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第十一話 死に戻り、現実へ

前回のあらすじ


 【東奥の暗黒林】でモンスター【森の番人:キュクロープス】と相対した社と梢。

 しかし、蛮勇虚しくあっけない敗北を迎えたのだった。

 気がつくと、俺は大理石でできた台の上に寝そべっていた。

 一畳ほどの広さの台で、そこから見える天井には青空の中を子どものような姿をした天使が飛んでいる絵が描かれている。

 横を向くと、同じような大理石のベッドに梢が寝ていた。

 辺りには100や200では収まらないような数のベッドが整然と並んでいる。全体的に白で統一された室内は神殿のようで、神秘と静かな恐怖が混在しているようだ。


「そうか、死んだのか……」

「……はい、死にましたね」


 隣で寝ていた梢が目を閉じたまま返事をした。

 起きてたのかよ。


「ごめんなさい」

「なにが?」

「私、社さんのこと守れなかった」

「いいよ」

「でも……、社さんは『逃げる』って選択肢も出してくれてたのに」

「いやぁ、逃げる云々は冗談だったわけだし。それに、ちゃんと梢には守ってもらったよ」

「え?」

「ほら、俺の“持病”。多分、あの棍棒に直接触れていたら、またあの大音量で俺の頭ん中ぐちゃぐちゃになってたし」

「……じゃあ私ちゃんと社さん守ったんだ」

「うん、俺は梢に守られた。一つ借りだよ」

「ふふっ……じゃあ、借りは返して貰わないといけませんねぇ」


 死んだせいで体がだるいのか、負けたショックが大きいのか、俺と梢はしばらくの間大理石のベッドの上で寝転んだまま会話を続ける。

 

「返さなきゃならないな。何がいい?」

「んー、何ならしてくれますか?」

「なんでもいいよ。こっちは命を捨ててまで庇われた身だ。それ相応の願いやらなんでも聞いてやる」


 実際、嬉しかったのだ。

 もちろん、ゲームだから死んだって何の問題もないし(せいぜいプレイヤーレベルが3つ下がったくらい)、むしろ俺を守らず梢だけ避けていれば、今後あの巨人を攻略するための情報を少しでも集められたかもしれないし、今後ゲームを攻略する上ではその方が有益だっただろう。

 でも、やっぱり『守られる』って嬉しいじゃん。

 特に俺は、誰かに守られるなんて経験がほとんどないもんだから、今回はとても嬉しかった。

 それこそ、「なんでもしてやるよ」みたいなことを言えるくらいには。

 だから、「じゃあ、キスでもしてもらいましょうかね」という梢の冗談みたいなお願いも聞いてやることにした。

 

 ベッドから降り、梢が横たわるベッドそばに立つ。

 邪魔になるだろうから、眼鏡を外す。少し置き場に困ったが、梢の顔のすぐ横に置いた。カチャリという軽い音が神殿の中に響く。

 梢の顔を覗きこむように顔をもっていく。案外まつげ長いんだなぁとか思いながら。

 固く閉じられた瞼からは緊張してることが見え見えだ。演技が得意って言ってたのは嘘だったのか?

 わざとらしく前髪を払ってみちゃったりしようか。

 恋人同士みたいに手をとってみたり。

 ……さて、そろそろ雰囲気作りはいいだろう。あまり焦らしすぎると梢が目を開けかねないし。今みたいに、耳をピンと立ててこちらに注意を向けてる姿もなかなか可愛らしいのだが、仕方ない。

 そして、俺は梢にキスをした。

 

「……社さん。ここまで焦らしといて()()()キスはないですって」

「指先へのキスは“賞賛”という意味らしいからな」

「私は唇にくるものだと思ってたんですが」

「部位の指定はなかったぞ?」

「でも……」

「不十分だったかな?」

「……満足はしました」


 俺も最初は文字通り()()()をするつもりだったんだけどな、途中でヘタレてしまった。

 いやぁ、ゲーム内だからといってマウストゥーマウスはできないわ。


「んー、それじゃあ社さん。ログアウトしましょうか」

「あぁ、“その2ルール”か」

「あと、そろそろ“その3ルール”にも引っ掛かります」


 ゲーム研究同好会鉄の掟その2は「負けたやつは即ログアウト」、その3は「ゲームは1日8時間まで」。

 先輩が抜けた今では守らなくてもいいルールのような気もするが、まぁ多少ルールがないと際限なくプレイし続けてしまうだろうからな、俺らは。


「よし、じゃあ今日はここまでということで」

「はい。ではでは、次は現実世界で会いましょう」

「おやすみ」

「おやすみなさい」


 鉄の掟その4「ゲーム内と現実を陸続きと考えるな」。

 この掟を守るため、俺ら(というか、ゲーム研究同好会メンバー)はゲームを終えるときに「おやすみ」と言い合うことにしている。ただのおまじないみたいなものだが、いい感じにゲームと現実を分けるスイッチのような役割をしてくれる言葉なのだ。

 次に目が覚めたときは「プレイヤー社とプレイヤー梢」ではなく、「社先輩と梢後輩」として会話することになる。

 お互いに、さっきのやり取りを忘れられてるといいんだが……。

 

(ヤシロ)レベル6(死に戻りにつき、-3 )


装備

装備(頭部):深緑(しんりょく)の眼鏡

Def+1

装備(胴):カッターシャツ(白)

Res+1

装備(上):スーツ/ジャケット(黒)

Def+1

装備(装飾):ネクタイ(紺)

Res+1

装備(装飾):錨マークのタイピン(金/紺)

Spe+1

装備(手):指貫グローブ(黒)

Str+1 Kep+1 

装備(装飾): アルトラのブレスレット

ナビゲーションキャラクター アルトラと話せる。

装備(下):スーツ/スラックス(黒)

Def+1

装備(靴):革靴(黒)

Spe+2


ステータス()内は装備による加算。

Str:85(+1)

Kep:55(+1)

Def:35(+3)

Mag:25

Res:35(+2)

Spe:60(+3)


武器:素手 レベル13 Str/Kep +36

スキル:

【WA:ストライク】レベル8

武器《素手》の専用スキル。拳に力を込めて相手を撃ち抜け!

Str値の235%のダメージを与える。

【WA:クラッシュ】レベル7

武器《素手》の専用スキル。貴様の手で砕けぬものはない!

Str+Kep値の180%のダメージを、手で掴んでいるものに与える。

【WA:インファイト】

武器《素手》の専用スキル。防御?そんなものは棄てて相手の懐に潜り込め!

相手との距離を0にする。

【AS:腕力強化】レベル3

Str/Kep上昇+20%

【PS:不屈】

行動阻害系のスキル無効。Res上昇+5%

【AS:リフト&キャリー】

自身の限界まで力を使いきったからこそ得られた技術(スキル)

人や物、モンスターなどを持ち上げ、運ぶ際に必要となるStr/Kep値を半分にできる。


SP:38


デスペナルティについて

ゲームで敗北(HPバーが0になることを指す)した場合、プレイヤーレベルが3つ下がり、各ステータスの値はプレイヤーレベルが3つ下がった状態が再現される。


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