閑話 ゲーム研究部の人々
このパートでは、主人公である社が知り得ない情報や感情が多分に含まれています。
「主人公視点でだけ読みたい」あるいは「主人公が知らないことを知ってると頭が混乱する」という方はご覧にならないよう。
「よし、反省会するぞ」
ゲームの世界から戻ってすぐ、社先輩は私に向かってこう言いました。
私、水杓梢としましてはさっきまでの余韻を味わっていたかったのですがね。先輩はどうも「ゲーム研究同好会鉄の掟」とやら(特にその4「ゲームと現実を陸続きで考えるなかれ」)を破るのに抵抗があるみたいなので残念です。
せっかくだから、ゲーム研究同好会のお話をしましょうか。
ゲーム研究同好会(私が入学した時はゲーム研究部でしたけど)は社先輩のさらに先輩、今は引退なさった三年生の方々が作ったそうです。
私は4月から7月までの3ヶ月間しか一緒に活動したことなかったので全員のパーソナリティーを把握できたわけじゃないんですけど、それでも「仲良さそうなグループだなぁ」と感じさせるメンバーでした。憧れますよね、仲良しグループ。三年生は全員女性だったんですけど、よくまぁ、あんなに心の底から楽しんでるみたいな雰囲気を出せるなぁと。あとで聞くと全員幼馴染みだったそうですね、ギクシャクしたり駆け引きするような段階はとっくに終わってたわけだ。
私が入った時は、三年生が四人、二年生が一人(社先輩ですね)、そして一年生が一人(私です)という構成でした。
どうやら誰でも入れる部活ではなかったようで、三年生のお眼鏡に適う人物じゃなきゃ駄目だったそうです。
三年生の先輩方は皆さんかなりの美人さんだったので、入部希望者とか結構多かったらしいですけど。それも当時なかなかに不良扱いだった社先輩(本人は否定してますけどね)が入部してからはパッタリと止んだそう。
つまり、私が入部するまで、社先輩は美人の三年生に囲まれた唯一の男性部員だったわけです。いわゆるハーレムです。
社先輩が恋愛に関して鈍感じゃなかったらどうなっていたことでしょう……。
三年生方のお話もしておきますか?
興味なかった読み飛ばしてくれていいですけど。
まず、緋崎部長。この人は「熱血」という言葉が似合うとともに、「苛烈」という言葉が服を着て歩いてるような人でした。戦隊ヒーローにおける「レッド」。それも絶対的なカリスマ性をもつリーダー的ポジション。得意なゲームは格闘ゲームとRPG。社先輩が最も影響を受けたであろう人で、鉄の掟を打ち立てたのも彼女だったそうです。
次に、群青副部長。この人は「冷静沈着」とか「クールビューティー」といった感じでした。時には部長さんや社先輩を駆り立ててヤンチャさせるなんていう面もあり、「参謀」というより「黒幕」タイプの人ですね。
三人目は、「ゲーム研究部の食事係」こと柚葉先輩。料理やお菓子作りが得意な先輩で、趣味は家庭菜園。綺麗好きで「ゆるふわ」という言葉を体現したような人でした。ゲーム研究部で定期的に行われるゲーム大会の罰ゲーム用のお菓子(どんなものかは想像にお任せします)を作るのもこの人の役割で、怒らせると後が怖いタイプの先輩でした。得意なゲームは育成ゲームだったかな。
四人目は、「ゲーム研究部の最終兵器」こと竜胆先輩。私とはあんまり喋ってくれない先輩だったからよく分からないんですけど、高校の部活としては珍しい「ゲーム」をメインとした部活を作ることができたのはこの先輩のおかげだったり、社先輩がゲーム研究部に入るきっかけとなったのもこの人だったりするらしいです。社先輩が「色々教えてもらった人」と言うあたり、なにかただならぬ関係があったみたいです。なにを教えてもらったかは聞いても教えてくれませんでした。得意なゲームは不明。私の前では推理ゲームをよくやってた印象ですが、他の先輩や社先輩に聞くと、口をそろえて「エロゲ」と言ってました。本当になにを教わったの……?
と、まぁ。
なんでこういうことを考えているかというと、「私と出逢う前の社先輩」と関わった人たちのことを思い出しとこうかなと思ったんですよ。
もちろん、社先輩との会話は続けてますよ?
「【森の番人:キュクロープス】を倒すにはレベルが足りないんだろう」とか「あれは東西南北のフィールドを巡った後に訪れるべきかだ」とか「次は西のフィールドに出てみよう」とか、そういう話を一生懸命話す社先輩はとっても格好よかったです。
それを見て思っちゃったんですよね、「この先輩を作ったのは誰なんだろう」って。
「それでさ、次のフィールドではお互いのプレイスタイルを確認したいと思うんだ」
「プレイスタイルですか?」
「あぁ、どんな戦い方するかとか、どんなスキルを使うかとか、そういうのを確認したいな、と思って」
「いいですね。ではそうしましょう!」
やった! 次は先輩が見てくれる!
頑張らなくちゃ。
心の中でガッツポーズをきめていると、社先輩のお腹がグーッという音を出した。
「……お腹も鳴ったし、そろそろ帰ろうかな」
「えー、先輩帰っちゃうんですか? 折角今日食べてもらおうと、昨日からカレー作っておいたのに……」
「……分かったよ。それじゃあご馳走になろうかな」
「えぇ、是非」
先輩は優しいから、多少違和感を覚えるような提案でも受け入れてくれる。
これも私が社先輩のことを好きな理由の一つだったり。
まぁ、もちろんご飯だけでは帰しませんけど。
ドジっ子的に水でもかけて、お風呂に入るように誘導すれば、上手くいけば泊まっていってくれるかなぁ。
なんて、冗談ですよ?
ゲーム部3年生sが物語に登場するかは、今のところ未定。
出てくるとしてもまだまだ先なので、覚えてなくても大丈夫です。