またオークですよっ!」

「あぁもう……梢は右の二体、俺は左をやる」

「はい!」


 曲がり角を曲がるとオークが四体現れた。

 辺りをキョロキョロしながら歩いているので、俺たちはすぐに見つかる。

 俺たちに気付いたオークは、まず援軍を呼びに行くような動作を取るので、その隙に倒してしまう。

 オーク自体はそれほど強くはない。たとえ一度に四体を一度に相手をしたところで楽に倒せる相手であることには違いはなかった。

 だが、「強くない」ということは「得られる経験値も少ない」ということであり、ひいてはレベルアップが起きにくいということだ。

 俺たちプレイヤーはレベルアップ毎にHPが回復するようになっているので、レベルアップができないということは回復できないということ。

 つまりは回復手段に乏しい俺と梢は、無尽蔵に湧き続けるオークに対して消耗戦を強いられているのだ。


Enemy Clear!


 今回もレベルアップのアナウンスはなし。

 【西の荒れ地/ダンジョン】に入ってからレベルは3つ上がり、武器レベルやスキルレベルもちょこちょこ上がってはいるが、その間隔もだんだん長くなっていった。


「まだいけるか?」

「余裕です。……数値上では」


 入り組んだ通路、頻繁に現れる四体一組のオークの集団。そしてなにより、耳を塞いでも聞こえてくる呻き声や叫び声が精神的な疲労感を蓄積させていく。

 また、奥に進めば進むほど囚われている人間の扱いが悪くなっているようで、次第に血液のような鉄の匂いや何か酸っぱい匂いが鼻につくようになり始めた。


「社さん……壁についてるこの赤い染みって……」

「……あまり深く考えない方がいいよ。ただの背景ただの背景」

「……はい」


 運営に文句を言ってやりたいくらいだよ。

 一応ゲーム自体のレーティングは「C」、つまりは15歳以上となっているはずだが、それにしたってこれは……。

 とりあえず、梢の気を紛らわせるような話題でもふるか。


「な、なぁ。さっきからやけにオークの集団が増えてきたと思わないか?」

「そうですね……。しきりにキョロキョロしてますし、何か探し物でもしてるんじゃないですか?」

「……探し物、ねぇ」

「どうかしましたか?」

「いや、探し物ならバラけて探すんじゃないかなぁとか思って」

「ん? あぁ、そうかもですね。じゃあ、その探し物は一人では運べないほど大きなものとか重いものだったり?」

「それならすぐ見つかりそうなもんだけど……」


 こうやって頭を働かせている間は余計なことを考えずにすむからいいな。

 聴こえてくる叫び声なんかもお互いの声で意識の外へ追い出せるし、集中すべき話題があれば壁に張り付いた血痕のようなものも目に入りにくい。

 匂いだけは……まぁ、そのうち鼻が慣れてくるだろう。

 

「もしかして、私たちが侵入してるのバレちゃったりしてますかね? 敵がいるってことが分かってたら、グループ組むのも正しそうですし」

「うーん……グループ組んでる理由としてはありそうだけど、それはないんじゃないか? 見つかってたら、こんな“遭遇戦”みたいな反応はされないだろ。もっと位置とか特定されてそうなもんだし」

「地の利は向こうにありますもんね」


 あるとすれば俺たち以外のプレイヤーか?

 俺たちよりも先にこのダンジョンへ入り込んだプレイヤーが見つかって、それを探すためにオークが巡回しているとすれば辻褄は合うのかもしれない。

 梢に話したら何かもうちょっと踏み込んだ議論ができるかな。


「なぁ、梢」 

「……社さん、ストップです」


 話しかけた途端に手で制された。

 曲がり角を曲がろうとしていたところなので、思わずつんのめりそうになる。

 横を見ると、梢の耳が頭の上でピンと立ち、少し前方に傾いているのが見えた。キャラメル色の尻尾も立っており、今抱いている感情が“警戒”であることを示している。

 

「何体かすごい勢いで走ってきてます」


 梢の頭についている犬耳は装備アイテムの一種のようだが、聴覚を強化する効果でもあるのだろうか。

 俺にはまったく感じられないものの、ハッキリとした口調で梢が注意を促した。

 それから数秒後、ドタドタという足音が俺にも聴こえてきた。

 これはまたいつもの遭遇戦か……。


「って、あれ?」

「……通りすぎて行きましたね」


 オークたちは俺たちをちらりとも見ず、まっすぐ駆け抜けていった。

 

「囚人の反乱?」

「他のプレイヤーが見つかった?」

「そっちだったらどうします?」

「もちろん、鉄の掟その5の発動だな」


 ゲーム研究同好会鉄の掟その5、「ゲームの中では英雄(ヒーロー)であれ」。

 ゲームのジャンルは様々であるが、どのジャンルでも「己が“正しい”と思う選択をしろ」というのがこの掟の意味だ。

 つまり、俺たちは他のプレイヤーが危機に陥っている可能性が高いと思われる場合では、それを助けに行かないといけないことになっているわけだ。


「さっきのオークを追うぞ」

「“英雄(ヒーロー)”ですもんね……。了解です!」


 俺たちはオークが向かった先へと向かうことにした。

 そして、その目的地は想像以上に近くであった。


「ちょっと! アタシ達みたいなか弱い乙女に対して大勢ってのは卑怯じゃない!」

「まったくだ……。こういうときはあれか、『くっ……殺せ!』とでも言えばいいのかな?」

「いやね、キリツちゃん? その台詞を言っちゃうと、アタシたちが勝つ未来がなくなるのよ?」

「何を言ってるんだ、アカシアよ。オークだぞ? 周囲をオークに囲まれた状況でいう台詞などこれの他にあるまい!」

「またそんな……何に感化されたんだか……」

「あぁ、それはだな!」

「いや、いいわ……黙っててちょうだい」

「む、そうか……」

「……で、オークの輪の向こう側からアタシたちを見ているメガネと犬耳のお二人は、いつになったら助けてくれるのかしら?」

「そうだ。 何のためにこんな無駄話をしてると思ってるんだ。君らが話しかけてくるのを待ってたんだぞ!」


 オークの群れの中心にいたのは、なかなかキャラの濃い二人だった。

 気付いていたのかよ。


「えーと、社さん。いきますか」

「なんかやる気が削がれた気がするんだけどな……」


 いざ救出作戦、開始。

(ヤシロ)レベル11


装備

装備(頭部):深緑(しんりょく)の眼鏡

Def+1

装備(胴):カッターシャツ(白)

Res+1

装備(上):スーツ/ジャケット(黒)

Def+1

装備(装飾):ネクタイ(紺)

Res+1

装備(装飾):錨マークのタイピン(金/紺)

Spe+1

装備(手):指貫グローブ(黒)

Str+1 Kep+1 

装備(装飾): アルトラのブレスレット

ナビゲーションキャラクター アルトラと話せる。

装備(下):スーツ/スラックス(黒)

Def+1

装備(靴):革靴(黒)

Spe+2

ステータス()内は装備による加算。

Str:120(+1)

Kep:80(+1)

Def:60(+3)

Mag:50

Res:60 (+2)

Spe:90(+3)


武器:素手 レベル19 Str/Kep +54

スキル:

【WA:ストライク】レベル10

武器《素手》の専用スキル。拳に力を込めて相手を撃ち抜け!

Str値の245%のダメージを与える。

【WA:クラッシュ】レベル13

武器《素手》の専用スキル。貴様の手で砕けぬものはない!

Str+Kep値の210%のダメージを、手で掴んでいるものに与える。

【WA:インファイト】

武器《素手》の専用スキル。防御?そんなものは棄てて相手の懐に潜り込め!

相手との距離を0にする。

【AS:腕力強化Ⅰ】レベル8

Str/Kep上昇+45%

【AS:リフト&キャリー】

自身の限界まで力を使いきったからこそ得られた技術(スキル)

人や物、モンスターなどを持ち上げ、運ぶ際に必要となるStr/Kep値を半分にできる。

【PS:不屈】

行動阻害系のスキル無効。Res上昇+5%



SP:65

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